2020年01月30日

この世界の(さらにいくつもの)片隅に

 この記事では、映画「この世界の片隅に」を「片隅」、「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」を「さらにいくつもの」、マンガ「この世界の片隅に」を「原作」と、それぞれ略して表記します。

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 「さらにいくつもの」を観て帰宅し、私がまずしたことは、「片隅」のブルーレイを再生することでした。

 「さらにいくつもの」は、続編ではありません。「片隅」のヒットを受けて約30分の物語が足された〈長尺版〉です。「片隅」は、原作をかなり大胆に省略していましたが、「さらにいくつもの」はいくつかのエピソードが復活し、原作に近くなりました。
 さて、私がブルーレイで確認したかったのは、画像の場面。最終カットとなる、北條家の全景です。「さらにいくつもの」では、終戦直後、枕崎台風のエピソードが追加されました。庭の木が倒れ、裏の崖が崩れ、北條の家に大きな被害が出ます。なのでこの通り、屋根がずいぶん壊れているわけですね。
 一方、「片隅」には、枕崎台風の場面はありません。では、結末の家はどうだったのだろう、と思って確認したところ、上の画像の通りだったのです。つまり、エピソードはなくても、台風はあったものとしてもともとちゃんと描いてあったのです。

 「さらにいくつもの」は、一事が万事こんな感じで、手帳が破いてあるのはどうしてか、口紅はどこで手に入れたのか、エンドロールで円太郎が持っている鍬の由来は、など、原作読者だけが知っていた「片隅」の余白をことごとく埋めていきます。ですので、もしかすると、「さらにいくつもの」の方が、初めて観る人にもすんなり理解できる話になっているかもしれません。しかしながら、「片隅」の2時間で済むテンポの良さも捨てがたいところがあります。
 リンさん絡みの追加部分は、なぜこんな大事な場面が削られていたのか、と思うほど印象深く、すずさんのキャラクターを別の角度から掘り下げています。

 さすがに「片隅」のように大ヒットとはいきませんが、「さらにいくつもの」のブルーレイが発売になるのかどうか、気になるところです。

印象の変化 7
物語の深み 8
パンフレット 10
個人的総合 8
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2020年01月26日

期待のゲームが延期ラッシュ

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 どういうわけか、今月は大作ゲームの発売延期報告が相次ぎました。これを機会に、各社のお知らせ文を比較してみましょうか。

 「そのスケールや複雑さゆえ、必要となるゲームテストやバグ修正、作り込みの量も膨大です」
 末尾で、関係各所へのお詫びはしているものの、ユーザーに対しては、素晴らしいものを作るので待っていてくれ、というストロングスタイル。開発の大変さを短く簡潔に説明した文言にも賢さと潔さを感じます。まあ、「ウィッチャー」の開発会社ですから信用されてますよね。

 「発売日の変更により、開発チームの過度な負荷を軽減しながら、すべての部分を納得のいく水準までに仕上げることができると判断したためです」
 ノーティードッグ社は、素晴らしいゲームを作る反面、従業員に過酷な労働を強いているとして、近年批判を浴びていました。海外の企業には珍しいですね。そこで、今回の延期に際しても、従業員への配慮をアピールする文面になってます。

 「我々自身もアベンジャーズをはじめとするキャラクターの大ファンであり、本作に携われることを誇りに思っています」
 アベンジャーズを題材にしたオープンワールド(?)となる本作。スタッフの原作愛をあらためて表明し、ユーザーとの一体感を演出する巧みな文面と言えます。

 「最高のかたちで皆様のお手元にお届けするため」
 こういう具体性のないかっこいい言い方、もうやめませんか。FF15の「極上クオリティ」で凝りておくべきだと思います。延期への反応が「やっぱりな」で占められているのも哀愁を誘います。一ヵ月の猶予で、どれほどのものができるかお手並み拝見です。

 画像は、この記事に最もふさわしい「のびのびBOY」でした。
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2020年01月22日

シンクロナイズドモンスター

 「レ・ミゼラブル」での熱演で助演女優賞を獲得したアン・ハサウェイが、見るからにしょうもない怪獣映画で、落ちぶれた役をやっている。きっと、悪いプロデューサーに騙されて出演したに違いない。と、思ったらなんとこの映画、アン・ハサウェイが自ら製作総指揮をやっている。なんなの、この人。

 主人公のグロリアは、Webの仕事をクビになったライターで、現在は無職。働かず飲んだくれていたら、彼氏に家から追い出された。田舎に帰って、幼馴染のオスカーと出会い、とりあえず彼のバーで働くことにする。田舎の友達と飲んでだべる、テンションの低いつまらない話だ。
 ところが時を同じくして、韓国のソウルでは大怪獣が出現し、世界的なニュースになっていた。グロリアは、この怪獣の仕草が自分と同じであることに気づく。きっかり朝8時、グロリアが近所の公園に立つと、予想の通り、ソウルに怪獣が現れた。そして、そのことを知ったオスカーが公園に足を踏み入れると、今度は怪獣の隣に巨大ロボットが出現するのだった。

