同僚にすすめられて観たのだが、こりゃ面白いに決まってるわ。脚本のリチャード・カーティスの持ち味が強く出ている。
リチャード・カーティスと言えば、かつて「ラブ・アクチュアリー」でラブストーリーの頂点を極めた監督。しかし私は一つの疑惑を抱いた。
主人公のジャックは、売れないミュージシャン。幼馴染のエリーが献身的にマネージャーをしてくれているのも心苦しく、引退を決意する。その夜、謎の大停電で交通事故に遭ったジャック。退院すると、なぜか誰もビートルズを知らないのだった…
もう予想がついたと思うが、ビートルズの存在しない世界で、ジャックがビートルズの曲を演奏してヒットを飛ばすことになる。転生もののラノベか、はたまた〈なろう小説〉かという出だしだが、もっとしっくりくるたとえを私は知っている。「ドラえもん」の「もしもボックス」だ。
思えば、
「アバウト・タイム」の、クローゼットにこもって時間を遡るという仕掛けも、引き出しのタイムマシンとどこやら似通っているではないか。
リチャード・カーティス、実は「ドラえもん」のファンなのじゃないか。
例によってSF考証はテキトーだが、ビートルズが存在しない世界では、オアシスも存在しない。なるほど。でもローリング・ストーンズは平気というあたりも笑える。エド・シーランが本人役で出ずっぱりというのも面白いところだ。
「イエスタデイ」は、異世界ものの一種ではあるが、時間は遡らない。つまり、ビートルズの曲が今の時代に売れるか? という問題になってくるのだが、オリジナルに忠実であろうとするジャックに、周囲が難癖をつけるのがまたおかしい。現代の音楽業界に対する風刺が効いている。
荒唐無稽な設定から始まって、恋愛中心の物語へシフトし、多幸感のある結末へと導くカーティス節は健在。ビートルズにそんなに詳しくなくても大丈夫。「ジョーカー」でやさぐれた心を癒してくれる貴重な一本だ。
ヒロインの可愛さ 9
エド・シーランの好感度 9
主役のショボさ 8
個人的総合 8