2019年03月31日

GCC2019:感情から逆算するゲームデザイン

 先日は、GCC(ゲーム・クリエイターズ・カンファレンス)に行ってきました。大阪で年一回開かれている、ゲーム開発の勉強会です。

 今年のお目当ては、カプコンによる講演で、最新作「デビルメイクライ5」の事例を通じて、感情から逆算するゲームデザイン作法を解説するというものです。
 内容は、サンフランシスコで開催されたGDCと同じ。ただしこちらは日本語版で完全版です。アメリカまで行く手間が省けたじゃねえか、ありがてえありがてえ。


 さて、講演の内容はリンクを見ていただくこととして、以下は感想です。
 ゲーム開発というと、どうしてもCGやらプログラムやら、技術的なトピックが前に出がちです。それは専門学校の学生でも同じで、技術のみを学んだ結果、一応ゲームの形を成してはいるが、何も伝わってこない作品が珍しくありません。原因は簡単、そもそも伝えたいことがないのです。
 「感情から逆算するゲームデザイン」は、まずユーザーに伝えたい感情が先にあり、そのためにゲームをどう作るか、という方法論でした。「デビルメイクライ5」のような、大企業の洗練されたプロダクトに見えるものが、昔ながらの泥臭い思考実験の果てに作られたと知るのは、なんとも愉快。これはぜひとも学生に伝えねばなりますまい。

 愉快といえば、ディレクターの伊津野氏は、本当に面白く話しますね。「面白くない企画マンは生き残れない」というカプコンの伝統は、25年経っても変わらないようです。プロデューサーのマシュー・ウォーカー氏に至ってはアメリカ人なのにすっかり芸人化しており、ジョークを飛ばすわ観客をいじるわでやりたい放題です。
 未プレイのため、壮大なネタバレを食らってしまいましたが、「デビルメイクライ5」、今度プレイしてみようと思います。
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2019年03月27日

宇宙イカ革命「Splatoon2」 その20

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 騎士vs魔法使いのフェスは、インクの色がなかなかよろしい。

 さて、先日のフェスは、タコシリーズのamiiboと連動しており、該当者は特別な外見でフェスに参加することができた。ところが、プレイした感じ、騎士や魔法使いはほとんど見かけなかった。amiiboを買った人が少なかったのか、あるいはamiiboの発売から日が経っているのでこのフェスへの参加者が少なかったのか、原因は定かでないが、盛り上がらないのは残念に思う。

 先月から、Switchのゲームニュースコーナーで、「週刊ギアパワー豆知識」の配信が始まった。ただの読み物ではなく、ギアパワーのかけらがもらえるので、スロットに望んだギアパワーがそろわないプレイヤーには朗報である。しかし、これは一種のログインボーナスであり、スマホゲームでもないのに週刊的いや違った習慣的なプレイを強要されるのは嫌で、これまた残念に思う。
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2019年03月24日

スパイダーマン: スパイダーバース

 アカデミー賞長編アニメ部門受賞作。まあ、「未来のミライ」が獲るとは思ってなかったけど、ディズニーを押しのけるほどとは、どんなもんかと思い、観に行った。納得である。CGアニメにはまだ表現の開拓の余地があったのだなあ、と感心。でも悔しいので以下は文句ばかり書く

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2019年03月23日

「どろろ」第九話 無残帳の巻

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 声が戻ったものの、片言でしかしゃべれない百鬼丸。おそらく、どろろの言葉を聞いて、だんだん話せるようになっている。そのことをどろろスピードラーニングと名付けた奴、やめなさい(笑)

 オリジナルエピソードをいくつか挟み、待ってました、第九話はどろろの生い立ちを語る「無残帳」。キャラクターデザインは原作から大幅変更、火袋もイタチもリファインされてやたらかっこいい。
 しかしながら内容は原作に非常に忠実。「火袋がずた袋になっちまった」「槍ってものはこう使うんだ」「曼殊沙華はどうして血の色をしているんだろう」など、印象的なセリフもそのままに、名場面が展開する。母がおかゆを素手に盛る場面は、ジョジョの「スティールボールラン」を思い出した人も多いようだが、原点はこちらだ。
 今回のアニメでは、どろろが熱で倒れたことにより、この回想場面に入った。そのため、原作にあった雄大な場面転換のビジュアルが使われなかったのだが、代わりにオープニングの一部になっている。空を覆う馬が野盗の襲撃場面につながる見事なコマ運びを、ぜひ動く絵で見たかったのだが。
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2019年03月21日

ハード争ってる場合じゃねぇ! Googleが「STADIA」を発表


 米サンフランシスコで開催中のGDCにて、Googleが新しいゲームプラットフォームを発表した。新ハードではなく、クラウドゲーミングサービスの一種なのだが、未来を行き過ぎていて今年から試験運用が始まるとはとても信じられない。

 かつてPS4を初めて触ったとき、私はShareボタンの機能に感心した。PCがなくても、プレイ中のゲームを簡単に動画配信できる。便利だなあ、これでますますプレイ動画が流行るなあ。
 ところが、「STADIA」はその逆。YouTubeの動画からクリック一つでそのゲームを遊べる。クラウドなのでダウンロード不要、ゲーム機も不要である。手軽過ぎて恐ろしい。
 これが普及すると、もはやゲーム機はいらない。ゲーミングPCもいらない。そしてもちろんパッケージ販売もなくなる。ハードとソフトを購入する必要があるのは、対戦ゲームなど即応性にこだわった一部のゲームだけになっていくかもしれない。任天堂やソニーはもちろん、STEAMもEpicGamesも商売あがったりである。

 とはいえ、いまだ日本でのサービスは未定。気になる価格も未発表。ハイエンドのゲームを動かすとなると、運営側も相当コストがかかると思われ、スマホアプリのようになんでも基本無料、とはいくまい。欧米での試験運用の結果に注目していきたい。



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2019年03月16日

諸星大二郎「オリオンラジオの夜」

orionradio.jpg 昔のヒット曲を起点に、縦横に想像をめぐらせた短編集。これは傑作です。「ぼくとフリオと校庭で」の頃と全く遜色がない。

 やはり自由に描いた時の諸星大二郎は最強ですね。特にまとまりやルールを決めるわけでもなく、一つ一つ、興味の赴くままに綴られているのですが、エッセイやら日常やらとは無縁。昭和の風景とラジオの曲、そして諸星作品ならではの不思議世界が三位一体となり、唯一無二の個性を放っています。
 今、唯一無二と言いましたが、諸星作品を読み慣れていると、過去の作品のあんな場面、こんな場面が何度も思い浮かびます。つまり同じモチーフが繰り返されているわけですが、ネタ切れなどとはあまり思いません。有名なバンドがいつもの曲調で新曲をリリースしてくれるような、信頼の諸星印と感じます。

 ところで、「西暦2525年」の演出で、一部の絵がモザイク処理されているのですが、アシスタントはほぼ使わないと言われている諸星先生、ついにデジタル入稿を始めたのでしょうか?
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2019年03月14日

衝撃の体験版「十三機兵防衛圏 プロローグ」

 画集を見て期待値が100%アップし、プロローグをプレイしてさらに1000%アップしたので、後悔など微塵もない。

 プロローグ版では、13人の主人公すべてのストーリーの冒頭部分を収録。全員気になるところで終わるので、販促効果は満点だが、まだまだ発売が先なので待ちきれない。かといって完成度の低いまま出てもらっても困るので悶える。
 まず驚いたのが、アクション性が皆無であること。見た目はヴァニラウェアお得意のサイドビューだが、キーワードを選択するノベルゲームに近いシステム。機兵が起動したら、シミュレーションやアクションになるのかもしれないが、それについては未知数だ。
 次に驚いたのが、時代設定。現代ではなく昭和から始まる。キャラクターの中に、スケバン刑事やリーゼントがいても、ヴァニラウェアなので、外連として時代錯誤のデザインを取り入れたのだろう、と気にもとめなかったら、なんと本当に昭和だった。うらぶれた色調の背景も相まって、ジュブナイルSFの雰囲気が濃い。

 流行りに遅れまいと、必死になっているゲームが多い中で、こんなに昔風の趣味に走ったゲームを作って良いのだろうか。
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良いのである。ヴァニラウェアの2Dは唯一孤高、モブのどうでもいいキャラまでかわいいので困る。
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2019年03月10日

アリータ: バトル・エンジェル

 よくぞ、よくぞここまでのものを作りあげてくださった! 「銃夢」ファンとしては感謝の言葉しかない。

 まず主人公のアリータが良い。予告やポスターでは大きな目が不気味だったが、本編を観ると全然大丈夫。「アバター」で青い宇宙人にだんだん慣れたのと同じような現象が起こる。これは製作のジェームズ・キャメロンの計算なのだろうか。「アバター」の時よりもCGのキャラが俳優と違和感なく絡んでいて、技術に長足の進歩が感じられる。
 映画の冒頭は、原作と同様、アリータが拾われ、目覚めるところから始まる。アップの映像が多くなるが、3Dで観ると質感に加えて立体感までもが伝わるので、VR一歩手前の存在感が味わえる。アリータの可愛さもマシマシである。

 次に風景が素晴らしい。原作では、スラムの上に空中都市が浮かぶビジュアルが、読者を一瞬で虜にした。映画でもそれが忠実に再現されており、これこれ、これが観たかったんだと大いに満足できる。途中で「君の名は」の「前前前世」みたいになるのはどうかと思うけど。(アリータの吹替は三葉と同じ人なのでますますそう思う)
 なお、3Dで観た場合、主観映像こそないものの、アイアンシティに迷い込んだような臨場感が付加される。

 さらにアクションが極まっている。アリータの機甲術、ザパンのダマスカスブレード、イドのロケットハンマーなど、原作通りの名称が付いた技や武器に、この映画ならではのリアリティで動きが付くのだからたまらない。未来の競技であるモーターボールの迫力も凄まじい。
 3Dだと立体感の分情報量が増え、さらに迫力あるアクション映像を楽しむことができる。

 以上でたびたび書いたように、「アリータ」は、「アバター」「ゼロ・グラビティ」と並ぶ、3Dで観るべき映画だ。だが残念なことに、ほとんどの映画館で3D上映が終了してしまっている。「スパイダーマン」が控えているせいとは言え、なんたる不遇!

 さて、「銃夢」のファンとしては、あまりにもクレイジーなノヴァ教授がどのように描かれるのかが気になるところ。「アリータ」では、ノヴァは様々な人物の意識をジャックして、アイアンシティを監視しているという設定だ。これなら本人は登場する必要がない。出ないのか、残念だなあ、と思って見ていたら、最後の最後、原作通りのメガネで現れた! 本当に忠実に作ってくれたなあ、と感激である。

 文句を付けるとすれば、邦題に「銃夢」と入っていないことと、あまりに未完であること。長い原作をほとんど省略しておらず、続編の余地だらけだ。モーターボールの本戦が始まれば、ジャシュガンとの対決が待っている。ザパンもちゃんと復讐の機会を残している。何より、ノヴァとの対面が控えているのだ。ザレムが観たい! とアイアンシティの住民のような気持になる。

映像美 9
原作リスペクト度 10
続編必要度 9
個人的総合 9

他の方の注目すべき批評
忍之閻魔帳:バーチャルボーイはひどい。
映画にわか:「FF7」のミッドガルとの類似を指摘。
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2019年03月03日

どこのゲーム会社だ? 社員一斉解雇騒動

 2月26日、ゲーム会社を解雇された、というツイートが話題になりました。予告なし・ほぼ全員が一斉に解雇・給与未払い、という悪質なものです。同じ会社の社員と思われるいくつものツイートが流れたために、それなりの規模の会社が潰れたのでは、と不穏な空気が流れました。

 そうなると、件の会社はどこか、という犯人探しが始まります。ツイートでは誰一人として社名を明かしていません。最近倒産した会社や、リリース中止のゲームに関わった会社などが、謂れのないとばっちりを受ける中、アルフリードゲームスという会社が有力な候補として浮上しました。これは確定情報ではないため、両方の説をリンクしておきますね。



 私はゲーム会社には相当詳しいと自負しているのですが、この社名は初耳です。それもそのはず、設立から2年経っておらず、リリースした作品もまだありません。
 そんななか、目をひくのが企業理念。

会話によって社会現象を巻き起こすコンテンツを創る
異なる価値観に遭遇して「これってどう思う?」と友達に話したり、
新たな発見をして「これって凄くない?」とSNSで自慢したり、
我々が提供するコンテンツを通して周囲の人に思わず話したくなる。
そうして生まれる会話の連鎖で社会現象が巻き起こっていく。
そんなふうに人の会話を繋いでいくコンテンツを創り続ける。

「給与未払いでの解雇、どう思う?」「こんなマイナーな会社見つけるなんて凄くない?」 今まさにネット上は会話の連鎖が巻き起こってます。話題になるゲームこそ出ませんでしたが、社員の解雇によってこれ以上ないほど理念を達成したわけです。
 理念なんて、とりあえず掲げとく美辞麗句。普段はどうでもいいと思っていましたが、もしもの時のために、余計な言葉は掲げない方がいいという戒めになりました。
posted by Dr.K at 16:40| Comment(0) | 馬鹿は黙ってろ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月01日

西部生活シミュレーター 「Red Dead Redemption 2」その7

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 突然始まった牧場物語に戸惑いが隠せない。

 6章を終えると、エピローグが始まる。すぐに終わるだろうと思ったら、とんでもない。
 1章のように一本道の物語になるのではなく、本編と同じオープンワールドになっている。こんなものエピローグとは言えない。マップが追加されて倍近い広さになるものをエピローグとは言えない。複数の章があって、クリアに数日を要する長さのものをエピローグとは言えない。
 ダッチ・ギャングから抜けた後のジョンが、前作「Red Dead Redemption」までをどのように過ごしていたかを描いているのだが、しみじみと良い物語だ。ギャングの一味としてドンパチに生きてきた若造が、大人になって家族を守るために平凡な仕事をする葛藤。スケールは違うが、不良学生が長じてサラリーマンをやっているようなものであり、現代にも通じる普遍性がある。
 そして、エピローグが終わると、一瞬も目を離せないエンドロールが始まる。ジョンの結婚、仲間との別れ、元ダッチ・ギャングの面々のその後など、エンディングらしい映像に交じって流れるのは、事件を捜査する保安官の様子だ。彼らがジョンを発見するところでエンドロールは終わる。
 その後のことは、前作「Red Dead Redemption」で語られる通りだ。家族を持たなかったアーサーが、ジョンに託した平和な生活は、わずかな間に崩れ去る。だからこそこのエピローグが愛おしい。超大作にふさわしい幕切れだ。もう一度前作をプレイしたくなった。
posted by Dr.K at 21:53| Comment(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする