2021年05月30日

桜庭一樹「小説 火の鳥 大地編」

daichihen.jpg 「大地編」は、手塚治虫がわずかな構想だけを遺し、ついに描かれることのなかった「火の鳥」である。それを、桜庭一樹が小説化した。
 朝日新聞をとっているので連載中から知ってはいたが、やはり新聞という形ではどうにも読みにくい。こうして本になってくれるとようやく読む気になる。
 物語は、第二次世界大戦前の上海から始まり、楼蘭、そして日本へ。タイムリープを駆使しての歴史改変ものという側面もあり、小説だから上下巻で済んでいるが、マンガだったら何巻かかるかわからないスケール感だ。語り手が何度も交代するので戸惑うが、それもまた火の鳥らしいと言えばらしい。また、火の鳥がキャラクターとしては出てこない作りは、「乱世編」を思わせる。
 ライトノベルではないので挿絵などない。個人的には何か所かだけでも絵を入れてほしかった。手塚キャラをあてはめて書いているとのことだが、絵が登場人物紹介のページだけで、想像が難しいところがある。歴史上の人物がどんな顔で想定されているかも興味があるし、主要な人物以外でどんな手塚キャラをイメージしたのかも知りたい。たとえば、結末にちょっとだけ出てくる浮浪児は「どろろ」だと思われるが、他にそういうのがあっても見逃していそうだ。いや、文章だけなのでそもそも見ることはできていないのだが。
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2021年05月24日

24年ぶりの再会 「FINAL FANTASY VII REMAKE」その2

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 ビジュアルの作り込みが尋常でないので、どこで撮影してみても絵になる。

 最新の洗練されたゲームのふりをしているので騙されるが、こいつはとんでもないキメラだ
 まず、海外のゲームの潮流に合わせて、同行者との会話を聞きながら進む移動シーンが作られている。アスレチックのような複雑な地形を、簡単操作ですいすい進んでいくのは、何やら「アンチャーテッド」風だ。
 一方で、このゲームは和製RPGを素性とするので、ステータス管理がぎっしり。中でも、武器パワーアップは煩雑過ぎる。マテリアの活用だけでもそこそこ複雑なのに、サブコアのパワーアップとか知らないままで進めている人もいるんじゃないか。

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 極めつけは戦闘だ。移動したり剣を振ったりは、アクションゲームの作法で行うのに、魔法や各種必殺技は昔を引き継いだかのようなコマンド選択。この部分だけ非リアルタイムで時間が止まるという、一貫しないにもほどがあるシステム。よくもまあこんな合わせ方をしたものだ。おかげで、アクションのつもりで操作しても、コマンドRPGのつもりで操作しても窮地に陥る厄介なプレイフィールになっている。
 新システムで最も得をしたのはバレットだろう。元のゲームでは、よくあるパワーキャラで済まされていたが、「リメイク」では、近接攻撃が届かない敵を狙うことができるので、戦略的に重要なキャラに昇格した。その銃を他のキャラにも貸してほしい(笑)
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2021年05月22日

今週は色々あり過ぎた

 これだけのニュースが集中した週は、ちょっと記憶にない。

5/18:田村正和の訃報
 4/3に心不全で死去。享年77歳。
 私は、こんな記事を書いてしまうくらいには、「古畑任三郎」のファンなので、なんとも惜しい。先日放送された「ラスト・ダンス」も観たが、2時間があっという間だった。やはり面白かったんだなあ。

5/19:新垣結衣と星野源が結婚報告
 唯一のめでたいニュース! でもファンにとっては訃報みたいなもんか(笑)
 正月に「逃げ恥」の後日談となるスペシャルドラマが放映されたが、あれはもうほとんど未来のシミュレーションということになってしまう。そして、ネット上ではどんぎつねがすっかり振られた扱いになってて笑う。

5/20:三浦健太郎の訃報
 5/6に急性大動脈解離で死去。享年54歳。
 あまりにも急死でショックも大きかった。「ベルセルク」がなかったら、今知られているほとんどの大剣キャラは生まれなかっただろう。連載が長期にわたり、完結が先か、作者が亡くなるのが先か、とファンから冗談交じりに言われるタイトルはいくつもあるが、三浦先生はあまりに若すぎる。

5/22:富永一朗の訃報
 5/5に老衰で逝去。96歳なので大往生だ。
 「お笑いマンガ道場」で知られる富永先生だが、約30年前、一度だけお会いしたことがある。大分で、大正時代に活躍した漫画家を顕彰するイベントがあり、同郷の富永先生が呼ばれた。私は、研究者の卵として、教授の代理で登壇することになった。いつも文献ばかり見ていた私にとっては貴重な経験だった。宿舎も一緒だったので、もっと色々話しておけばよかったなあ。
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2021年05月20日

「COFFEE TALK」の奇妙な味わい

 PS+今月のフリープレイは「コーヒートーク」。プレイしてみたら、想像したのと全然ゲームが違う

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 客のオーダーに応じてコーヒーを作る、という内容は事前に知っていたので、もっとお仕事シミュレーション寄りのゲーム性かと思っていた。実際には、飲み物をアクセントにして会話劇が進むという、限りなくノベルゲームに近いものだった。
 客はそれぞれにドラマを持っている。身分を越えた恋、仕事の悩み、親子のもつれ、などなど。亜人が行き交うファンタジーな設定にも関わらず、話題はとっても現実的だ。普通の人間社会として描くと、風刺が効きすぎるところを、このファンタジー性で緩和しているように感じる。また、店のカウンター以外は一切描写がなく、舞台劇を眺めるような味わいもある。
 キャラの表情が、一昔前の日本のマンガのような描き方で、なんとも懐かしい。インドネシアで開発されたゲームとのことだが、日本のアニメやゲームのファンが多いお国柄が良く出ている。ゲームの舞台にシアトルを選ぶあたりに、アメリカへの無邪気な憧れが感じられ、それでいてコーヒーのメニューが東南アジアのまんまというちぐはぐさも、なんだか微笑ましいところがある。インディーゲームらしく、クリエイティブへの自己言及がそこかしこに見え隠れするのも面白い。
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 お気に入りのキャラは吸血鬼。どっかのマンガで見たようなイケメンだが、こういうのもBLと言うのだろうか。インドネシアのオタクも業が深いぜ。
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2021年05月16日

ジョイコンを修理に出しました

 Switchがついに故障しました。何かの拍子に、キャラなどが勝手に動き出します。これがかの有名なジョイコン・ドリフトか! 購入以来、「スプラトゥーン2」など遊び倒しているので、スティックがヘタるのも無理はありません。
 実は、先月クリアした「ファイアーエムブレム 風花雪月」のプレイ中すでに症状が出ていました。ただでさえ難関のステージに挑んでいるのに、カーソルが勝手に流れ、選びたいユニットを逸れたり、違うコマンドに決定されたりと、散々でした。やり直しができる〈天刻の拍動〉が余ってなかったら本当にやばかったです。

 そんなわけで、ジョイコンを修理に出すことにしました。説明書に案内があるはずです。Switchの箱を調べて思い出しました。このゲーム機、説明書なかったわ。
 続いて、公式サイトをあたります。サポートのページがありました。これは詳しい! 修理品の送り方などが、動画で説明されており、小中学生でも容易に申し込めそうです。さっそく説明の通りに梱包して修理センターに送りました。
 そしてありがたいことに、対応が超早い。ちょうど1週間で修理品が帰ってきました。送料や技術料はかかりますが、確実に直るのはやはり公式の修理ですね。大事に使わせてもらいます。
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2021年05月15日

「Subnautica」その5 ぼくの秘密基地

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 ピストルサイズのビルダーから、平然と大きな建造物が生成される。3Dプリンター的な設定らしいが、私にはドラえもんの秘密道具にしか見えない。

