2021年11月30日

「ルパン三世 PART6」第4話 ダイナーの殺し屋たち

 1〜2話で、PART6はホームズとの対決がメインの物語になると告げた後、ゲスト脚本家によるエピソードに突入する。このゲストの人選が凄い。御年89歳の大ベテラン辻真先、ミステリー作家の芦辺拓、イヤミスの女王湊かなえ、と錚々たる面々だ。

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 そして、第4話「ダイナーの殺し屋たち」の脚本は押井守。1カット目から犬が出てきて、押井カラーに染め上げられている。うらぶれた食堂を舞台に、芝居がかった会話が延々と続く。この面白くなさ、押井節全開である
 物語の終盤で、二人の殺し屋がルパンと次元の変装だったと明かされるのだが、そういうストーリーの場合、声であらかじめわかるようになっていることが多い。ところがこの回は、わざわざ別の声優が声をあてている。つまり、話の大半が今回限りのモブによってまかなわれており、押井がやりたいようにやるだけの展開となっている。
 最後にルパンが真相を明かすのだが、何の伏線もなく早口で歴史的背景を語っており、どうにかルパンの体裁になった、というやっつけ仕事。これで許されるのが押井守の貫禄、ということにしておこう。
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2021年11月27日

超時空SFドラマ「スナック キズツキ」

 原田知世が出ている、という理由だけで見始めたこのドラマが妙に気になっている。

 キズツキは、裏路地にある小さなスナック。トウコ(原田知世)のこだわりで(?)お酒は出さない。一話につき一人、何かに傷ついた客が訪れ、飲み物や料理に癒され、歌や踊りなどの意外な方法で心情を吐き出し、少し楽になって帰っていくというのがパターンだ。柱となる大きなストーリーはなく、老若男女、様々な人の痛みに寄り添っていく、なんともまったりしたドラマだ。
 ユニークなのはお客の関係性で、次回のお客が、必ずそれまでの回に脇役として登場するようになっている。ゲームの「街」や「428」のような、ザッピングによる視点変更が取り入れられているのだ。
 そうなってくると、気になるのは最終回で、いつも通りに一人だけの客を迎えて終わるかもしれないが、ここまでのお客が大集合するという展開もあり得る。
 さらに気になるのが、ザッピングの時の演出だ。映像が逆再生になり、次回のお客が脇役として登場した場面まで巻き戻る。このドラマの中での日付はハッキリしないが、何人かのお客は、同じ日にキズツキを訪れている可能性が高い。しかしながら、複数の客が鉢合わせしたことはない。そうなると、このスナックは現実には存在せず、傷ついた個人のためだけに時空を超えて発生する店なのかもしれない。例えば、「笑ゥせぇるすまん」の「魔の巣」のように。原田知世の世離れした存在感が、そんな設定をも想像させてしまう。
 果たして、最終回では、そのSF的な世界観が明かされるのだろうか。原作のマンガを知らないのをいいことに、好き勝手書いてみた。
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2021年11月23日

永野護「ファイブスター物語」16巻

fss16.jpg ゲームには、タワーディフェンスというジャンルがある。プレイヤーには守るべき拠点があり、そこをめがけて敵が押し寄せてくる。一団の敵を倒すと、わずかな間をおいて次の一団が現れる。敵の強さが徐々にエスカレートし、ゲームの難度が上がっていく。

 「ファイブスター物語」の新刊では、久々に長丁場のバトルが描かれる。それがまるで、タワーディフェンスのようであった。せわしなく新しい敵が出てきては倒されていく。しかも、難度のエスカレートが極端で、次元の違う悪魔だか神だかが次々に最強の座を塗り替えていく。
 ラキシスから呼び出される僕(しもべ)たちも、まるでファイナルファンタジーの召喚魔法のようで、そんな設定あったか、という唐突な展開が続く。

 ド派手にクライマックスを描いて見せたが、なんだかもの悲しさが残った。急ぎ足で完結を目指している、と感じられたからだ。今年は、作者の急死で「ベルセルク」が未完に終わるという事件があった。永野も残された執筆時間に危機感を持ったのかもしれない。ファティマが初期デザインで再登場したのは嬉しかったが、物語を閉じる意志の表れのようにも見えるのだ。
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2021年11月21日

このゲーム、俺専用。「メガトン級ムサシ」その1

 「メガトン級ムサシ」は、レベルファイブ制作のロボットアクションゲーム。子供っぽい絵柄にかなり抵抗感があったのだが、実際にプレイしてみると、俺のためのゲームか、と錯覚するほど好みの要素が満載だった。息子のために買ったら父親がハマる、という売り方でも狙っているのだろうか。