 奇抜な話は興味を引くものの、怪獣のシーンはごくわずか、だいたいは田舎の飲んだくれの映像なので、さえないことこの上ない。酔っぱらいの一挙一動のせいで、ソウルは恐怖に陥れられている。罪悪感に怯えるグロリアと対称的に、オスカーはどんどん自意識を肥大させ、ソウルに被害を出したくなければ俺に従え、とグロリアを脅迫する。
 ここらで、この作品の怪獣が暴力や抑圧のメタファーであることがわかるのだが、だからと言って、グロリアとオスカーだけがこの怪現象を起こせる理由の説明があんな適当とは、開いた口がふさがらない。とはいえ、怪獣ごっこを真剣に演じるアン・ハサウェイなんて、もう二度と見られないので貴重な珍品なのは間違いない。

アイデア 9
盛り上がり 2
邦題 8
個人的総合 3
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2020年01月19日

震災から25年

 今年は阪神・淡路大震災から25年目。私は現在50歳なので、人生のちょうど真ん中で地震を経験したことになります。当時の家は倒壊しましたが、今も同じ場所に建て直して住んでいます。しかしあれから25年ですか、どうりで家のあちこちにガタが来るわけだ。

 今日は、近くの寺が年に一度の大祭でにぎわっています。
 あの年も、翌日からの大祭に備えて通りでは屋台が準備されていたのですが、地震でそれどころではなくなってしまいました。しかし、いくつかの屋台は営業しており、食べ物をふるまい、人々を元気づける声掛けをしていました。
 毎年お祭りが無事に開かれると、その時のことを思い出します。

posted by Dr.K at 10:28| Comment(0) | 講師の独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月14日

アナと雪の女王2

●アクション方向に進化
 ディズニープリンセスの価値観を一新して喝采を浴びた前作。その続編となる今回は、調子に乗って(?)冒険活劇に振り切っています。私はもともとアクション映画が好きですので、大いに楽しみましたが、前作の女性ファンにはこんなの受けるんでしょうか? 他人事ながら心配です。氷を使ったエフェクトもさらにパワーアップしており、もはや必殺技と言っていいレベル。XMENとも対等に戦えそうです。
 物語は、舞台を国の外へ広げ、エルサの魔力の秘密へと迫っていきます。4元素の精霊が出てくるなど、ファンタジーRPGのような展開は、ディズニー映画としては新しいかもしれませんが、ゲームやらライトノベルやらに漬かっている日本の観客から見ると陳腐に感じるかもしれません。精霊の中では、サラマンダーが超かわいい。でも意思の疎通が出来ないんですね。「モアナ」の鶏や、「リメンバー・ミー」の黒犬を思わせます。

●オラフ
 観たタイミングが冬休みという事で、映画館にはちびっ子が多数いましたが、オラフの一挙一動に爆笑しており、熱い支持に感心しました。でも、この子らの歳だと、5年以上前となる「1」は劇場では無理ですね。家でDVD等で観たのでしょうね。
 ピエール瀧の不祥事により、吹替声優が変更になっていますが、ちょっとキャラ的には薄くなったかな、という感じです。
 それにしても、観客が前作を観ている前提で作られているのに驚きます。続編物では、時として前作を観ていない観客への配慮があったりしますが、今作は、オラフによるあらすじ説明があるだけ。しかも雑過ぎて誰にも分らないというギャグになっています。

(注:以下にネタバレを含みます)

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posted by Dr.K at 22:18| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月13日

悪夢に溺死する。「DEATH STRANDING」その5

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 ついにクリア。しかし、エンディング直前のイベントで、どうしたらいいかわからず、ラスト・ストランディングを起こしまくった。仕方なく攻略サイトに頼ることとなり、メッセージ性のある大事なイベントを自己解決できなかったのは悔しい。

 自分でも驚きなのだが、ストーリーが終わったのにゲームをやめる気が起きない。
 このゲームでは、ストーリーに沿ってプレイすることで、アメリカを横断するカイラル通信網が完成する。しかし、必ずしも立ち寄る必要のないシェルターがいくつかあり、通信網にはところどころ抜けがある。これらを埋めるべく行動すると、新たなキャラクターとの出会いがある。また、エンディング後にぽつぽつ投下される後日談的なドキュメントも興味深い。
 さらに、国道の復旧を進めたり、ジップライン網を整えたりするのも楽しい。これらは自分の配達を快適にするのみならず、オンラインを通じて誰かのプレイに役立つので、妙な充実感がある。
 何より、ストーリーを進めるという義務がなくなったことで、何をしても自由なのが大きい。ファストトラベルで興味のある地域へ飛び、気ままに配達を楽しんだり、プレミアム配送の高みを目指したり、敵と戯れたり、景色を愛でたり… こんなことが面白いのは不思議だ。

 荷物を狙ってくる〈ミュール〉について、ゲーム内では、運び屋が配達依存症になったもの、と説明されていた。もうちょっとマシな説明をつければいいのに、と失笑したものだが、今はちっとも笑えない。このゲームをやめられない私こそが配達依存症だからだ。

posted by Dr.K at 22:06| Comment(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月07日

永野護「ファイブスター物語」15巻

fss15.jpg 驚いた。このマンガの場合、2年以内に新刊が出るなんて順調すぎる。

 とはいえ、ストーリーはちっとも順調じゃないんだよねえ。キャラクターは増える一方、横に広がるばかりで一向に前には進まぬ。おまけに描き分けができないタイプの作家なので、誰が誰やらさっぱりになることも珍しくない。
 これまで、影として扱われてきた魔法帝国が表立って動き、長らく活躍のなかったドラゴンが描かれ始めたのが新しい傾向? 人知を超えた力の激突によって、宇宙が滅びてしまえばいつでも最終回にできる備え、と見るのは意地悪に過ぎるだろうか。
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2020年01月03日

ジュマンジ/ネクスト・レベル

 年末から人気映画が目白押しなので、早くも上映終了になりそう。急いで観に行った。
 前作が予想外に良かったとはいえ、同じキャストなのでどう作っても二番煎じになりそう、と思っていたらなかなか捻った続編だった。

 大学生になったオタク青年、前回の冒険で射止めた彼女が大学デビューで華やかに過ごしていることに引け目を感じ、連絡を絶ってしまう。そして、ゲーム内でムキムキマッチョとして活躍したことが忘れられず、愚かにも再び「ジュマンジ」へ入ってしまう。彼を助けるため、かつての仲間がゲームに飛び込んでいく。
 ゲーム内キャラは前作の通りだが、中身は別人。彼女は前と同じ美人格闘家になったが、たまたま家にいて巻き込まれてしまった爺さん二人が、ムキムキマッチョのリーダーと動物学者になってしまう。爺さん達はコンピューターゲーム自体を知らないので、状況をさっぱり理解できず、冒険の進行は困難を極める。
 バカバカしいコメディだが、途中で中身が入れ替わるという大ネタがあり、演技ががらりと変わるのは見事。ジャック・ブラックの女子演技は今回も面白い。ジャングルを飛び出し、砂漠にはダチョウの大群、渓谷にはマンドリル、飛行船でのボス戦など、映像面もスケールアップ。これで最後か、と一瞬しんみりさせておいて、さらなる続編での原点回帰を匂わせる結末も悪くない。

 ただ、冒頭のテンポがどうにも悪く、なかなか盛り上がらないのは難点。観ていることが前提なのか、前作の設定がほとんど説明されないまま使われるのも不親切だ。青年の存在感が薄く、事実上お爺ちゃんが主役というのも、賛否が分かれそう。吹替えは、流行り言葉や死語が悪目立ちしていたものの、昔のテレビ放送のような安定感があり、こういう気楽な映画には合っている。ただし、吹替え版だとエンドロールで岡崎体育の歌を聞かされるのが大幅にマイナスである。こういうのいい加減にやめてもらえないものだろうか。

役者演技力 9
老人力 8
主役の薄さ 7
個人的総合 6
posted by Dr.K at 20:57| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月02日

悪夢に溺死する。「DEATH STRANDING」その4

ZingZingZip.jpg 「十三機兵」をクリアしたので、配達再開。

 運ぶことが主体であるこのゲームにとって、最大の敵はBTでもミュールでもない。地形である。
 徒歩での配達はスローペースだが、しばらくプレイすると、バイクやトラックが使えるようになる。さらに国道を復旧させれば、道中も快適である。
 ところが、ゲームも後半になってくると、険しい山々が立ちふさがる。この地形には、乗り物もお手上げ。だから再び徒歩になるのだが、しっかり安定したコースをたどらないと、落ちたり転んだりの危険が伴う。ただ歩くだけのことが困難なゲームなどあまり聞いたことがない。
 だが、ここで救世主となるアイテムが登場する。


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posted by Dr.K at 20:28| Comment(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年01月01日

2020年

 あけましておめでとうございます。

 大晦日はいつも通り紅白を観て過ごしましたが、新元号の始まりだというのに、あまり新鮮さのない中身でしたね。まだ若いのに、メドレーなどで過去の曲を歌っている出場者が多くて気になりました。そんな中、演歌枠で定着していたイメージをかなぐり捨てて、ドラゴンボールを歌った氷川きよしは、誰よりも若々しかったです。
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最初は西川貴教かと思いました。
 さて、今年も総合司会がウッチャンですので、合間にはコント的な要素があります。紅白では、お笑い番組のような尖ったことはできませんので、いつもながらゆる〜い進行です。ところがそこへ、
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はるかカッター!
 司会ではふわふわの綾瀬はるかですが、なぜかコントは全力です。本家より面白いじゃないですか。この場に呼ばれていない髭男爵が不憫でなりません。
posted by Dr.K at 22:43| Comment(0) | 講師の独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする