この記事では、映画「この世界の片隅に」を「片隅」、「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を「さらにいくつもの」、マンガ「この世界の片隅に」を「原作」と、それぞれ略して表記します。
「さらにいくつもの」を観て帰宅し、私がまずしたことは、「片隅」のブルーレイを再生することでした。
「さらにいくつもの」は、続編ではありません。「片隅」のヒットを受けて約30分の物語が足された〈長尺版〉です。「片隅」は、原作をかなり大胆に省略していましたが、「さらにいくつもの」はいくつかのエピソードが復活し、原作に近くなりました。
さて、私がブルーレイで確認したかったのは、画像の場面。最終カットとなる、北條家の全景です。「さらにいくつもの」では、終戦直後、枕崎台風のエピソードが追加されました。庭の木が倒れ、裏の崖が崩れ、北條の家に大きな被害が出ます。なのでこの通り、屋根がずいぶん壊れているわけですね。
一方、「片隅」には、枕崎台風の場面はありません。では、結末の家はどうだったのだろう、と思って確認したところ、上の画像の通りだったのです。つまり、エピソードはなくても、台風はあったものとしてもともとちゃんと描いてあったのです。
「さらにいくつもの」は、一事が万事こんな感じで、手帳が破いてあるのはどうしてか、口紅はどこで手に入れたのか、エンドロールで円太郎が持っている鍬の由来は、など、原作読者だけが知っていた「片隅」の余白をことごとく埋めていきます。ですので、もしかすると、「さらにいくつもの」の方が、初めて観る人にもすんなり理解できる話になっているかもしれません。しかしながら、「片隅」の2時間で済むテンポの良さも捨てがたいところがあります。
リンさん絡みの追加部分は、なぜこんな大事な場面が削られていたのか、と思うほど印象深く、すずさんのキャラクターを別の角度から掘り下げています。
さすがに「片隅」のように大ヒットとはいきませんが、「さらにいくつもの」のブルーレイが発売になるのかどうか、気になるところです。
印象の変化 7
物語の深み 8
パンフレット 10
個人的総合 8