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2021年11月20日

「ルパン三世 PART6」第0話 EPISODE 0 ―時代―

 プロ野球の世界には、引退試合という慣例がある。例えば、主力だった野手が引退を発表すると、特別な一打席が与えられる。これはセレモニーのようなものではあるが、公式戦の中で行われ、記録としても残るようになっている。

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 小林清志が高齢による勇退を発表し、「ルパン三世」PART6では次元役の声優が変わることになっていた。ところが、第0話は〈小林次元〉の最後のエピソードとして作られる。アニメの世界では異例の、声優引退試合である。
 いざという時に活躍するが、普段は無口だったという印象のある次元。しかし今回は、仲間との別れを惜しむかのように、各登場人物との対話シーンが用意される。キャラクターとしての演技を通じて、長年の労をねぎらう声優仲間からの言葉。それに対して、いつも通りの次元として返していく、粋な演出になっている。
 他のキャストはすでに声優が交代しているが、次元だけは一作目から小林が演じていた。まさに一つの〈時代〉が終わったのだ。
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2021年11月17日

キムタクが如く2! 「LOST JUDGEMENT 裁かれざる記憶」その5

 クリアしたので、ようやくネタバレを気にすることなく、攻略やレビューを読むことができるようになった。すると意外なことに、私のお気に入りであるロボット部のゲームが一部で不評とわかった。
 ユースドラマでは、すべての団体でミニゲームのクリアが必須。しかしながら、難易度を任意に選べるダンス部、適当でもクリアできるスケボー、ガードさえ覚えれば楽勝の暴走族、信じられないほどバーチャファイターが弱いEスポーツ部など、他はわりとぬるいゲームが多い。ところがどういうわけか、ボクシングとロボット部だけはガチなのだ。

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(↑疲れ果てたロボット部部長。CGでやつれる表現は珍しい。)

 ロボット部のゲームは、ラジコンロボを操作しての陣取りゲーム。AI制御の僚機2台と協力し、敵の本陣に攻め込めば勝利となる。操作に慣れれば、前半は特に問題がない。
 しかし、本戦に入ると、チームNTが壁になる。このチームは、リーダー機を狙って攻撃してくるので、思うように動けなくなるのだ。さらに、マップも形が悪く、立ち回りが難しい。私も、何度も挑戦してようやく勝てたので、以下にその攻略を記す

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2021年11月13日

切畑水葉「阪急タイムマシン」

hankyutimemachine.jpg 阪急の駅で売っていたので、他の本のついでに買ってしまった。
 ジャケ買いみたいなもんなので、事前に内容が全然わからない。阪急電車がバックトゥザフューチャーする話ではなさそうである。

 編み物好きの野仲さんは、おとなしくて職場になじめないことに悩んでいた…。という始まりからいきなりつっこみたくなる。いやいやいや、おしゃれ雑貨店なんて、キラキラ女子の巣窟みたいなもんでしょ。仕事選びを間違ってるとしか思えない。プロスポーツ選手が、「周りが体育会系で怖くて」と言っているようなもので。
 物語は、宝塚線や今津線のリアルな背景を舞台に、野仲さんとサトウさんの一時の再会を描いていく。映画になった「阪急電車」を思わせるところがある。鉄道としては神戸線や京都線の方が中心なのだが、物語に使うにはやはり宝塚は特別なステータスがあるのだなあ、と感じさせられる。
posted by Dr.K at 10:48| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年11月11日

キムタクが如く2! 「LOST JUDGEMENT 裁かれざる記憶」その4

 失敗した。私は、一度エンディングを見るとプレイ意欲が下がってしまうたちなので、なるべく脇道の要素を回収しながら本編を進めるようにしている。ところが今回、メインが最終章まで進んだのに、ユースストーリーが多すぎて全然クリアできてない。弁当を食べるときに、ご飯ばかり先に食べて、おかずを余らせてしまったような気分だ。

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 そんなわけで、エンディング直前の緊迫した物語を無視し、ガールズバーなんぞに通い詰めている。最初の相手は春子。田舎から出て一人暮らしをしている大学生で、父親と疎遠になっている。キャラの見た目通りのオーソドックスなストーリー展開に和む。

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 二人目は綾葉。ギャルメイクにギャル言葉、キンキン声も騒がしいパリピだ。いささか辟易していると、実は特撮オタで陰キャという裏返しにもほどがあるプライベートを明かしてくれる。

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 三人目として登場するみうは、地下アイドルの新人。見た目も言葉遣いも癖が強すぎてヤバい。しかしその実態は、闇深き地下アイドル業界にあって、真摯にファンと向き合う天使である。それにしても私服もすごい。

