時は1807年、5年前に消息を絶っていたオブラディン号が無人で発見された。主人公は、この船の調査を依頼された保険調査員。船内をくまなく探索し、事件の真相を探るとともに、乗員乗客60人の安否と死因を突き止めるのだ。
主人公の持つ懐中時計は、死者に対して使うと、その死の瞬間を見ることができる。わずかな音と、静止した映像から、その人物が誰か、死因が何かなどを探らねばならない。
とんでもないゲームだ。
何しろこのゲーム、フラグというものがない。
例えば、「逆転裁判」などをプレイしていると、主人公より先に、事件の真相に気づくことがある。逆に、プレイヤーが気づいていなくても、条件を満たせば主人公が事件を解決してしまう。このように、推理もののゲームは、物語の進行とプレイヤーの理解度とが必ずしも一致しないところがあった。
しかし、「リターン・オブ・ジ・オブラディン」は違う。死体を探し尽くせば一応エンディングを見ることはできるが、ほとんどの人物が名前も安否も不明なままとなる。何度も死の瞬間に立ち戻り、わずかなヒントから名前を暴くのだ。互いを呼び合って会話をしているなんてのは、ごくわずか。言語や服装、何気ない瞬間の人間関係から、何者かを判別していく。
正解にたどり着いた時の達成感が素晴らしく、やめ時が見つからないほどに熱中した。事件はかなり凄惨だが、主人公が関係者でも探偵でもない保険調査員という設定が絶妙。パズルを解くような俯瞰的な視点は、まさに純粋な推理にふさわしい。
私はすべての調査を終えてしまったが、記憶を消してもう一度プレイしたいゲームだ。