2022年04月30日

「Horizon Forbidden West」その4 ウタわれルもの

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 このゲームには様々な部族が登場し、独自の暮らしが緻密に描かれている。「フォービドゥン ウエスト」の舞台となる西部は、その多くがテナークス族の領地だ。テナークスは戦闘的な民族で、あらゆる問題を力で解決しようとする。そんな土地にあって、戦わずひっそりと暮らしているのがウタル族だ。
 ウタルは農耕民族であり、服は藁や草花のようなもので編まれている。巨大な城すらも竹や葉で作られておりインパクトがある。そして、宗教的な慣習が面白い。彼らは生まれたときに種袋を持ち、死んだときにはその種を撒く。死者を埋葬する代わりに種を育て、故人を偲ぶのだ。異常気象や汚染によって、農業は危機的な状況にあるが、樹が動くことがないように、ウタルも決して土地を動くことはない。長老たちは静かに滅びを待っており、生き方を変えてでも将来につなごうとする一部の若者たちと対立している。
 ウタルの見た目は白人や黒人だが、この社会は、日本のように見えて仕方がない。戦うことなく滅ぶことを選びそうな国、なんてわが国をおいて他にあまりないだろう。祈りをささげる歌もお経のように聞こえてくる。

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 実は、「ゼロドーン」にも一人、ウタルが登場している。印象的なサブストーリーではあったが、前作の時点でウタルの社会について、どの程度考えられていたのか興味深い。
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2022年04月29日

SING/シング:ネクストステージ

 原題はただ「SING2」なのに、「ネクストステージ」とはよくぞ言った。

 前作で立て直した田舎の劇場は、連日満員の大盛況。しかし、バスター・ムーンはそれに満足せず、都会の大劇場での公演を目論む。名門クリスタル劇場のオーナーは出し物に興味を示さなかったが、ムーンは、ロックの大御所クレイを出演させると口から出まかせを言って契約を取り付ける。果たして、ムーンは15年以上もの間表に出ていないクレイを復帰させ、舞台を成功させることができるのか?
 続編ではあるが、面白さの質が前作とは異なる。前作は、登場人物の一人一人が自分の問題を乗り越え、舞台に出ることで一歩を踏み出すというところにドラマ性があった。今回は、クレイの復活への道のりこそ描くが、他の人物についてはあまり掘り下げない。テンポよく問題を解決し、スケールアップした舞台を見せることに注力している。
 キャラは動物だし、そもそもCGアニメなので、現実味などなくて当たり前。ところが、舞台が完成するまでの裏側を見たせいか、本物のステージを見せられているような迫力がある。前作とは桁違いの映像になっており、「ネクストステージ」にふさわしいパワーアップだ。
 新規に追加されたメンバーは、猫に狼にライオンと、見栄えのいい動物たちで人気が出そうだ。ブタやらハリネズミやらといった、パッとしない動物が舞台で輝いた前作とはやはり質が異なる。個人的には、ネズミのマイクが出なかったのが残念。仲間意識がなかったキャラなので仕方ないが、熊のギャングに消されていたのだとしたらかわいそう。
 洋楽に疎いため、選曲の素晴らしさがあまり伝わらなかったのは不覚。吹替の人選はばっちりだったが、U2のファンは字幕で観た方がいいだろう。

物語完成度 5
舞台完成度 10
吹替え本気度 10
個人的総合 7
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2022年04月25日

「Horizon Forbidden West」その3 文明人襲来

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 「ホライゾン」では、地球の文明は遥かな昔に滅亡している。人々は、悪化した環境や、過去の文明の遺物である機械獣におびやかされながらも、どうにか中世程度の暮らしを保っている。
 外では大自然を舞台に獣を狩り、屋内では音声データやホログラフなどで滅亡前の世界を知る。このコントラストがいい味になっている。主人公のアーロイはフォーカス(ウェアラブルコンピューター)が使えることで文明の知識があり、未開の社会に放り込まれた文明人のような立場になる。丁寧に作りこまれた設定だが、本質的には転生もののラノベ主人公とあまり変わらない(笑)
 前作では、〈異端児〉〈流れ者〉などと言われ、社会からはじかれていたアーロイだが、ハデスを退けた功績により、今作では最初から〈救世主〉である。それに加えてかつての文明の豊富な知識。これから転生もの以上の無双が始まってもおかしくない。

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 しかし、突如としてその枠組みは破壊される。本物の文明人が現れたのだ。いきなり敵対、しかも未来の装備によって無敵ときている。滅亡を免れた人類がいたのか? それともアーロイのように生産されたのか? あまり意外性のない続編だと思っていたのに急展開だ。ストーリーの続きへの期待値が跳ね上がった。
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2022年04月22日

ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー

 春麗を主役にしたカンフー映画。ゲームに忠実なんて期待は全然していなかったが、あまりにも逸脱しすぎていて、笑ってしまう。

 最初は幼い日のチュンリーから。えらく裕福な家で、ピアノを習ったりしているが、父が鍛錬している太極拳にも興味津々。父の仕事は秘密だが、諜報員か何かだろうか、ある日ベガが率いる悪の組織シャドルーに襲われる。このとき、父が見事に戦うので、さらわれても自分で帰ってきそうに思えてしまう。ベガは表向きは企業の社長で、スーツ姿。ゲームとは似ても似つかない。サイコクラッシャーみたいな人間離れした技を使うことはないが、性格がサイコパスで残忍この上ない。
 ベガの部下であるバイソン。ゲームでは粗野なボクサーだったが、この映画では組織を率いる知能派の幹部となっている。巨体の黒人でプロレスラーのような体格だが、銃やミサイルも使いこなす器用な男だ。バルログも登場するがこれが最悪。さえない中国人で、醜い顔をマスクで隠している、などとチュンリーに煽られる始末。声が千原ジュニアという人選も謎だ。イケメンの白人はどこへ行った。
 成長したチュンリーは、さらわれた父を取り返すため、元シャドルーのゲンのもとでカンフーの鍛錬を積む。ゲンがイケメンで若いのは斬新すぎる。ゲームを知っているといつ裏切るか気が気でない。チュンリーはスピニングバードキックや気孔拳をマスターしたようだ。
 チュンリーはシャドルーに捕まり、さらわれた父と再会を果たすも、直後に父を殺されるというむごい仕打ちを受ける。脱出したチュンリーは特別捜査官のナッシュと協力し、シャドルーに対して復讐を挑む。だからといって、ローズ(ベガの娘)の前でベガを殺してみせるのはどうなのよ。復讐の連鎖が始まるぞ。
 ストリートファイターの前日譚になるのだとばかり思っていたので、ベガが始末されてしまう結末に唖然。これではゲームに続きようがない。困ったネタ映画だ。

行き当たりばったり度 10
カンフー度 6
原作無視度 8
個人的総合 3
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2022年04月17日

「プラネテス」Phase11 バウンダリー・ライン

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「ここからは国境線なんて見えないのに。ただ、地球があるだけなのに・・・」

 「プラネテス」がEテレで再放送中である。人類が宇宙へ進出した、なんてアニメはいくらでもあるが、この作品には異星人もロボットも登場せず、驚いたことにヒーローもいない。航行の安全を確保するためのゴミ拾いをする、〈デブリ課〉の面々を描いた群像劇である。宇宙での仕事が一般的になった世界観のロマンに対して、未来になってもサラリーマンは大して変わらない、という妙なリアリティがおかしい。
 11話は、エルタニカの営業マン、テマラが宇宙服の売り込みに来るところから始まる。南米の小国で作られた不格好な装備など、どこの部署も相手にしない。ひょんなことから、デブリ課が製品のテストを引き受けることになってしまう。貧しい国の町工場の期待を一身に背負って、テマラは必死に挑む。
 宇宙空間での最終テストのさなか、保安庁が介入し、テマラの身柄を引き渡すよう要請する。地上では、内戦状態にあったエルタニカに対し、治安維持の名目で連合軍が侵攻。保安庁はテマラを安全に保護するというが、体のいい捕虜ということであろう。デブリ課のハチマキが機転を利かせてテストを完了し、クレアは法解釈を盾に引き渡しを拒む。
 しかしテマラは、自ら保護されることを選ぶ。こんな状況になった国の製品など、どこも採用してはくれないからだ。テマラは、最後に1分だけ地球を見せてほしい、と申し出て、そして冒頭のセリフへとつながる。

 2003年のアニメである。しかし、そのメッセージは奇跡的なまでにタイムリーで心に響く。攻める側が連合軍、とあるので、おそらく湾岸戦争をイメージしての物語だろう。今を予見した名作、と言うべきか、18年経っても人類に進歩はない、と言うべきか。
posted by Dr.K at 12:46| Comment(2) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年04月15日

「Horizon Forbidden West」その2 殺してでもうばいとる

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 こういうアホみたいなスケールの乗り物、大好き。

 今作の目的地となる西部は、テナークスと呼ばれる蛮族が収める未開の地だ。王国とテナークスとの和平交渉が予定されており、アーロイはそれに立ち会うため国境の集落を訪れる。様々なサブストーリーをこなす間に、ゲームの仕組みを徐々に思い出していく。思ったより前作の通りに作られているので、すんなり勘を取り戻せそうだ。
 敵国と接しているというのに、緊張感のない奴。和平会議が延期している間に、私腹を肥やそうとする奴。大きなストーリーの裏で、様々な思惑を持った人々が小さな事件を起こしている。オープンワールドの仕組みを活用し、多角的な視点が得られるのが面白い。

 ようやくテナークスの各部族がそろい、交渉が成るかというそのとき、和平に反対するレガーラの一派が急襲。王国側もテナークス側も無差別の攻撃を受ける。アーロイはこれを退けるが…
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 敵が装備するのは、見るからに場違いなハイテクシールド。殺してでもうばいとる。なんとまあ、高いところから滑空できる便利アイテムになった。おじいさんからパラセールを好意的に受け取る「ブレスオブザワイルド」とはえらい違いだ。
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2022年04月10日

「進撃の巨人 The Final Season」87 人類の夜明け

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 完結編は2023年放映予定。「ファイナルシーズン」とは??1年ぶり2度目)

 敵は味方に、味方は敵に。マンガでは、複雑な展開のストーリーを追うだけで必死だった。アニメ化されてみると、こんなに迫力のある戦いだったのか、と感心する見栄えの良さ。
 それにしても、〈地ならし〉の巨人たちが海を泳いでいたとは知らんかった。海底を歩いたんじゃなかったのね。
 アルミンたち一行、人類滅亡を阻止するため、一刻を争う状況なのにここで中断とはひどい。続きは劇場版で! とならなかったのだけは良かったが。

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 とんでもなくレアなミカサの笑顔。このエピソードを原作と変えて最終回に持ってくるとは、意地が悪いにもほどがある。
posted by Dr.K at 19:24| Comment(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年04月09日

「Horizon Forbidden West」その1 あんただれ?

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 エンディングみたいだけど、これが始まり。

 ただ今、「ホライゾン フォービドゥン ウエスト」をプレイ中。PS5が相変わらず手に入らず、仕方なくPS4版となったが、充分にすごいグラフィックだ。
 冒頭部分がかなり興味深い。
 まず、ストーリーについては続編なので、前作の壮大な設定をおさらいする必要がある。さらに、オープンワールドでかなり複雑な操作も要求されるゲームであるにも関わらず、説明書が付属していないので、丁寧なチュートリアルが必要となる。
 しかし、主人公のアーロイは前作でハデスの軍団を打ち破った達人であり、事細かに説明が挟まるのは不自然である。そこで、ヴァールの登場となる。ヴァールはアーロイを心配して追ってきたかつての仲間だ。アーロイがヴァールを導く形で、設定の説明や操作チュートリアルが進むようになっている。なかなかうまい。ただ、久しぶりのプレイとなる私の操作はぎごちなく、アーロイを達人らしく動かすことができない。どうせならヴァールを操作させてもよいのでは、と思ったが、それでは感情移入の対象がブレてしまうか。

 ボス戦を含むしっかりした冒頭エピソードを終えると、アーロイは王都へ戻る。そこで、前作の多くの登場人物と再会するのだが、何しろ壮大なストーリーだったので、ほとんど憶えていない。あんただれ? の連続である。
 数時間のプレイを経て、アーロイはようやく西部に旅立った。長旅をムービーで見せながら、主要スタッフの名前を見せる。そしてようやくタイトル。いや〜、今回も壮大な旅になりそうだ。
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2022年04月05日

ナイトメア・アリー

 この映画の感想。
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 デル・トロ監督の作品はけっこう観てますが、最高傑作かもしれません

●予告詐欺
 劇場で流れた予告編では、ナレーションとして獣人ショーの呼び込みが使われていました。そこで、てっきり見世物小屋から化け物が脱走して人間を襲う話か、と勘違いしましたが全然そんなストーリーではありません。おかげで、意外な内容を楽しむことができたのですが、予想を外されて失望した人もいたのではないでしょうか。

●あらすじ
 第二次世界大戦の頃のアメリカ。物語は、何やら訳ありの男スタンが、田舎のカーニバルに流れ着くところから始まります。そこでは、インチキなフリークスなど、怪しい見世物が行われています。興行師は、ここでは過去など誰も気にしない、とスタンを雇い入れます。スタンは、芸人らと交流するうち、自分にはショーを演出し客を騙す才能があることに気付きます。電流ショーに身をやつしていた美女のモリーを連れて、スタンは一座を離れます。
 二年後、スタンは都会の客相手に、インチキ読心術のショーで成功を収めていました。しかし、彼の野望はそれに飽き足らず、インチキ降霊術で大富豪を騙そうと画策し…

 私は超楽しかったのですが、冷静に見るとかなり人を選ぶタイプのストーリーです。そこで、以下はなぜ私が楽しめたのかといういささか自己分析が混じった感想となります。結末を含むネタバレがありますのでご注意ください。

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2022年04月02日

「アイドルをパシャ♪」とか諸々

touch.jpg 近頃、エイプリルフールはすっかり低調になりましたね。世論が杓子定規になって嘘が好まれない上に、不景気で予算がないというダブルパンチが原因でしょう。

 例えば、「デレマス」のエイプリルフール限定イベントは、「アイドルハイタッチチャレンジ」と名前だけはそれっぽいですが、その実態はただのもぐらたたき。しょぼいわ面白くないわで時間の無駄です。いやいや、ユーザーも減ってサービス終了もちらつくゲームだから仕方ないでしょう、という意見はごもっともです。
 では同じCyGamesの新作「ウマ娘」はどうでしょう。こちらは「メジロ家アフタヌーンパーティー」というサイトが開かれ、新曲も披露されましたが、エイプリルフール要素はあまり感じません。「みんなでトップウマドルプロジェクト」の方も、結局育成をさせる仕組みで、ただの短期イベントという雰囲気です。


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posted by Dr.K at 23:35| Comment(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする