PG12となっていたため、怖い映画かと思っていたが、そうじゃなかった。
人間が徐々に動物になっていく奇病が発生、政府は患者を〈新生物〉として施設に隔離している。フランソワの妻も病気にかかり、南仏の施設へ移されることになった。フランソワは息子を連れて施設近くの村へ引っ越す。ところが、移送中の病院の車が事故を起こし、積んでいた〈新生物〉たちが逃げてしまった。フランソワは行方不明になった妻を探しはじめる。
手塚治虫で数々の〈変容譚〉に魅せられているので、観て良かったと思えた一本。
フランソワの息子エミールは、自分も動物化していることを悟り、動揺する。動物化か進むと、人間性が失われていくのだが、その兆候となる出来事が特徴的だった。力が増し、運動能力が向上する一方、自転車に乗れなくなるのだ。しゃべれなくなる、筆記ができなくなる、などの表現なら他の作品でも見たことがある。フランス人には、自転車に乗れてこそ普通の人、という感覚があるのだろうか。
この病気、特定の動物になるのではなく、人によって、タコに鳥にカメレオン、と脈絡なく変化するので科学的なリアリティがない。しかし、ファンタジーなればこそ、比喩的な効果を発揮する。例えば、移送前の妻は、毛むくじゃらの姿はさておき、ぼんやりして言葉が通じない様子だった。まるで認知症のようであり、施設も介護施設を想起させるところがある。一方、エミールの変化は、父に明かせない秘密を抱えることからも、思春期をビジュアル化したようなもので、物語の結末も、親離れ子離れを描いているように見えた。
異質なものを排除し続ける〈人間界〉を、冷ややかに見下ろすような作品だった。
新生物デザイン 8
手塚想起度 8
ホラー度 4
個人的総合 6