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 そしてラスボス、ガールズバー潜入ミッションの真の目的は、このエミリから情報を聞き出すことにあった。最後だけあって美人だが、自分のことを何も語らず、難易度アップのためかクイズのような会話に終始し、はっきり言って最もつまらない。
 クリアするとエミリがガールフレンドとなり、改めて恋愛サブストーリーが開始される。ここでプライベートな会話になるため、ガールズバーの方で会話に中身がなかったのか。なんだかバランス配分が悪いなあ。
 なお、通常版ではガールフレンドはエミリのみであり、他の恋愛サブストーリーは別売りのDLCとなっている。これもなんだかバランスが悪いなあ。
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2021年11月07日

船水紀孝がいつのまにか新会社を設立

 その名もバオバブゲームスタジオ


 船水紀孝は、カプコンの最古参メンバー。アーケードゲーム開発部を率い、「ストリートファイター2」をはじめとする数々の格闘ゲームをリリースしました。その後、カプコンがアーケード部門を縮小すると、コンシューマ部門で、オンラインを活用したゲームに取り組みます。「モンスターハンター」の1作目が、カプコンでの最後の作品となりました。
 退社後は、クラフト&マイスターを設立。ここでは、「ガンダムブレイカー」などを手がけました。
 さらにそこから独立し、インディゴゲームスタジオを設立。コロプラの協力を得て、スマホゲームを開発していました。


 ところが、コロプラの方針でインディゴは解散してしまいます。気になるのはスタッフの行方。何しろ、元カプコンの古参を多く含んでいるので、そのままコロプラに行くとは考えにくい。
 案の定、自分たちでバオバブを立ち上げていたわけです。第一作は、YouTuber化した岡本吉起の先導で「格闘ゲーつくろう!」をやるみたいですが、こんなの当分収入にはなりますまい。貴重な大阪のゲーム会社なので、今後も注目したいと思います。
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2021年11月01日

アイの歌声を聴かせて

 サトミは、科学者の母と暮らしている高校生。ある日、クラスにシオンが転校してきます。サトミを幸せにすると宣言し、突然歌いだす彼女。シオンは、サトミの母が開発したロボットだったのです。

 吉浦監督のアニメは、「サカサマのパテマ」以来なのですが、今作も掘り出し物ですね! ちょっと懐かしい感じのストーリーですが、感動できる仕掛けもあって非常に好みです。ところが、知名度のないオリジナル新作ということで、心配になるくらいお客が入っていません。あっさり上映終了となる可能性が高いので、早めに劇場でご覧になることをお勧めします

●絶妙なSF設定
 舞台は田舎ですが、星間(ほしま)という最先端の大企業が居座っています。地域全体が、ハイテク機器の実証実験に使われている感じでしょうか。サトミ宅は昭和の住まいという感じですが、家電はことごとく音声制御のAI機器となっていて面白い。田園風景も、ロボットが田植えをし、メガソーラーらしき発電施設が並ぶという、泥臭いリアリティがいい感じです。授業はPCやタブレットではなく、黒板とチョークがハイテク化された機材で行われており、意表を突かれます。シオンの中身がまんまサーバーPCで、未来感ゼロなのもおかしいです。

●素晴らしい声優陣
 シオンは見た目こそ人間ですが、実際はできたてのロボットなのでセリフは不自然です。これを土屋太鳳が計算された棒演技で実現しており、同時に見事な歌も披露しています。天才プログラマー、トウマ役の工藤阿須加も違和感なし。

●「竜とそばかすの姫」との比較
 歌が重視され、ディズニーアニメにオマージュを捧げているという点で、本作は「竜とそばかすの姫」と共通しています。しかし、「竜」が「アナと雪の女王」のデザイナーを起用するなど、最近のディズニー映画を意識しているのに対し、「アイ」に出てくる「ムーンプリンセス」は、もっと古臭いディズニープリンセスのビジュアルになっているのが面白いです。

●ホラースレスレの演出
 AIが自我を持つと、やがて人類を脅かすというのは、よくある話です。シオンもまた、三太夫をけしかける場面や、トウマをロックオンする場面などで、一瞬そうしたホラーを感じさせます。意図的なミスリードなのかわかりませんが、本筋以外でけっこうハラハラさせられる作りでした。

●あくまで学園青春もの
 未来への見通しが暗いご時世のせいか、SF要素のある物語は、ともすると難解かつ深刻になりがちです。「アイ」の良いところは、あくまで高校生の物語にとどめ、明るくまとめているところにあります。友情や恋愛の描き方がとてつもなくベタなのですが、邪心のないロボットが関わってのことなので納得できるという仕組みがうまいです。こういう未来ならば歓迎です。

意外性 7
世界観 9
ポジティブ度 9
個人的総合 9

posted by Dr.K at 23:48| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする