このように商業的に大成功をおさめた映画に関して、批判の声が上がりやすいと言うのは常のこと。しかしながら、ヒネた趣味を自認する私でも、この映画は肯定せざるを得ない。
だって面白いもん。
まず、ディカプリオを軸にした悲恋のストーリーで、女性客は一網打尽でしょう。
一方、アクション映画が好きという向きには、豪華客船の沈没というシチュエーションは、ばっちりでしょう。
さらに、沈没船から宝を引き上げるという謎解きの要素もあって、興味津々でしょう。
そして何より、大スクリーンで観る意味がある、迫力満点の場面の数々。
これはもう映画の快楽を尽くした満漢全席じゃないか。
さて、これだけ長くて要素が多い割に、脚本が細やかなのがまた意外。例えば、この映画は観る前から船が沈むことは分かりきっているわけ。にも関わらず、沈没に至る状況が細かく細かく積み上げられている親切さ。
また、ジャックとローズの会話は、単に恋人らしい雰囲気を表した場面として流されがちだが、これが伏線として丁寧に回収されている事に、昨日の放送で初めて気がついた。
ローズはタイタニック事件の後、「子供や孫に恵まれて年を取って死ぬ」という死に際にジャックが遺した言葉通りの人生を送った。しかし、ローズがジャックの言うとおりにしたのはそれだけじゃなかった。結末で、老ローズの枕元に若い頃の写真が飾ってあるのだが、写真のローズはコースターを背景に馬に乗っている。前半に「気取った横乗りじゃなく、またがって馬に乗ろう」「遊園地でコースターに乗ろう」とジャックに言われるシーンがあって、彼女はこれを一人で実行したのだということが分かるのだ。私が四時間ものシナリオを書いたら、こんな些細なことはさっぱり忘れる自信がある。
ジェームズ・キャメロンは直ちにあと2本の新作を手がけるべき。この監督は、名作と駄作を交互に作る人だからね(笑)
スケール 10
音楽 9
作り込み 9
個人的総合 9