非常に完成度が高く、同時に期待外れの映画だった。
スピルバーグ監督の自伝的な物語、と聞いて、私が思い浮かべたのが「ボヘミアン・ラプソディ」だった。「ボヘミアン・ラプソディ」は、フレディ・マーキュリーの人生をたどる映画だが、合間で有名な楽曲が生まれた背景が語られるのが面白かった。そこで、「フェイブルマンズ」では、色々な映画の制作過程が見られるかも、と期待したのだが、全然そういう映画じゃなかったのだ。
サミーは、家族で初めて観た映画に衝撃を受ける。列車事故のシーンにすっかり魅入られ、鉄道模型で繰り返し再現を試みる。これが、将来「激突!」につながってくるのか? また別の日、サミーが竜巻を目撃すると、母はわざわざその近くまで車を走らせて観に行く。これは「ツイスター」につながるのだろうか。私の期待に近かったのは、これら序盤のエピソードだけ。
物語は、少年サミー以上に、その家族を念入りに描写していく。芸術家肌で、映画作りにのめりこんでいく息子を応援する母親。天才的な技術者で、映画作りに理解を示さない父親。両親から受け継いだ才覚と、めぐまれた環境によって、サミーの作品は大きく花開く。
注:以下にネタバレを含む
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