2016年11月29日

こうの史代「夕凪の街 桜の国」

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 「この世界の片隅に」が素晴らしかったので、こうの史代の他のマンガまで買ってしまいました。いやはや…

 読むとわかるのですが、こうの先生のマンガは、進化している! 確実に!
 まず、「夕凪の街」ですが、これはこうの史代が初めて広島を扱った作品です。終盤の強烈なメッセージ性によって、各種マンガ賞を受賞しました。確かにインパクトはあるのですが、原爆への怒りが生の形で表出しており、ある種異形の作品となってます。
 その続編である「桜の国」は、戦時中を知らない少女を主役にし、笑いも交えたホームドラマのような進め方になっています。しかし、「夕凪の街」から現在までが地続きにつながる仕掛けによって、この連作は独特の充実感をもって終わります。直接的な怒りは表現されず、広島を背景とした恋愛ものとしても読める内容になってます。
 これらの作品の延長上に、「この世界の片隅に」が位置するのだなあ、と大いに納得した次第です。
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2016年11月27日

アイドルマスターシンデレラガールズ ビューイングレボリューション を体験!

 学校にPSVRを持ってくる剛毅な学生がおり、突然の体験会開催。

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 「アイドルマスターシンデレラガールズ ビューイングレボリューション」は、デレステのステージをVRで体験できるという代物。サイリウムを振る以外は、移動すらなく、ゲーム要素皆無。こんなんダメでしょう、と思っていたが…

 うっひょ〜VRスゲー!
 技術の進歩は大したもので、頭の動きにシンクロする視界は違和感皆無。コンサート会場の広さが感じ取れるのにまず驚く。思わず前の席の背もたれに手をかけようとしてしまう。ヤバい。
 そして、歌い踊るアイドル以上に存在感を放つのが客席の野郎共で、隣の人に手を伸ばしたら触れられそうな気さえしてくる。
 こんなに本物感のないCGでさえこうなのだから、リアルに描かれたらとんでもないことになる。長時間のプレイもやばそうだ。「バイオハザード」とか買ったとしても、やり切る自信が全くなくなった。
 なお、現実の私との相違点として、近眼がシミュレートされていないので、遠くまで鮮明に見えるという点が挙げられる。目のいい人の視界ってこんな感じなのかなあ、とこれもまたVR体験なのだった。

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2016年11月26日

この世界の片隅に その2

 映画を見、マンガを読んで、さらに映画を見ましたが、「むむぅ」とか「ふへぇ」とか、言葉にならない感嘆しか出ません。

 一般に、マンガから映画を作る際は、テーマとなる部分を抽出した上で、内容を再構成します。ですので、キーとなるビジュアル以外は、マンガと別のものになります。メディアが違うのですから、それが普通です。
 ところが、「この世界の片隅に」は異常です。原作は上中下の3巻から成るのですが、特に上巻については、1コマ1コマ映画と比べたくなるくらい、忠実に再現されていて驚きます。いや、再現なんてもんじゃない。マンガでは表現できない音や動きの部分について、想像以上の補完を見せてくれるのです。

 さらにこのマンガ、映画には全く向かない形式なのです。すずさんの日常を描き、短いページでオチをつけていく。戦時下であることを除けば、「サザエさん」や「ちびまる子ちゃん」のようなマンガなのです。さらに、マンガはかなり自由で実験的。隣組の歌だけで一話消化したり、料理を説明するだけの回があったり、サイレント形式になったり、いろはがるたの回もありました。これらをほとんど端折ることなく組み込んで、映画を成立させているのはとんでもないことです。
 映画の時間は限られています。ですので、マンガから重要なエピソードをかいつまんで…となるはずです。しかし、「この世界の片隅に」は、日常の積み重ねこそが肝であり、本筋とサブストーリーというような構造がありません。結果、映画では詰められる限り詰め込むという方法になりました。初めて見たときは気が付かなかったのですが、マンガを読んでから見ると、テンポが早く感じます。マンガでののんびり感覚から一転、映画は怒涛の勢いでエピソードを駆け抜けます。
 同じ戦時中を扱ったアニメということで、「火垂るの墓」がよく比較の俎上に上っているようですが、むしろ同じ高畑監督の「ホーホケキョ となりの山田くん」こそ比較の対象とするべきではないでしょうか。

 一方で、マンガと異なる部分もあります。白木リンをめぐるストーリーは、その多くが削除されています。このような場合、多くの映画では、削除された部分が気にならないように、他の部分を調整しています。ところが、「この世界の片隅に」は違います。破いた手帳や、口紅など、削除したストーリーにまつわるアイテムがそのまま残っており、小さな謎として気にかかるのです。
 片渕監督は、「原作をぜひ読んでほしい」と色々なところで言っています。おそらくこれは、そのための仕掛けなのでしょう。私はまんまと引っかかり、マンガによってわかったことがいくつもありました。

 エンドロールで描かれる後日談が、多くの人を感動させています。数枚のラフなイラストです。これをアニメにしなかったところにも、こだわりを感じます。マンガにない物語は本編に含めない。多分そういうことなのでしょう。
 続く、クラウドファンディングの支援者リストでは、ようやく下半分の画面で描かれる物語を追うことができました。一回目の鑑賞では、つい自分の名前を探してしまって、下が見られなかったものですから。
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2016年11月23日

カオスサーガ騒動で思い出したこと

 MMORPG「カオスサーガ」が、開始するや一日でサービスを終了し、話題になった。


 実際にプレイした人は、その貴重な経験を後世に自慢できるかもしれない。
 問題の構造としては次の通りだ。まず、中国の開発会社が、著作権を無視したゲーム作りを行った。それをブライブが日本向けにローカライズし、DMMが配信した。なので、中国の開発会社が一番悪いのだが、ブライブとDMMのチェックを通ってしまったお粗末さも問題だ。今回、パクられた素材は無名のマイナーゲームではない。FF11なのだ。仮にもオンラインゲームに関わっている会社であれば、FF11のキャラに気がつかないなどということはありえない。もしかするとチェックという工程自体がなかったのではないか。中国のゲームでパクリが横行していることは、以前から知られており、見通しが甘すぎるとしか言いようがない。
 「カオスサーガ」というタイトルのゲームが、業界の混沌を暴いてしまうとは出来過ぎである。

 さて、実は私は、一日でサービスを終了したMMORPGをプレイしたことがある。それはとても面白いゲームで、良い思い出になっている。プレイ日記(一日だけ)のリンクを貼っておこう。

posted by Dr.K at 19:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 馬鹿は黙ってろ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月20日

PS4のハードディスクを換装

 来たる年末年始、PS4では期待の新作ゲームが目白押しである。
 私もいくつかのゲームを予約し、あとは発売を待つばかりなのだが、ここにきて困ったことが起こった。ハードディスクの容量が足りない! これは想定外だった。
 発売初日に入手した我がPS4は、ハードディスク容量500G。PS3の初期型が20Gや60Gしかなかったことを思えば、ほとんど無限にも思える大容量である。ところが、PS4のゲームはインストール容量がばかにならず、10G超えとなるタイトルもかなりあり、大作だと50G消費するものも。加えて、PS+のフリープレイタイトルなどもあるため、3年経たずにいっぱいになってしまったというわけだ。
 プレイが済んだゲームを消せばいいじゃないか、という意見もあるだろう。もっともである。だが、今回は「龍が如く6」や「グラビティデイズ2」が控えている。過去作のデータがあると、何か特典があるかもしれないではないか。
 そんなわけで、ハードディスクの換装を敢行することにしたのである。

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posted by Dr.K at 14:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 講師の独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月19日

この世界の片隅に その1

 この映画で、クラウドファンディングというものに初めて参加しましたが、やった甲斐がありました。見事な完成度じゃないですか。

●テアトル梅田へ
 公開以来、あまりに絶賛の声が大きいので、恐る恐る映画館へ。酷評されるのは悲しいですが、誉められすぎというのもそれはそれで怖いものです。映画館は、一人で来ている人が多いように見えました。年齢層は、アニメにしては高めです。

●地味な立ち上がり
 映画が始まり、最初の感想は、あれ、この程度か、でした。原作に近づけたのか、描線は少なくへろへろで、色彩も淡い。物語も非常に地味です。
 ですが、この地味さが効くんですね。日常にじわりと浸透していく戦況の不気味さが、抑制された筆致で描かれていきます。

●強烈な演出
 片渕監督の前作、「マイマイ新子」は、物語としてはかなり入り組んでいたのですが、ビジュアルに関してはほとんど奇をてらわず、世界名作劇場のごとき安定感がありました。ところが、「この世界の片隅に」は違います。先鋭的なビジュアルによる演出が随所に差し込まれています。
 空襲シーンでの音響には鳥肌が立ちました。爆撃だの、銃撃戦だのは、他の映画でいくらでも観たはずですが、いままで経験したことがないくらい真に迫っていました。それが、音の素晴らしさによるものなのか、私の感情移入のせいなのか、いまだに判断がつかないでいます。

●力強い結末
 ↑などと書くと誤解を招きそうです。地味な始まりの物語は、終わりもやはり地味でした。しかし、観客は日常を取り戻すまでの経緯を見ていますから、これ以上頼もしい結末はないのです。感動したとか、面白いとか、そんな感想にはちょっと違和感があります。観てよかった、というのが私にはしっくりするでしょうか。
 通常のエンドロールの後は、クラウドファンディングでの支援者の名前。大変な人数ですので、間延びさせるくらいならカットしてくれてよかったのですが、出資への特典でしたので律儀に流してくれます。正直、これだけの映画を完成させてくれれば他の見返りはいらないです。

 映画を観終わり、いくつかの疑問が残りました。実は、原作との違いを気にして映画が楽しめなかったら損だと思い、マンガを買ったまま封印してありました。これから読んで確認し、その謎を解こうと思います。

一見の価値 10
音響    10
のんの起用 9
個人的総合 10
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2016年11月13日

実はスマホ時代ならではのゲーム機 −ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ−

 弟が「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ」を持って現れた。ゲームにさほど興味がなく、これまでゲーム機など買ったことがなかった弟が、予約してまで手に入れたということに驚いた。やはりこのゲーム機の需要は、最新のハードとは別の層にあるようだ。

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 接続は非常に簡単で、HDMIと電源だけ。電源については、ACアダプターが付属していない。専用と称したアダプターがプレミア価格で売っていたりするが、騙されてはいけない。一般的なスマホの充電器が使えるので、大抵の家庭では購入不要だ。ここで、3DSのアダプターを使います、とならないあたりが今までの任天堂とは違うな、と感じる。
 いくつかゲームを遊んでみたが、昔遊び倒したようなタイトルならともかく、だいたいは操作方法を忘れている。メニュー画面に「説明書」の項目があるので、見ようとして驚いた。画面に説明は出ず、QRコードが出現したのだ。スマホ等でコードを読み取ると説明書が開く。スマホ片手にゲームをプレイする、今どきのスタイルとなった。このゲーム機、これ以上ないくらい時代に即している。人の家へ持ち込んでわいわい楽しむのにも最適であり、値段も手ごろ。おそらく、サラリーマンの忘年会の景品などで大量に出回ることだろう。
posted by Dr.K at 11:19| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月07日

ソーセージ・パーティー

 今まで、当ブログで記事にしてきた映画の中で、人を選ぶ問題作No.1の座は長らく「日本以外全部沈没」だったのだが、ついにその記録が更新される時が来た。悪いことは言わない。人と行くのならこの映画だけはやめておきなさい。CGのソーセージがかわいいから、などという理由で観たがっている子供や女性がいたら全力で止めるべきである。

 物語は、スーパーの商品が人格を持ってわいわいと下ネタを言い合う世界観で始まる。人に買われ、外に出ることができればそこは天国だと彼らは信じている。だが実際は、食料品であれば料理され食われるのが真実。それを知ったとき、阿鼻叫喚の地獄絵図が始まる。

注意:以下にネタバレ含む
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posted by Dr.K at 21:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月06日

引っ越しのご挨拶

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 eoblogが運営終了とのことで、突然ですがこちらに移転となりました。
 お初の皆様は、はじめまして。
 常連の皆様におかれましては、今後ともよろしくお願いいたします。過去記事の引っ越しは済ませたものの、色々整備中でご不便おかけします。相互リンクの皆様は、できましたらリンク先の変更お願いします。
 インターフェースがまたもや変わり、色々試行錯誤です。
 
posted by Dr.K at 11:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 講師の独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年11月01日

このドラマ、醜悪至極なり 「IQ246」

 ああ、暇だ暇だ。どこかに私が観るに値するドラマはないものか……。

 織田裕二主演の「IQ246」がなかなかヒドい。作中の沙羅駆同様、ドラマの制作陣が織田を持て余している様が伝わってくる。「踊る大走査線」が当たってしまったせいで、いい歳なのになかなか若造イメージから脱却できない織田。思い切って変人に仕立てたは良いが、「古畑任三郎」か「相棒」の右京かといった感じで、しっくりこない上に二番煎じ。同様に使いにくいせいで、ついにはロボットまでやらされた木村拓哉を思い出す。
 木村拓哉が演じる天才かつ変人と言えば、「MR.BRAIN」を思い出すが、 沙羅駆もまたタイトル通りの天才だ。だが天才の表現方法が極めてお粗末。周囲をアホにすることによって、相対的に沙羅駆が賢くなっているのだ。結果として警察もアホなら犯人もアホ。「ホームズ」やら「ポアロ」やら「古畑」やら、モチーフにしたと思われる作品から、推理要素はほぼ抜け落ちており、なんともがっかりな話なのだ。
 一方で、ディーン・フジオカが演じる執事の完璧な仕事ぶりや、中谷美紀の検視官のおかしさなど、キャラだけはやたらと立っている。この作風は中居正弘がサヴァン症の捜査官を演じて人気だった「ATARU」に近いな、と思ったら演出陣が同じだった。 もうちょっと新味があっても罰は当たらんのじゃないか。期待せずに新展開を待つ。

posted by Dr.K at 21:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 馬鹿は黙ってろ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする