2013年11月29日

起死回生の大逆転 「逆転裁判5」その2

 本編をクリアしたので雑感。

●アッチョンブリケ

Gyakuten52 心音のこの表情、まごうことなきピノコのアッチョンブリケである。そういえば、敵役の夕神検事も、白黒の髪で何やらブラック・ジャックを連想させるキャラだ。作り手の誰かが熱烈な手塚ファンだったのだろうか。

●大作化
 「逆転裁判」は、もともとは少人数、低予算で、しかし丁寧に作られていたシリーズだった。
 ところが、「5」ときたらどうだ。アニメ会社が作ったムービーが流れ、3Dになったキャラは過去作と違和感がないレベルで作りこまれ、本編クリア後にダウンロードコンテンツが用意されるなど、大作化著しい。とても気軽に作れる雰囲気ではない。

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posted by Dr.K at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月26日

「進撃の巨人」は「北斗の拳」に並ぶ?

 アニメ化で認知度も大幅に上がった「進撃の巨人」ですが、本編のシリアスさに比して、周囲からの扱いがひど過ぎます。

「自由の社畜」の歌詞が酷過ぎると話題に
 第一話「200時間超の君へ」。

『進撃の巨人』コラボがセガとAGスクエアの店舗で実施決定!
 大人気の兵長グッズが鼻紙…

進撃の有馬記念
 アニメで一生懸命馬を走らせた甲斐がありましたね!
→前回:進撃のジャパンカップ

 過剰に気合の入った本編が、よそではギャグとして扱われるのは、ひょっとすると「北斗の拳」以来ではないでしょうか。話題が尽きなくてけっこうなことです。

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2013年11月24日

それに価値があると思うなら金を払え

 懐の事情というのは人それぞれだとは思いますが。

 やっぱり、ゲームを作ろうという人は、ゲームにお金をかけるべきですね。このくらいの内容ならこの金額、という相場を感覚として持っておくことは重要です。面白さという漠然としたサービスで対価をいただくのがゲームの仕事なんですから。
 単なるプレイヤーであれば、無料の部分だけ遊ぼう、安売りを待って買おう、でも構いません。でも、ゲームを作ろうという人は、その面白さに人並み以上の価値を見出しているはず。お金を払いたくない、ということは、ゲームをその程度のモノ、と見ているわけで、だったら、そんなものを仕事にして給料をもらおうとするのは矛盾です。

 私なんかは、スーパーファミコンの時代にゲームの値段が高騰していたのを覚えているもんですから、近年のゲームは安く感じることが多いです。それだけに、昨今主流の無料ゲームで育ってきた世代が、将来のゲームにどれくらい払ってくれるものか、と想像すると恐ろしいですね。開発者の給料が歩合によって無料にされてしまう日も、そう遠くないんじゃないでしょうか。

posted by Dr.K at 16:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 講師の独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月22日

起死回生の大逆転 「逆転裁判5」その1

 実に6年ぶりとなるナンバリングタイトル。
 前作「逆転裁判4」は、セールス面では好調だったものの、ストーリー、キャラクター、システムなどすべての面で不評。そのため、王泥喜弁護士を主人公にした新シリーズの継続が困難になり、旧作の人気キャラで作ったスピンオフ「逆転検事」で、辛うじて息をつないだ。

 「5」は、シリーズの立て直しを賭けた起死回生の一手である。結論から言うと、見事にその使命をやり遂げた。

Gykuten51 お馴染みの法廷が爆破されるショッキングな映像で幕を開けるこの物語は、映像そのままに、シリーズの破壊と再生を宣言する。王泥喜は事件に巻き込まれ散々な目に合う。
 王泥喜弁護士には特技があった。それは、腕輪の力によって、証人のわずかな癖を見抜くというものだ。「4」では、この「みぬく」が新システムだったのだが、難易度が高く、言いがかりにしか見えない会話の運びなどで、評判が悪かった。
 「5」の物語は、この特技をなかったことにはしない。だが、検事が「そんな能力はインチキだ」と詰め寄り、法廷で使うことが封じられてしまう。その後、捜査パートで何度か「みぬく」を使う場面が用意されるものの、王泥喜が包帯で片目をふさいだために、能力を使うこと自体ができなくなってしまう。
 不評だった要素を、物語の流れの中で、巧妙に排除しているのである。

 王泥喜のイメージチェンジは、効果抜群。誰もがその謎を気にしてストーリーを読み進めた。この仕掛けは大成功と言っていい。
 もともと、「逆転裁判」シリーズは、策を弄した法廷での駆け引きが面白いゲームだ。だが、「5」に限っては、最大の策は、シリーズを立て直すための巧妙な作りの方に思えてならない。

posted by Dr.K at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月20日

「寄生獣」映画化 今度こそキター!

「寄生獣」映画化 キター!

 ↑こいつを書いてから8年経った。ハリウッド版は頓挫したらしい。帰ってきた映画化権を東宝が獲得、制作発表が行われた。

映画.com:伝説の漫画「寄生獣」を山崎貴監督が2部作で映画化!染谷将太×深津絵里が参戦

 ストーリーの改変が大丈夫か、パラサイトまわりの残虐シーンや戦闘シーンがどう作られるのか、など不安要素を挙げればきりがないが、キャストは素晴らしい、盤石である
 まず新一役の染谷将太。ヒーローっぽいところがない顔立ちがちょうどよい感じだ。村野役は橋本愛。今だからこそ選べた清新なキャストだ。しかも間違いなく原作よりかわいい。教師にしてパラサイト、田宮良子の役は深津絵里。そうきたか! 非人間的な難役だが、きっと素晴らしい迫力で演じてくれるに違いない。こうなったら絶対に見逃せない。

 あれ、ミギーは誰が演るの?

posted by Dr.K at 21:20| Comment(2) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月18日

サカサマのパテマ

 ヒロインが逆さまという思い切ったアイデアのアニメ映画。
 知名度が全くないうえに、ついこの前公開されたハリウッド映画「アップサイドダウン 重力の恋人」とネタが丸かぶり! コアなアニメファンなら観てくれそうなものですが、今は「まどかマギカ」がやっているので、みんなそっちへ行ってしまいます。
 そんなわけで、公開2週目にして早くも終了ムード。逆さまどころか、大変な逆境、逆風にさらされています。
 この場を借りてあわてて言うのですが、今のうちにぜひ劇場で観ましょう、面白くて爽やかです。

 アイガに住む少年エイジは、地底から落ちてきた逆さまの少女パテマと出会います。映像はこの二人の視点を行き来します。天地がたびたび入れ替わる酩酊感は、アトラクションさながら。二人が協力することで、重力を逆手に取ったアクションが実現します。
 ゲームにしたら面白そうだなぁ、と思ったのは私だけではないようで、パンフレットでは「ICO」「ワンダと巨像」の上田文人が寄稿しています。音楽は「ICO」の大島ミチル、音響監督は「サイレントヒル」の山岡晃が担当しており、音の面でもゲームとの親和性が高いようです。
 物語も二転三転、世界の秘密に迫るSFの王道的展開で、爽快なカタルシスがあり、観客を不幸のどん底に叩き落とすゲスな某アニメより、よほど好感が持てます。映像はひっくり返ってますが、内容は極めて素直でストレートでした。
 ちなみに、上下がこんがらがってしまった人は、パンフレットの解説図を見ましょう。万事解決します(笑)

『サカサマのパテマ』 主題歌「Patema Inverse」

ヒロイン像 6
世界観   9
脇役の深み 3
個人的総合 7

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2013年11月17日

ソーシャル・ネットワーク

 「Facebook」の起業を題材にした映画。日本での公開は2011年だったが、国内でFacebookが流行ったのは翌年になってからなので、当時の観客にはあまりピンとこなかったんじゃないだろうか。今観た方が多分よくわかる。

 主人公マーク・ザッカーバーグは、Facebookを作った天才プログラマー。ありきたりな物語だと、彼の偉業を褒め称える方向に持っていくが、この映画はそれをやらないところがユニークだ。天才らしい無神経さで、共感度の低い人物として描かれている。
 一方、観客と目線を共有することになるのが、マークの友人であり、共同創業者となるエドゥアルド。マークの無茶苦茶さに引きながらも、彼が不得手とする交渉や資金集めに奔走する。だが、致命的なまでに開発の知識がない。先輩起業家としてショーン・パーカーが現れたとき、マークが開発者同士として刺激を受けたのに対し、エドゥアルドは話の内容が全く分からず、ショーンのいけすかない人柄ばかりが気になってしまう。共同創業者なのに、自分ではFacebookを使う事さえできない。常識に囚われた凡人はベンチャーには要らない、とばかりに彼は追い出されてしまう。

 マークは訴訟の場でも一歩も引かず、天才の物言いに双方の弁護士とも困惑の表情を見せる。桁外れの儲けゆえに、和解金を支払っても痛くもかゆくもない。マークがやりこめられることもなく、天才の孤独を匂わせて物語は終わる。
 優れたものを創る人が、人格的にも優れているとは限らない。そんなことはわかっている。しかし、映画なのに美化しないところに、非常に骨太なものを感じた。

 マーク・ザッカーバーグは実はまだ20代だ。
 アップルを創業したスティーブ・ジョブズは、歳をとって味のある偉人になったが、その人生の20代までを題材にしたら、やはり同じような鼻持ちならない若者に描かれたのではないかと予想する。
 それだけに、マークの後半生がどうなるのかにも、興味がわいてくる。ジョブズのように新しいものを創り続け、それによって、映画のように何かを失い続けるのだろうか。

専門用語  10
調子ノリ度 9
友情度   2
個人的総合 6

他の方の注目すべき映画評:忍之閻魔帳拝徳

posted by Dr.K at 13:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月10日

ナラティブって何だ

 ゲーム分析において、今年になってからよく聞くようになった言葉について勉強中。

【GDC 2013 報告会】初のサミット開催、ストーリーとナラティブの違いとは?

[CEDEC 2013]海外で盛り上がる「ナラティブ」とは何だ? 明確に定義されてこなかった“ナラティブなゲーム”の正体を探るセッションをレポート

あなたが自分の家系や先祖を知るなかで分かる、ビデオゲームのストーリーやナラティブという物語の言葉を巡るおとぎ話

 私が理解したことをざっくりまとめると、
ストーリー:ゲームの作り手が用意したシナリオをたどるもの。
ナラティブ:プレイヤーの行為が生み出す独自の物語。
という感じだろうか。
 今から、この理解に基づいた実例を挙げていく。ここで、読んでいる皆さんにお願いがある。例として合っているかどうか、私の理解が間違っていないかどうか、ぜひ意見を聞かせていただきたい。

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posted by Dr.K at 16:55| Comment(4) | TrackBack(0) | 馬鹿は黙ってろ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月07日

未来のゲームが目を覚ます 「BEYOND:Two Souls」その4

Bts04 エンディングまで到達したので感想と考察。
 本作を、ゲームとしての面白さなどという狭量な尺度で測るのは愚かだ。間違いなく、他では味わえなかった体験ができた。そのことをまず喜びたい。

 独特の操作は、この開発会社の前作「Heavy Rain」を発展させたもの。そのため、「BEYOND」もまた、ジョディに感情移入するゲームである、と説明されてきた。しかし、プレイを終えてみると、ジョディへの感情移入はそれほどでもなかったように思う。
 ところが、意外なところに感情移入の対象があった。エイデンである。霊体の操作は一人称であり、物語の都合に縛られず自由に暴れられる場面があるせいか、プレイヤーである私と不思議な一体感が感じられたのだ。
 ジョディにとって、エイデンは、意のままにならず、正体不明だが離れられないという厄介な存在である。この関係性は、ゲームキャラから見たプレイヤーの存在とよく似ており、いつしか私は、エイデンとなってジョディの物語を見ているような気になっていた。

(以下に、結末を含むネタバレあり)

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posted by Dr.K at 23:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年11月03日

「戦国恋姫」のオープニングに漂う一抹の寂しさ

BaseSon:「戦国恋姫」公式

 「戦国恋姫」は、年末発売の超大作ギャルゲー。「恋姫無双」から7年もたっていることに気付いて愕然とする。

 俺は、このてのゲームをあまりプレイしないが、オープニングムービーは好きである。
 エロゲー、ギャルゲーは、小さな会社が、少ない予算で作っていることが多い。もちろん、ムービーにまわせる予算も少ない。その結果、静止画中心の限られた素材で、無理矢理ムービーを作る。その手腕は年々洗練されてきており、映画ともTVアニメとも毛色の違う、独特の映像美が生み出されている。
 その昔、アニメの世界では、ディズニーのフルアニメに対し、予算のなかった日本は動きの限られたアニメで工夫を凝らした。その独特の手法が、ジャパニメーションと呼ばれ、評価を得るに至った。
 ギャルゲーのオープニングには、なんとなくそれと似た意地を感じるのだ。

 さて、今回、「戦国恋姫」のオープニングが公開されたので見てみた。だが、なんというか、俺が求めていたのはこれじゃないのだ。
 全編本格的なアニメによるムービー。並のエロゲー、ギャルゲーにはできないことだ。だが、不自由だったムービーが、アニメ会社のちゃんとした作りになってみると、普通というか凡庸な感じがする。一つ上の世界に飛び込んだら、すごかったものがそうでもなかった、という寂しさだろうか。
 「恋姫」ブランドは、エロゲー発としては特別な認知度を持つ。その下剋上ぶりは痛快だった。だからこそ、オープニングもギャルゲーならではの手法で手の込んだすごいムービーを見たかった。俺の勝手な思い入れではあるのだが。

posted by Dr.K at 22:23| Comment(6) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする