2024年06月28日

春ドラマ最終回の通信簿2024

 4月に放送したスペシャルドラマ、さんま主演の「心はロンリー気持ちは…FINAL」が面白くないと評判です。私に言わせれば、昔の通りに面白くなかったので、とても懐かしい気持ちになりました。

「花咲舞が黙ってない」:普通
 勧善懲悪もここまでくると天晴れ。相手が大きすぎるので、限定的な勝利に終わるかと思っていたのですが、紀本部長を完全に叩きのめしたのに驚きました。舞役の今田美桜はちょっと若すぎるかな。昇仙峡役の菊池凛子は当たり役でしたね。

「アンチヒーロー」:悪い
 結局のところ、このドラマの面白さは、何を考えているのかわからない、明墨(長谷川博己)のミステリアスさにあったのでしょう。終盤、目的がハッキリしてからはイマイチでした。最終回は、緑川(木村佳乃)の方が主人公らしい振る舞いをしていましたね。最後に、赤嶺(北村匠海)が闇落ちしたかのような演出も、取って付けた感があり褒められません。

「Believe -君にかける橋-」:悪い
 なぜ橋を落とすような陰謀が仕組まれたのか、理由が納得できませんでした。社長も自白せず、都知事も逃げ切り、狩山(木村拓哉)の推理が推理で終わったのですっきりしません。玲子(天海祐希)を失うビターな結末は悪くありませんが、見せ方がどうにも臭いです。最後の橋のシーン、一部書き割りだったのでは? なんだかチャチく見える瞬間がありました。

「イップス」:悪い
 倒叙式の推理劇は久しぶりなので期待したのですが、全体に低空飛行でした。タイトルになっているイップスが治るどころか、どうでもいいと言わんばかりに放置されています。最終回までの積み重ねがなく、途中の回を真剣に見る必要がほとんどありません。バカリズムがシナリオも担当していれば、まだましだったのではないでしょうか。

「アンメット」:良い
 ミヤビ(杉咲花)が倒れ、主役不在でストーリーが進みます。これまで語られなかった三瓶(若葉竜也)との過去。静かに祈るような内容は、上質な邦画のようでした。驚いたことにエピローグが全くありません。周囲の人々がミヤビのために動いた、そのことをもって結末とした判断は見事です。食事シーンも増量され、重要さを印象付けました。
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2024年06月26日

岩明均「ヒストリエ」12巻

historie12.jpg 実に5年ぶりの新刊である。
 とりあえず読むが、色々ピンとこない。しかし、11巻から読み直してみると、とんでもない傑作であることに気付く。執筆のペースは遅くなっても、物語のスピード感や面白さは全く衰えていない!
 フィリッポス王が急死しアレクサンドロスが即位、パウサニアスもエウリュディケも退場となり、物語はここから新章の趣だが、作者からは異例の長期休載宣言が出ている。もしかするとこれが事実上の最終巻になってしまうかも。アレクサンドロスの今後は史実がある程度教えてくれるものの、生き残った赤ん坊はどう育つのか、蛇女の今後はどうか、そして何より恐ろしい手術の結果は何をもたらすのか、気になることだらけだ。
 岩明先生の体調が戻られることを願うばかりだ。

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2024年06月23日

「バルダーズ・ゲート3」 やり直し9回目

 長い長い旅路もついに終わりを迎えた。セーブデータの記録で150時間、やり直しが幾度もあったため実プレイ時間は200時間にもなっている。
 最終決戦〜エピローグの間だけでも、多数の分岐があり、エンディングが色々に変化するであろうことが推測できる。しかしながら、自分の選択、サイコロの運、攻略情報のカンニングなど、様々な要因によって到達した結末には、これこそが真のストーリーだという不思議な説得力があり満足した。他のエンディングを見るために再プレイすることは控えよう、という気持ちにさえなっている。

以下、結末のネタバレあり

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posted by Dr.K at 23:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月22日

ドラマ「アンメット」は食事シーンに注目

 先日新聞に、ミヤビ(杉咲花)の食べっぷりが素晴らしい、という投書が載っていました。これは良い目の付け所です。

 「アンメット」は、記憶障害で昨日のことが覚えられないミヤビが、それでも脳外科医としての仕事を全うしていく、という物語です。記憶障害をめぐる謎や陰謀が明かされていく、ミステリー仕立ての本筋が用意されているのですが、それ以上に、ミヤビの状況を理解し支えてくれる、周囲の人々との暖かなやりとりが印象に残ります。それを象徴するのが、何度も挟まれる食事シーンです。
 食べることは生きること、というストレートなメッセージかもしれません。子役時代の杉咲がCook DoのCMで鮮烈な印象を残しているので、このドラマでも食べさせてやれ、という目論見かもしれません。しかし、それだけではなさそうです。
 ミヤビは、物語を通じて味方を増やしていきますが、そのきっかけとなる重要な会話は、多くが食事を伴っています。そして、居酒屋のシーンに加わることで、味方になったという結果を確認させるパターンが出来てます。一方、病院の経営を握る西島会長もまた、その登場シーンのほとんどが食事中です。豪華なメニューなのですが、食べ方が醜く、会話も冷え切っています。食事の見せ方の落差で、敵味方がハッキリわかるという演出になっており、いい食べっぷりの杉咲と同じくらい、ひどい食べ方を演じた酒向芳も褒められるべきと思います。

 次回はいよいよ最終回。印象的な食事は見られるでしょうか?
posted by Dr.K at 16:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 馬鹿は黙ってろ! | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月19日

「バルダーズ・ゲート3」 やり直し8回目

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 オーリンの見た目が怖すぎて、ずっと対決を後回しにしていたのだが、戦ってみたら案外大したことなくて拍子抜け。ハルシンよ、救出が遅くなってすまん。

以下にゲーム終盤のネタバレあり

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posted by Dr.K at 22:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月16日

新作ゲームが遊ばれない


 いやはやぞっとする記事である。
 定番になってから買う、安くなったら買う、というような周回遅れのプレイヤーは、昔から一定数いた。そういうプレイヤーは遅れながらも次のゲームを買ってくれる。
 しかし、オンラインゲームを6年以上続けているとなると、その間他のゲームは買ってもらえない。遊ぶ時間も占められてしまう。これは新作が売れないわけである。
 そう言えば、業績好調なカプコンも、新作以上に旧作の継続的な販売で実績を上げていたと聞く。

 パッケージ販売がメインの頃、ショップは新型のゲーム機と新作ソフトで売り場を埋めていた。そんな環境では、ライトなユーザーも新作を手に取らざるを得ない。古いゲーム機やソフトを求めるのは、マニアックな趣味の域だった。
 ところが、ダウンロード販売がメインになってくると、旧作がいつまでも売られ続ける。ハズレのない面白いゲームを買おうと思ったら、評判のいい旧作が確実だ。しかもタイミングによってはセールもある。新作を発売しようとしても、過去の名作がいつまでも立ちはだかっている。若いクリエイターにとっては厳しすぎる環境と言えないか。
 昔は、ハードや技術が急速に進化していたので、ゲームは新作の方が良いことが当たり前だった。しかし今は、ゲームの進化も鈍化していて、新作が優れている、とは言いにくくなってきた。売れないと予算もつきにくく、今後の見通しも暗くなってしまう。

 音楽や映画はもっと先を行っている。サブスクリプションが普及した結果、新作と旧作は完全に横並びになった。古い名作も、初めて見る人にとっては新作と何ら変わらない。そんな中で〈今味わう必要がある〉新作を提供するのは困難を極める。
 最近の学生が、ゲーム業界志望のくせに新作をプレイしていないなあ、と思って調べてみたら、事態は深刻だったというお話。
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2024年06月10日

「バルダーズ・ゲート3」 やり直し7回目

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 「バルダーズ・ゲート3」は、ゲーム開始時にキャラクタークリエイトがある。主人公を作り、さあ始まるぞと思ったら、もう一人〈守護者〉を作るよう指示される。私の主人公はエルフの優男なので、〈守護者〉は大柄な女性にしてみた。
 このキャラクターは、ゲームを進めると、〈夢の訪問者〉として何度も登場し、主人公を導いてくれる。こちらからは様子を知ることができないが、彼女もまた危険な状況にあるらしい。いずれは彼女を助け、会うことができるのだろうか。

以下〈守護者〉についての重大なネタバレあり

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2024年06月08日

マッドマックス:フュリオサ

 「怒りのデス・ロード」から9年、マッドマックスが帰ってきた。御年79歳でこんなテンションの高い映画が撮れる、ジョージ・ミラー監督には畏怖すら覚える。

 物語は、幼いフュリオサが故郷にいるところから始まる。前作で目指した〈緑の地〉はこんな所だったのか。フュリオサがならず者にさらわれ、母が追いかける。見事なアクションに、前作の〈鉄馬の女〉のババアが強かったことを思い出す。ならず者を率いるディメンタスは、〈緑の地〉を見つけて我が物としたい。しかしフュリオサは、母を殺されても口を割らない。前作での〈緑の地〉へのこだわりが強化される。
 その後、ディメンタスは砂漠で一人はぐれたウォー・ボーイを見つける。〈シタデル〉なら水も食料もあると聞き、ディメンタスは意気揚々と乗り込む。砦で出迎えるのはもちろん、イモータン・ジョーだ! 私のテンションがMAXになったのはこの瞬間。お懐かしやジョー様、暴走族の頭でしかないディメンタスとは、威厳が全然違う。
 「怒りのデス・ロード」では名前しか出なかった〈ガスタウン〉や〈弾薬畑〉も、「フュリオサ」ではバッチリ舞台となる。前作のファンにとっては、知りたかったことが次々に明かされるので、サービス満点の映画と言える。

 アクションシーンの面白さも期待通り。特に、ウォー・タンクが襲撃を受ける場面が良い。パラグライダーにモーターグライダー、本来リゾート地の空をのどかに彩るはずのものが、「マッドマックス」では凶悪な兵器と化す。前作と差別化をはかりたかったのか、今回は車よりもバイクが多め。特に、チャリオットのごとき魔改造を施されたディメンタス機は、まともに操縦できるとは思えない頭の悪さだ。
 その後の話を知っているので、ジョー様やフュリオサが負けるわけがない、と緊張感に欠けるところはあるが、結末で前作とつながる気持ちよさは前日譚の強みと言える。
 嬉しいことにパンフレットが9年前と同じ仕様になっており、読みごたえが凄い。これはまたもや売り切れそうだ。

残虐度 10
物語密度 7
迫真度 9
個人的総合 9

posted by Dr.K at 23:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月04日

「バルダーズ・ゲート3」 やり直し6回目

 プレイを再開したはいいが、操作方法から魔法の効果まで忘れていて四苦八苦。ボスが出るたびに全滅を繰り返している。

 とにかく作り込みが凄い「バルダーズ・ゲート3」。ちょっとした端役に至るまでストーリーが充実しているのも魅力の一つだ。今回はバーカスのエピソードをご紹介。

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 主人公たち一行は、序盤に訪れる集落で風車に縛り付けられたノームを見つける。これがバーカスとの出会いだ。助けるとお礼を言って去っていくが、こんな小さな出来事が、後に続くとは予想もしなかった。ここからのエピソードは、彼を助けなかった場合はおそらく発生しない。

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posted by Dr.K at 23:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月02日

関心領域

 ナチスの非道を扱った映画は数あれど、さすがはアカデミー賞候補作、斬新な見せ方の作品だった。

 ルドルフはアウシュビッツ収容所の所長。家族と住むのは大層立派な家で、よく手入れされた庭には花が咲き、プールでは子供たちが遊んでいる。一見すると平和な景色だが、壁一つ隔てた向こうは収容所。悲鳴や銃声が聞こえ、遺体を焼却した煙が立ちのぼっている。妻や子供がそれを気にせず過ごしていることに戦慄する。
 また、玄関のすぐ外には、収容所を見張る監視塔が立っている。ルドルフの家も当然見られているわけで、これも異様な状況だ。

(以下にネタバレを含む)

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posted by Dr.K at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする