「火の鳥」が最終回を迎えた。21年前のアニメの再放送である。
HD画質のデジタル作画への移行、3DCGの活用など、当時としては先進的な制作体制で、決して手抜きではないのだが、なんとも中途半端な内容だ。
すべてをアニメ化できる時間はないので、内容がカットされるのは理解できる。ただ、作品の印象を左右するカットはいかがなものか。
例えば「復活編」。ロビタの集団自決がなく、なんだかいい話で終わってしまっている。このせいで、「未来編」にロビタがつながっていない。オープニングに集団のシーンがあるのに、本編にないのでは詐欺である。
「異形編」。最後に時間の牢獄から逃れた可平が、後の世で妖怪絵師となるエピローグがない。これは純粋に時間不足か。
一番カットされているのは「太陽編」で、マンガでは7世紀と未来を行き来する複雑なストーリーなのだが、未来をばっさりなかったことにし、シンプルな時代劇にまとめてしまっている。
そして「未来編」。マンガ読者をびっくりさせたナメクジ文明のくだりがない。そのため、アニメでは生物の進化をただ繰り返して人類が再び登場したことになっている。妙に押しつけがましい結末のメッセージも蛇足である。
そもそも、はじめから全「火の鳥」をアニメ化しない番組なのだから、無理にカットしておさめるのではなく、「編」をもう少し減らして、一つ一つを長く描けばよかったのではないか。結果として、原作が短編だったためにきれいにまとまった「異形編」が一番よく出来ていたように思った。