十三(じゅうそう)のミニシアター、第七芸術劇場では、公開以来連日の満席。ロケ地が近いこともあって、お客が集まっているのだろうか。
1985年、大阪西成の荒れた中学校を舞台に、先生たちの奮闘を描いた物語。エピソードは、蒲(かば)先生の同僚や、当時の生徒たちに取材して作られている。
昭和の熱血先生と言えば、ドラマ「金八先生」が一番有名だろう。しかし、「かば」はずっと地味でリアルだ。コメディ演出はあるものの、過度に盛り上げようとせず、問題をできる限りそのままの大きさで伝えようとする。映画の中で何かが劇的に解決することはなく、先生たちはただ真摯に生徒と向き合うだけだ。こういう先生が実在した、というその事に大きな感慨を憶える。
また、「金八先生」では、生徒役は新人の登竜門という性質があったが、主要なところはアイドルなどが配され、作り物感が出ていた。一方、「かば」の生徒役は、よくもまあこれだけ昭和感のある顔を見つけてきたな、という面々で、他の作品で見たことのある俳優など全くいない。卒業生のOLだけが美形で異彩を放っているが、元NMBと知って納得。
在日や部落はともかく、沖縄出身者が差別対象になっているのは、今日からは想像しにくい。日本に返還されて10年ちょいしか経っていない、という当時の状況にハッとさせられる。一方で、いかにも不良という行動をする生徒より、おとなしく手がかからない生徒の方が、根深い問題を抱えているというのは、今もよくあるなあ、と共感する部分だ。
近来稀に見る志の高い作品で、一見の価値がある。DVD化の予定はないそうなので、皆さまもぜひ劇場へ。
舞台考証 9
ご都合主義度 2
キャスト知名度 2
個人的総合 7