2017年10月29日

諸星大二郎「BOX 〜箱の中に何かいる」3巻

morobox3.jpg 諸星流サバイバルホラー、これにて完結。「西遊妖猿伝」の連載再開、期待していいんでしょうか。

 さて、この結末、「箱」の主が絵として明示されなかったことに賛否があるようです。気持ちはわかります。この世のものと思えないクリーチャーは、諸星先生の得意とする題材ですからね。
 「箱」は、因果を食らい、記憶を奪います。主人公たちが憶えていないから姿が明かされなかったのでしょうか。いや、そもそも姿などなかったのかもしれません。
 「箱」の行いは、神のようでもあり悪魔のようでもあります。「箱」は、人々を誘い込んでパズルを解かせます。魔少女は、「箱」が自らの意志でパズルを進化させたと説明します。そのときのコマには、知恵の輪や組み木といった古典的な遊び道具と一緒に、ファミコンやVRが描かれています。
 遊びを進化させる「箱」。それはコンピュータそのものです。であれば、諸星先生が主の姿を描かなかったことにも合点がいきます。毎日そこにあるのですから。私たちは知らないうちに因果を奪われ、別の世界へ戻されているのかもしれません。
 始まった時は、「CUBE」のような限定状況下の物語かと思われましたが、やっぱり最後にはスケールの大きな想像へと導かれる。諸星作品はこれだからたまりません。
posted by Dr.K at 17:02| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月24日

「クジラの子らは砂上に歌う」第三節

 浮島での、閉鎖された、しかし穏やかな暮らしは突如として崩壊した。外の世界から現れた兵士たちに、泥クジラの民はなすすべもなく虐殺されていく。

kujira03.jpg
 惨たらしい殺戮が描かれるが、不思議なほどスピード感がない。
 仮面の敵はゆっくり近づき、何の抑揚もなく武器を振るう。感情を奪われたアパトイアなので、普通の人間とは違う、ということなのだろうか。
 一方、泥クジラの民はというと、こちらも素早く逃げない。外のことを全く知らず、危機が理解できていないのだ。オウニの仲間たちが、ヤンキーのように兵士に言いがかりをつけに行ってしまう浅はかさに、そのことが端的に表れている。長老たちに代わって民を守る立場であるスオウも、長であるタイシャ様が殺される事態であるにも関わらず、話し合いで事を収めようとし、戦うつもりがない。オウニのみが、見事な戦いぶりを見せるが、周囲はヒーロー扱いせず、野蛮な者として忌避する。
 アニメなのにカタルシスがなく、もどかしい。
 この閉塞感は、ミサイルを突き付けられていても反撃一つできない日本の現状そのままであると感じる。マンガの連載から数年、このタイミングでアニメ化したことも、時代の要請なのかもしれない。
posted by Dr.K at 21:55| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月22日

ドラマ「BORDER 衝動」を見てこんがらがっちゃった

 2014年に放映された「BORDER」は、私のお気に入りのドラマだ。続編となるスペシャルドラマ「BORDER 贖罪」の放送を控え、深夜にスピンオフとなる「BORDER 衝動」前後編が放送された。

 内容は、検視官の比嘉ミカを主人公とした前日談となっている。比嘉は、「BORDER」本編で主人公の石川刑事(小栗旬)にとって数少ない理解者となる重要な人物。この賢くクールな役を、ブレイク前の波瑠が印象的に演じている。
 さて、「衝動」では、女子中学生連続殺人事件に比嘉が挑む。犯人のサイコパスな言動がなかなか凄いのだが、それはここでは置いておく。比嘉から証拠を突き付けられ、犯人は比嘉に問いかける。なぜ自分が犯人だとわかったのか。
 ここで、比嘉が答えるより先に、私の頭の中で波瑠の声がした。

「私もあなたと同じだから」

 いかん、「ON」とごっちゃになってる。2016年のこのドラマで、波瑠が演じたのが異常犯罪専門の刑事藤堂。自らもサイコパスの気質を持つスレスレの人物で、とても印象が強かったのだ。
 「贖罪」を観るときには間違えないようにしないと!
posted by Dr.K at 11:27| Comment(0) | 馬鹿は黙ってろ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月21日

ブレードランナー

 公開迫る「ブレードランナー2049」。「ロボコップ」や「トータル・リコール」のようなリメイク作品かと思い込んでいたのだが、実は続編であると知り、おさらいのため旧作を観ることにした。

●実はそれほど未来ではない
 冒頭、「ロサンゼルス、2019」。再来年じゃないか、おい。この頃、レプリカントと呼ばれる人工生命が作られ、奴隷として使われていた。反逆、脱走したレプリカントを捕えるのがブレードランナーだ。

●実はアクション映画ではない
 人間VSレプリカントとなれば、激しい戦いが期待できそうなもの。確かに、作中のレプリカントは人間を超える身体能力を発揮する。しかし、印象に残るのはもの悲しさ。古びた写真に象徴される記憶や、全編にわたって降り続ける雨もあって、非常に情緒的な印象を与える映画だ。手塚治虫のSF作品にどこか通じるところがある。

●実は凄腕ではない
 主人公のデッカードは、凄腕のブレードランナーとして、今回のレプリカント狩りを依頼される。演じるのは若き日のハリソン・フォード。しかし、「インディー・ジョーンズ」のような痛快アクションは見せない。
 とにかく悪戦苦闘が続くのだ。ターゲットを見失いそうになるし、殺されそうになるし、最後の戦いでは全く優勢な場面がない。主人公でありながら、レプリカント側とは異なる非力さを感じさせる。
 そして結末では意味深な謎を残すのだ。

 この続きが明らかになって、面白いのかがっかりするのか。「2049」はぜひ観ようと思う。

世界観 9
アクション度 5
レトロ感 8
個人的総合 6
posted by Dr.K at 16:33| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月18日

ミニスーファミで「パネルでポン」

 ミニスーファミを買ってからというもの、あれもこれもと収録タイトルをやり散らかしている。今のところ、最もプレイしているのが「パネルでポン」だ。

panepon.jpg
 この結果は我ながら意外だった。何しろ昔は完全にスルーしていたゲーム。スーパーファミコンの末期に発売されたタイトルであり、私の興味はセガサターンやプレイステーションに移っていたのだから無理もない。
 結果、ミニスーファミになって初めてプレイすることになったのだが、実によく出来ている。入口がシンプルで、高度なテクニックが控えているという理想的な作り。しかも、ミニスーファミではどこでもセーブができるので、高難度のステージのみを繰り返し挑戦することができる。中毒性がますますアップしてしまう。
 妖精のキャラクターも独特でいい感じ。後続の作品では、ヨッシーやらポケモンやら、有名キャラが起用されているそうでちょっと残念。
posted by Dr.K at 23:47| Comment(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月11日

「クジラの子らは砂上に歌う」第一節

 世界を覆いつくす流砂の中、人々は「泥クジラ」と呼ばれる浮島で暮らしていた。チャクロは、ここで記録係をつとめる少年。ある日、接近してきた他の浮島を探索中、謎の少女と出会い、連れ帰るが…

kujira01.jpg
 「クジラの子らは砂上に歌う」。今期期待のアニメである。原作のマンガは未読。独特の美術で表現された背景が印象的だ。
 アニメやマンガでは、ヒーローにせよヒロインにせよ、個性的なキャラが物語を牽引するタイプのものが多い。その方が興味も持たせやすいし、キャラ人気が出れば商売にもなるからだ。
 だが「クジラ」はそうではない。チャクロはおとなしく能力も乏しい。記録係なので、客観的に物事にあたろうとする。それによって、世界観の方が主役として浮き上がるという仕掛けだ。こういう世界の謎が中心になっている物語は、個人的には大好きなので、この調子で地味〜に進めていただきたい。
 深刻になり過ぎるのを嫌ってか、所々で挿入されるずっこけギャグが邪魔に感じた。とにかく雰囲気がいいので、少々まじめ過ぎようが、そのまま浸っていたい気がする。
posted by Dr.K at 00:05| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月08日

「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」で快適ゲームライフ

 ミニファミコンは買えなかったが、ミニスーファミは抜かりなくゲット。
 まずは、未発売タイトルの「スターフォックス2」をアンロックしようと、「スターフォックス」を起動してみたら、操作方法選択画面のBGMが懐かしくてもう泣きそうである。

minisufami0.jpg 思い出補正を抜きにしても、素晴らしいハードだ。何しろプレイが快適。スイッチを押せば直ちにメニューが出て、どのゲームからでもプレイでき、好きな時に中断して保存できる。
 最新のゲーム機は起動に時間がかかるようになり、ダウンロードやらアップデートやらでなかなかゲームを始められない。指定のセーブポイントに行かないと保存できないものも多い。一方スマホはというと、やたらと通信が入るので意外とテンポが悪く、習慣的なプレイを強要される点がマイナスである。
 快適さでミニスーファミを上回るゲーム機などほぼないのではないか。
 中身はすべて昔懐かしのゲームだが、ファミコンの時と異なり、ゲーム性も成熟しているので、今プレイしても楽しめるものが多い。ビジュアルに関しては、ドット絵が最高潮の時代なので、ヘタすると今の2Dゲームよりもセンスがいい。
 スーパーファミコンはカセットの値段が高く、当時の子供たちはそういくつもゲームを買うことができなかった。だがミニスーファミなら、RPGの合間に「スト2」や「パネポン」をプレイする、などといった贅沢なローテーションも可能。
 これはもう当分新しいゲーム要らんな、というのが正直なところである。

 なお、写真を見ての通り、パッドの差込口はWiiと同じ。Wiiのクラコンなどはそのまま使うことができる。(ただしゲーム内でアナログスティックは非対応) よって、故障してもクラコンで代用できるし、「スト2」をアーケードスティックで楽しむことも可能だ。私は付属のパッドを開封せず、10年前にクラブニンテンドーでもらった、スーファミ型クラコンで遊んでいる。なんか得した気分だ。

posted by Dr.K at 23:25| Comment(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月07日

スイス・アーミー・マン

 無人島で、孤独に絶望して首をつろうとしているハンク。そこへ一人の男が流れ着く。「人だ!」と一瞬喜ぶハンクだが、返事がない、ただの屍のようだ。がっかりしてやっぱり死のうとすると、死体が激しくガスを噴き出し、沖へ進みだした。ハンクは慌てて追い、死体にまたがる。ジェットスキーのように海を駆ける死体、そこへ最高のタイミングでタイトルが出る。「スイス・アーミー・マン」。ハリー・ポッターでおなじみのダニエル・ラドクリフが全編にわたって死体を名演する。

(以下に結末を含むネタバレあり)

続きを読む
posted by Dr.K at 23:55| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月05日

「アンチャーテッド 古代神の秘宝」その2

kodaisin201.jpg
 「アンチャーテッド 古代神の秘宝」をクリアした。控えめに言っても最高である。

続きを読む
posted by Dr.K at 23:40| Comment(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月01日

「アンチャーテッド 古代神の秘宝」その1

kodaisin102.jpg
 「アンチャーテッド 古代神の秘宝」をプレイしてウキウキである。これは良いものだ。

続きを読む
posted by Dr.K at 23:18| Comment(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする