マット・デイモンが宇宙に置き去りにされ、それでも希望を失わないのが「オデッセイ」。暗黒面に堕ちるのが「インターステラー」。などという冗談はさておき。
火星を舞台にした難易度最大級のサバイバル、そして救出劇となっているこの映画。もしも日本で作られたなら、全編登場人物の眉間にしわが寄っているような、深刻さあふれるストーリーになるであろうことは想像に難くない。ところが、本作のトーンの明るいこと。違う角度で、アメリカ人の最強ぶりを見せられた感じだ。
さて、宇宙を舞台にしたSFというと、未知の世界ゆえに神秘的な方向に話が行きがちである。例えば、「インターステラー」では舞台が四次元世界に到達してしまった。また、「ゼロ・グラビティ」は、現実味を重視した作品であったが、それでも霊的、宗教的な描写が一部にあった。
一方、「オデッセイ」はというと、火星探索が行われている近未来、という設定ではあるが、その技術は現在から想像しうる程度のもの。サバイバルも救出も、現実味のある工夫のもとで行われる。謎の宇宙生物など出てこないし、神秘も奇跡も一切起こらない。他の作品が、宇宙に比べて人間などちっぽけで非力なもの、という方向にまとめがちなのに対し、宇宙にもへこたれない人間の強さをアピールするこの映画は、SFとしては独特のポジションにあると思う。
せっかく楽しい中身なのに、邦題が重厚過ぎて損をしているのが惜しい。
不屈度 10
性善説度 10
DASH村度 8
個人的総合 7