 よし、基地を作ろう。ところが、パーツと必要素材のリストこそあるものの、作り方や使い方はどこにも説明がない。さすがサバイバルゲーム、とりあえずやってみるしかない。
 まずは〈基礎〉を設置してみる。平らな床が生成された。なるほど、これで設備が水平に置けるのだな。必死に平らな海底を探す必要がなかった。無駄な気遣いをしてしまった。
 基地と言うからには、何らかの部屋が欲しい。〈多目的ルーム〉のレシピが今のところ不明なので、必要素材がわかっている〈スキャナールーム〉を作ってみた。おお、なかなか雰囲気があるぞ。ところが、部屋に入れない。〈ハッチ〉をつないで、入り口を作る必要があるとわかった。〈ハッチ〉を付けた。入れた。真っ暗だ。〈ソーラーパネル〉を付けると、電気が通って明るくなった。よしいいぞ。空気がなくて死にかけた。〈ポンプ〉を付けて酸素を供給する。ようやく滞在できる設備になった。
 部屋や通路には、自由に内装設備を配置することができる。ぼくだけの秘密基地、という感じで妙に満足感があり、物語の続きはもういいか、という気分になってきてしまった。
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 夜になると停電するショボい基地ですらこうなのだから、深海に大きな基地など作れた日にはどんなにか楽しいだろう。まだそこまでの用意は整っていないんだけどね。
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2021年05月10日

アニメ「SHIROBAKO」に見事騙される

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 Eテレで再放送していたのを、録画して全話観た。噂通りの名作だった。

 「どんどんドーナツ、ど〜んと行こう!」
 物語は、高校のアニメ同好会の5人が、業界での活躍を志すところから始まる。なにしろ平凡なアニメ絵の女の子たちのこと、業界ネタを交えつつ、ゆる〜く成功していくのかなあ、などと予想した。ところが、会社の仕事は厳しくもリアルで、1クールかけて1本の番組を完成させていく過程には、大変な見ごたえがあった。
 2クール目に入ると、会社は新たな番組の制作に入り、主人公の宮森は、制作進行の下っ端からデスクに大抜擢される。ここで、物語は意外な方向に舵を切る。5人の女の子以上に、脇のオッサンが輝きだすのだ。番組の質を上げるため、会社は外部のスタッフの協力を仰ぐ。彼らは、一癖も二癖もあるオッサンたちだが、その実態はレジェンド級のクリエイターだ。彼らの職人的な気概を伝えるため、作中作の形になるアニメも手を抜かず作られている。「アンデスチャッキー」のあたりで、「SHIROBAKO」の本当に伝えたかったことはこっちか、と気づく仕組みだ。オッサンの昔はすごかった自慢なんて、誰も聞きたくないし視聴率も取れない。だが、入り口が女の子なので、観られてしまうのである。騙し討ちもいいところだ。
 毎週熱いエピソードが盛られており、働く人たちに我が身を振り返らせるパワーが漲っている。オッサン視聴者たちにこそお勧めである。
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2021年05月05日

「Subnautica」その4 ご利用は計画的に

 前回の事件があったので、「当分救援は出せませんわ。設計図送っとくんで、長期滞在になるけどがんばって。ほなまた。」という主旨の通信が届いた。見捨てるつもりだな、このやろう。

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 さて、その設計図の送り先というのが、墜落した母艦オーロラ号である。周囲は汚染されているので対放射能装備が必須。今までは、行き当たりばったりに素材を拾っては適当なものを作ってきたが、今後は計画的な素材集めに切り替える。どうにか装備が完成し、オーロラ号に入ることができた。
 しかし、調査は長期に及びそうだ。拠点である脱出ポッドと何度も往復するのはいかにも効率が悪い。ここで、初めてじっくりと制作可能なもののリストをながめ、オーロラ号近くの海底に、基地を建てることにした。

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 スキャナーを使って、海底の残骸などを調査すると、新しい設計図を手に入れることができる。グラブスフィアという、よくわからない機械を作ってみたところ、これが超便利。罠みたいなもので、近くの魚を捕えていてくれる。おかげで水や食料の確保がぐんと楽になった。これからは、探索や基地づくりに時間を割けそうだ。ありがたい。
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2021年05月03日

JUNK HEAD

 人類が滅びかかった未来の地下世界を舞台にしたSF作品。2009年にたった一人で作り始めたが、15年に起業して長編として完成させた。

 監督の堀貴秀は、新海誠が作った「ほしのこえ」に触発されて、「ジャンク・ヘッド」に着手したらしい。いやいや、ちょっと待て。新海誠も確かにすごいけどさ、あれはデジタル技術が普及した結果、一人でもアニメが作れるようになりました、という成果でもあるだろう。ところが堀監督は、何を思ったか全編をパペットアニメーションで作ってしまった。造形方面に明るい人とは言え、1日がかりで数秒しか撮れないような方法を選ぶなんて、どうかしている。
 しかしながら、CGと違う実在感は確実に効果を上げている。特に、流血表現は目を引いたが、実際に液体を使っているのだろうか? 何でも撮れると思っていたが、CGもまだまだだな、と感じさせられた。

 個人が執念で完成させた作品、と聞くと何やら難解で観念的な内容になりそうだ。映像も暗くてグロいし、普通の人はあまりお近づきになりたくない雰囲気がするのでは。ところがどっこい。ストーリーは中学生が書いたようなピュアさで、作りこまれた絵とのギャップが凄まじい。人類の存続のために、生命の樹を探しに行くという大風呂敷と、その日暮らしの呑気なマリガンたちとの対比も面白い。クリーチャーが徘徊し、食うか食われるかの世界なのに、この緊張感のなさはシュールだ。ギャグはしょうもないし、アクションはベタ。PS1の頃のRPGみたいで、とても親しみが持てた。

 パンフレットは高価いがマストバイ。声優も自分なのでインタビューもなく、評論家のレビューもない。メイキングを中心に、すべてが監督の言葉で書かれていて読みごたえがすごい。そして何より、パンフレットの収益が次回作の資金になるそうで、ここはぜひ応援せねばなるまい。
 続編が作られるのかどうかはわからないが、経験をもとに要領よく作ってしまうと、今回のような味は出せないと思うので、一度限りの奇跡として、この一作目をしっかり味わっておくべきだろう。

映像美 9
厨二度 8
唯一無二度 10
個人的総合 8
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2021年05月01日

「Subnautica」その3 誰にも会えない

 突然、助けを求める通信が入った。生存者は自分だけと思い込んでいたので驚いた。
 しかし、現場へ行ってみると、破損した脱出ポッドが残っているだけ。そんなイベントが2回ほど続き、どうにも孤独感が募ってきた。

 そして、ついに救援の手を差し伸べる連絡が届く。相手が指定するポイントへ移動して、また驚いた。砦のような建造物がそびえているではないか。どうやらこの星には、かつて高度な文明が存在したようだ。
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 セキュリティをかいくぐって内部へ侵入する。作ったばかりのスキャナーを活用して、様々な情報を集めた。ゲームが変わったかのような風景に、ワクワクが止まらない。
 そうこうするうちに、救援の到着時間が近づいてきた。砦を出て宇宙船が来るのを待つ。いよいよというその時、砦が動き始めた。まずい、防衛機能が生きていたのか?
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こうして、生還への希望は海の藻屑と化した。私はたまたま律義に待っていたから、この瞬間を見ることができたが、指定の時間にここにいなかったプレイヤーも多いのでは。見なかったら、状況を理解しないままにゲームを続けることになってしまうのだろうか??
posted by Dr.K at 01:00| Comment(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする