2024年10月28日

侍タイムスリッパー

 自主制作映画なので、豪華なセットもCGも使いません。しかし、映画館で観てよかった、という点では今年一番でした。

samtip.jpg 物語は全くタイトルの通りで、幕末の侍、高坂が現代にタイムスリップします。ちょっとシュールな設定ですし、ハイテンポなギャグや、時間移動のギミックを使った複雑なストーリーになりそうです。ところが実際はそんな予想を裏切って、高坂のまっすぐな生き様と、周囲の温かい人間関係を描いた作品でした。「寅さん」をはじめとする、古き良き邦画に近い感覚で楽しむことができました。
 観客もその雰囲気に乗せられるのか、館内は笑いが絶えません。異例のヒットで、東宝の大スクリーンで拡大上映されているのですが、これではまるで田舎のミニシアターです。観客は年配の女性が多かったようですが、こんなに居心地がいい映画館は久しぶりです。
 感動の部分を明かすのは野暮なので、私が笑ったところを挙げます。まず、初めて斬られ役をする場面。血のりまで仕込まれた高坂は、本当に斬られたと思い込み長々と回想に入ります。死なないで見る走馬灯なんて初めてです。次に、斬られ役の稽古をする場面。高坂は本物の侍なので、反射的に斬り返してしまいます。結果、師匠の方が本職の斬られっぷりを披露する羽目に…

 さて、この映画のパンフレットは上映から数か月遅れて発売されました。私も、観たときは未発売だったのですが、最近、他の映画を観るついでに買ってきました。自主制作に奮闘する日々が記録されており、こちらもまた感動的でした。ファンには一読をお勧めします。

SF度 2
時代劇愛 10
人情度 9
個人的総合 8
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2024年10月27日

「METAPHOR: RE FANTAZIO」その1 そうだ、選挙に行こう

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 発売とほぼ同時に衆議院解散、総選挙になるとは、開発チームも予想しなかったであろう。

 国王を殺害し、次の王位を狙う簒奪者ルイ。軍からの支持も厚く、野望の達成も確実かと思われたが、そこへ先王の仕掛けた魔法が発動する。ファンタジーものとしては前代未聞の〈選挙魔法〉。すべての国民が立候補でき、最も支持者を集めた者が次の王となるルールだ。被差別民族出身の主人公は、国王に立候補し、ルイへの接近を試みる。ルイによって呪われた王子を助けるための行動であった。

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 優勢なのは、教団の長であるフォーデンと、軍を仕切るルイ。支持の趨勢は、各地に設置された〈顔石〉でリアルタイムに確認できる。〈選挙魔法〉、便利すぎるだろ。現実にも〈顔石〉があれば、毎度毎度アンケート調査の電話を聞かされなくても済むのに。

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 「メタファー:リファンタジオ」をプレイした若人諸君は、選挙があるということがいかに素晴らしいかわかったと思うので、ぜひ投票に行ってもらいたい。さもなくば、↑みたいな候補が票を集めてしまうぞ。
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2024年10月20日

鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版

 昨年公開の「ゲゲゲの謎」が良かったので、観に行きました。「真生版」となってどこが変わったのか、ほとんどわからなかったのですが、これは私の勘違いでした。
 私は、エピソードが追加されるとか、構成や順序が変わるとか、いわゆる〈ディレクターズカット〉的なものを予想していたんですね。ところが実際は、制限されていた残虐表現を当初想定されていたものに戻す、作画や動画をブラッシュアップする、などビジュアルを改善したものだったのです。いや〜、これはわからない訳です。
 「真生版」は、もともと、「ゲゲゲの謎」豪華版ブルーレイにのみ収録される特典として制作されました。それが、この公開のおかげで、スクリーンで観られたのはありがたいことです。また、「上映記念冊子」も良かったです。ビジュアルばかりで文章の少ない内容に、物足りなさを感じた人がいるかもしれません。しかし、元のパンフレットは、映画のビジュアルをほとんど使わず、解説ぎっしりの異様な編集でしたから、両方そろえるとバランスが良いと思いました。
 改めて見ると、冒頭の廃墟シーンに、過去の事件の跡がしっかり描かれているんですね。あの丸いの、奴の成れの果てだったのか〜。二度観て良かったと思える作品でした。
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2024年10月18日

夏ドラマ最終回の通信簿2024

 6月末のスペシャルドラマ「ブラック・ジャック」、キャスティングが面白かったのですが、内容的にはパイロット版という感じでした。もっと色々なエピソードを見たいので、シリーズ化の検討お願いします。

「素晴らしき哉、先生!」:打ち切り?
 この記事が遅くなったのは、遅く始まったこのドラマの結末を見届けたためです。パリオリンピックの影響でしょうね。
 りお先生(生田絵梨花)が、シングルマザーになる決断をします。このてのドラマで、最後の問題が教員本人にある、というのは珍しいんじゃないでしょうか。家族が協力的とは言え、子供が生まれて以降の方が大変そう。文化祭の劇の内容も見せず、ヤミバイトの学生が劇を見に来ることもなく、打ち切りのように駆け足の最終回でした。

「南くんが恋人⁉」:普通
 ストーリーとは別に、脇を取り囲むベテラン俳優陣が若い主演二人を盛り立てているように見え、なんだかほっこりするドラマでした。南君との別れをどう受け止めるのか、重要なメッセージをちよみ(飯沼愛)ではなく母(木村佳乃)の口から言わせるあたり、この作品の想定視聴者は親世代なのかもしれませんね。

「新宿野戦病院」:悪い
 全体としては、個性的過ぎるキャラクターと予測不能な展開で面白かったです。しかし、最終回前から、コロナ禍への批判を込めた展開は微妙でした。特に、ヨウコ先生(小池栄子)が岡山弁を封印して演説する場面は気に入りません。サザンオールスターズのサプライズ出演なんかに丸め込まれてやるもんですか、ええ。

「Shrink 精神科医ヨワイ」:もっと!
 聞いたことはあるが詳しくは知らない心の病について、一話につき一症例、丁寧に見せてくれるので大変勉強になりました。一方で、弱井先生(中村倫也)の背景については、最終回でわずかに見せるにとどまりました。何しろ三話しかなかったですからね、マンガは13巻もあるので、これはぜひ続編を作ってもらわなければなりますまい。

「GO HOME 警視庁身元不明人相談室」:良い
 最終回に向け、警察上層部の不正という巨悪を相手にし始めたので心配だったのですが、拍子抜けするほどあっさり終わらせ、三田(小芝風花)の個人的なエピソードに戻したのが良かったです。内容的に、どうしても毎回死体が出るのですが、湿っぽくなくて見やすいんですよね。月本を演じた大島優子が、すっかりいい女優になっていて感心しました。
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2024年10月17日

「FINAL FANTASY VII REVERTH」その7 エンディング考察

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 〈忘らるる都〉が昔のままのイメージで描かれているのに感激。
 「ファイナルファンタジー7リバース」は、元のストーリーから色々変更がある。しかし、私はその多くを認識できていない。PS1でプレイしたのが20年以上前で、うろ覚えだからだ。中でも、「古代種の神殿」あたりは、記憶が全くなかった。直後のイベントがショッキングなので飛んでしまったのだろう。
 以下は、物議を醸しているエンディングの考察。

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posted by Dr.K at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月13日

ハヌ・マン

 仕事もしていないさえない青年が、ハヌマーンの力を得て、スーパーヒーローとして覚醒する物語。インド映画なので、ハヌマーンの神話なんて知らんわ、という観客にも一から説明してくれるので安心です。

 冒頭、ヒーローに憧れる少年が登場します。試行錯誤しますが、どうしてもなれません。バットマンにもスパイダーマンにも親がいない、ということに気付いた少年は、家に火を放って親を殺害。長じてからは、幼馴染の技術提供で無敵になり、都会のゴミどもを殺してまわっています。こりゃとんでもないダークヒーローだな。
 場面は一転、巨大ハヌマーン像が見守る秘境の村で、仕事もせずふらふらしている青年ハヌマントゥが登場します。さっきの奴、主人公じゃなかったんか〜い、と盛大にずっこけます。
 とある事件をきっかけに、ハヌマントゥは神の力を得て、大立ち回りを演じます。その見せ方が、まるっきり「バーフバリ」なんですね。音楽までそっくりで、微笑ましいやら呆れるやら。ハヌマントゥの友人に映画マニアがいて、まるでプラバースだ、と言ってたような気がしますが、こんな辺境に住んでてどうやって映画を観てるんでしょうね。
 神の力の存在を知り、冒頭の男、マイケルが村を訪れます。以後、ヒーロー対ヴィランとなっていくのですが、マイケルのハイテクヒーロースーツは、田舎の村にはあまりにも場違いで、シュールなおかしさを生んでいます。

 エンドロールには、2025年続編公開、の文字が。何かの冗談としか思えません。この続きを作ると、世界どころか宇宙規模の戦いになってしまうのですが。

インパクト 8
アバウト度 10
大風呂敷度 10
個人的総合 7
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2024年10月10日

「FINAL FANTASY VII REVERTH」その6 LOVELESS妄想

 なんとか終わった「ファイナルファンタジー7リバース」。今回はデートイベントの振り返りなど。

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 デートの相手はエアリスになったが、PS1のときもそうだった記憶がある。この後の展開を考えると、やっぱり他のキャラとデートになるのは違うんじゃないかと思う。

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 「LOVELESS」の舞台は、暗黒舞踏みたいなオープニングになってて面食らった。クラシックなオペラを模しているかと思ったら、ずいぶん前衛的な演出にしたもんだ。観客はVRゴーグルをつけていたから、皆が主役を演じていることになるのだろうか。

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 かなり凝ったゲーム仕立てになっている、「LOVELESS」イベントを進めていたら、むくむくと妄想がわいてきた。もしも「FF6リメイク」が作られるようなことがあったら、オペライベントはこんな感じになるのだろうなあ、と。

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 「FF6」と言えば魔導アーマーだが、そのデザインも今のCGなら画像のスカーレット機のようになるはずだ。くぅ〜っ、動かしてぇ。
 「FF6リメイク」、マジで作ってくれないだろうか。世界が崩壊する前後で区切れば、キリよく二部作にもできるぞ(笑)
posted by Dr.K at 22:50| Comment(2) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月07日

「天穂のサクナヒメ」第13話 天穂のサクナヒメ

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 最終回、いかがだっただろうか。ストーリーはゲームの通りだったが、これによってゲームをプレイしなくてよい、とは全くならない。工程の多い稲作パートや、本格的なアクションパートを乗り越えてたどり着くエンディングは体験として別物。未プレイ勢はぜひゲームにも挑戦してみてほしい。
 アニメの最後が、「ヤナト田植唄・巫」で締められたのは驚いた。「サクナヒメ」は、アニメ化にあたって、メジャーなアーティストに曲を依頼している。その結果、オープニングはいきものがかり、エンディングはLittle Glee Monsterの歌となっている。最終回に限り、それらを押しのけてゲームのエンディング曲がそのまま使われているというのは感慨深い。やっぱりこの田植唄でないと、というファンも多いはずだ。
posted by Dr.K at 07:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月06日

「FINAL FANTASY VII REVERTH」その5 遅れてきたオープンワールド

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 「ファイナルファンタジー7リバース」、どうにかクリア。あまりに長大だったので、エンドロールがおさらいになっているのは助かる。

●遅れてきたオープンワールド
 11章をクリアすると、これまでのエリアに新しいサブクエストが追加される。各地を訪れて内容を確認したが、ほとんどクリアしなかった。やたら手間ばかりかかってつまらない、と感じたからである。
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 例えば「躍進のシーサイド・ジョニー」。ジョニーだらけという絵面だけで面白いストーリーなのだが、その道のりは冗長。まず、資材を集めてくるのだが、どういうわけかこの地方のジップライン乗り場すべてに散っている。本編中で使い道のなかったギミックを、無理矢理全部回らせようという魂胆が見え見えである。それが済んだら道具をクラフト、最後にトンペリキングを見つけるには、全ライフスポットの解析を済まさなければならない。楽しさに見合わないしんどさである。
 他のサブクエストでも、エリアをまたいだ壮大な探索やお使いを求められ、メインストーリーが充分長いのに、こんな水増し必要か? と思うことが多かった。
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 さらに、サブクエストの中に新規ミニゲームが組み込まれていることが多く、これがまたプレイヤーを疲弊させる。敵とのバトルであれば、プレイ経験やキャラの成長が活かせるのだが、ミニゲームとなると新たにコツを身につけなければならない。面白いもの、つまらないもの、得意なもの、不得意なもの、とまさに玉石混交で、とても全部やっていられない。
 PS1のときにあれほどハマった「コンドルフォート」が、ちっとも面白くなかったのはかなりショックだった。

 私は海外製のオープンワールドを多くプレイしてきた。当初は、「FF7リバース」のように、サブクエストが極端なお使いだったり、ミニゲームに頼っているものがあった。しかし、近年では、サブクエストがストーリー性重視になり、サブキャラやゲストキャラを使って本編に匹敵する重厚なドラマを提供するものが増えてきた。あくまでも、RPGの主役はストーリーなのだ。こうした流れを見ると、「FF7リバース」の作りは時代に遅れていると感じる。

●ついにイージーモードへ後退
 盛り上がっていたのに、ラスボスの前座と本戦に歯が立たず、何時間もやり直すはめになって萎えてしまった。サブクエストやバトルシミュレーターをまともにやっておらず、レベルや所持アイテムが足りなかったのかもしれない。
 仕方なくイージーモードに変えて、どうにかエンディングを迎えた。最近では、ラスボス戦がほぼイベント状態で難易度の低いゲームも多いというのに、これも時代に逆行した作りと感じる。難しさもさることながら、バトル全体が長すぎる。全部で10戦近くあったのではないか。3戦くらいにおさめてほしい。ストーリーの先が気になる状況なのに、露骨な妨害がウザ過ぎる。
posted by Dr.K at 21:23| Comment(4) | TrackBack(0) | ゲーム百鬼夜行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月01日

ブレッドウィナー

cs25th.jpg 制作スタジオの25周年を記念して、リバイバル上映があったので観てきました。

 パヴァーナは、アフガニスタンに暮らす少女。タリバン政権下では、女性の権利が極端に制限されており、女性のみで外出することさえ禁じられています。ある日、父親が政府に捕らえられてしまい、母と姉、幼い弟とパヴァーナの4人となった一家は立ち行かなくなります。パヴァーナは男装し、父を取り戻すため行動を起こします。
 カートゥーン・サルーンは、〈ケルト三部作〉では、アイルランドに伝わる神話をファンタジックに描いて見せました。驚いたことに、アフガニスタンの過酷な現実を描いたこの物語でも、その作風は変わりません
 パヴァーナは、亡き兄をモデルに物語を考え、弟に話して聞かせます。その内容が、切り絵のアニメーションとなって、本編と並行して進むのです。陰鬱で荒涼とした現実の風景と、色鮮やかな切り絵の世界とのコントラストは見事です。
 さて、メインキャラでもないのに、印象に残った登場人物がいます。それは一人の青年でした。父の教え子でありながら、タリバン兵としてパヴァーナたちをいたぶるクソ野郎です。物語終盤、戦争が本格化したのか、彼も連れていかれるのですが、そのときのビビっている表情に感じるものがありました。威勢がいいのは身分の低い者を相手にしたときだけ。彼だってアメリカと戦いたくはないのです。

アニメーション 8
メッセージ性 10
音楽性 4
個人的総合 6
posted by Dr.K at 06:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする