「ペンギン・ハイウェイ」の感想に、「未来のミライ」より面白い、と書こうとして手が止まった。いかんいかん、観ないで決めつけるのはフェアじゃない。そんなわけで、まだ上映している劇場へ行ってきました。ネット上では酷評が目立ちますが、そんなに悪くありません。以下は、なぜこんな作品が出来たかについての憶測となります。
まずテーマ。家族の絆を描きたい。そのために、子育てに奮闘する夫婦をリアルに描こう。経験者なら共感するだろうし、自分の子供のころを懐かしむ観客もいるだろう。
「細田君、夏休みの大ヒット作を頼むよ。もっとターゲットを広げてくれないと」
ならば、4歳のくんちゃんを冒険させよう。そうすれば子供も楽しめるだろう。
「細田君、それじゃあオタクが喜ばないよ」
この話、女の子いらないんだけどな。仕方ない、妹が制服姿で未来から来ることにしよう。理由とか考えてないけど。
「細田君、SF設定はちゃんとしないと」
じゃあタイムパラドックスを説明しとくか。赤ちゃんと未来のミライちゃんは同時に存在できない…と。(だが、なぜかくんちゃんは未来の自分と対話できている。)
「福山雅治のために、最高にカッコいい役を頼むよ」
ご先祖様に会うエピソードを作るか。まずい、これお父さんがかすんじゃうよ。
「細田君、映像が地味だよ」
うるせーな。じゃあ東京駅をCGバリバリで描いてやるよ。(怖すぎて、その後のくんちゃんが鉄道嫌いになりそう)
「うまくいったら、続編頼むよ」
そんな無茶な。仕方ない、くんちゃんをあまり成長させず、ロードムービー形式にして、エピソードが追加できるようにしておこう。
山下達郎の爽やかな歌に乗って、夫婦の軌跡が紹介されるエンドロールみたいなオープニング。とてもわくわくしますし、改築された家そのものにドラマが感じられます。この部分こそが、細田監督の本当に描きたかった部分のような気がしてなりません。いっそのこと悪夢の東京駅から出発してあのオープニングに帰着すれば、傑作だったかもしれません。
気になった点は、くんちゃんに対して、4歳児には理解できない水準の会話が投げかけられることです。そのため、観客に直接言葉が向いているように聞こえ、いつもより説教臭く感じられるのだと思われます。
技術力 9
陳腐度 7
クソガキ度 10
個人的総合 5
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