今さらながら、ステージ☆ななで配布されているノベルゲーム、「ナルキッソス」をプレイした。
困ったね。こんな良いものを無料で配られては、商売あがったりだ。
ただのノベルと侮る事なかれ。プレイすると色々勉強になる。
まず感じるのが、作品としての純度の高さ。選択肢もなく、背景も少なく、キャラの絵などまれにしか出ない。テキストの力のみでプレイヤーを引っ張っている。こういう思い切りは、商業作品では難しい。
ストーリーは、あえてカテゴライズすると難病ものの一種。しかしながら、医学考証がされておらず、登場人物は死を目前にしているとは思えない元気さを見せる。これも一種の思い切りで、病気のリアリティを捨てて、死へのタイムリミットを宣告された若者がどんな行動をとるのか、という思考実験に焦点をあてた物語となっていて面白い。
続編の作り方、という点でも勉強になる。何しろ、主人公もヒロインも死を間近に控えているので、続きを作りようがない。そこで、時系列を遡って過去のエピソードを2作目としているわけだが、この内容が1作目の背景をきちんとふくらませていてうまい。ちょっと話をつなげ過ぎのきらいはあるが…。
このゲームは、高評価を得て、昨年、フリーゲームとしては異例のPSP移植版が出た。キャラの絵などが足されて、豪華になったが、評判はあまり良くないらしい。それはそうだろう。ストイックに表現された純粋さこそが、本作の魅力だからだ。