2025年03月28日

アニメ「火の鳥」は中途半端!

 「火の鳥」が最終回を迎えた。21年前のアニメの再放送である。

 HD画質のデジタル作画への移行、3DCGの活用など、当時としては先進的な制作体制で、決して手抜きではないのだが、なんとも中途半端な内容だ。
 すべてをアニメ化できる時間はないので、内容がカットされるのは理解できる。ただ、作品の印象を左右するカットはいかがなものか。
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 例えば「復活編」。ロビタの集団自決がなく、なんだかいい話で終わってしまっている。このせいで、「未来編」にロビタがつながっていない。オープニングに集団のシーンがあるのに、本編にないのでは詐欺である
 「異形編」。最後に時間の牢獄から逃れた可平が、後の世で妖怪絵師となるエピローグがない。これは純粋に時間不足か。
 一番カットされているのは「太陽編」で、マンガでは7世紀と未来を行き来する複雑なストーリーなのだが、未来をばっさりなかったことにし、シンプルな時代劇にまとめてしまっている。
 そして「未来編」。マンガ読者をびっくりさせたナメクジ文明のくだりがない。そのため、アニメでは生物の進化をただ繰り返して人類が再び登場したことになっている。妙に押しつけがましい結末のメッセージも蛇足である。

 そもそも、はじめから全「火の鳥」をアニメ化しない番組なのだから、無理にカットしておさめるのではなく、「編」をもう少し減らして、一つ一つを長く描けばよかったのではないか。結果として、原作が短編だったためにきれいにまとまった「異形編」が一番よく出来ていたように思った。
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2025年03月25日

トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦

 香港映画を劇場で観るのは、多分これが初めて。

 香港へ密入国したチャン・ロッグワンは、身分証の偽造をめぐって大ボスともめ、九龍城へ逃げ込む。九龍城のリーダーであるロンギュンフォンに居場所を与えられ、新しい生活を始めるロッグワン。しかし、ロッグワンには、マフィアに狙われる理由が他にもあった…

 アクションの楽しさに焦点が絞られており、長尺なのにおよそ無駄のない作りに感心する。
 九龍城はモノに溢れ、複雑かつ立体的な構造が、アクションを最大に引き出す。落ちたり登ったり隠れたり、ゲームではまだできない凄まじい戦いを見せてくれる。登場人物は多いが、その背景を掘り下げたりしない。それでいて、年寄り世代が武術に沿った技で戦い、若手が今風のケンカ殺法で戦うなど、アクションの質でキャラクターを描き分けている。頭脳戦となる局面もほぼなく、シンプルに力を競うことで問題は解決する。およそ女性が出てこず、恋愛ドラマなどない。最後の敵を倒したら、実にあっさりと幕を引く。
 今は失われた、九龍城へのノスタルジーを伝える作品だが、それが、日本の昭和ノスタルジーに通じているのが意外だった。日本の歌が流れ、日本の駄菓子が売られ、日本のアダルトビデオが登場している。人種が近いこともあり、九龍城がまるで日本のスラムのように見えてくる。
 オープニングで、過去の闘争がモノクロの映像になっているが、もう一度観たら、あのキャラがいる、このキャラもいる、となるんだろうなあ。

バイオレンス 9
アクション 9
ノスタルジー 9
個人的総合 8
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2025年03月22日

海賊王にワシはなる! 「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」その4

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 海賊の仲間たち、プライスレス。って昔のCMか!

 「パイレーツ イン ハワイ」をクリアした。
 宿敵モーティマーと対戦しようとしたところ、受付で止められた。今の装備では勝てないので、ホノルルで強い大砲を買ってこい、というのである。ボス戦特効の兵器かな? と思いつつ入手したら、今の武装より明らかに弱い。対戦してみたら、案の定モーティマーは弱かった。
 これは、デビルフラッグスとの戦いを優先してしまったことが原因だ。いくつもの海域を探索する間に、大砲はスーパーレーザーになり、主要キャラは会話イベントをこなして虹色のSSRになり、幾度もの集団戦で仲間のレベルも最大になっている。頼もしすぎて、モーティマー戦では真島の出番があまりないほどだった。
 勢いに乗って、以降のストーリーは一気に走り切った。

注:以下に結末のネタバレあり

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2025年03月20日

Flow

 こんなにお勧めの対象がハッキリした映画は珍しい。短期間で公開が終了しそうな予感がするので、急いで記事にします。

 主人公は一匹の黒猫。突然の洪水で逃げ場を失いますが、そこへ一艘の船が現れます。先客のカピバラと共に、黒猫の行く当てもない旅が始まります。

●特定のゲームのファンにお勧め!
 「ICO」「風ノ旅ビト」「人喰いの大鷲トリコ」、このへんのゲームにピンとくる人には、完全にお勧めできます。
 まず世界観。南米や東南アジアを思わせる意匠の遺跡が雰囲気たっぷり。家やボートがありますし、犬にペットらしい習性も見て取れるので、最近まで人間がいた気配ですが、どこまでも無人の世界が広がっています。
 次に、物語。黒猫の身辺しか描かれないので、そこ以外で何が起こっているのかは説明されません。加えて、言語が一切使われません。人語を話さずとも、動物同士は話が通じている、という設定の作品もありますが、「Flow」にはそれすらありません。
 本当に、上に挙げたゲームをプレイしたときのような気分になり、私にはぴったりの作品でした。

●猫好きにはもちろんお勧め!
 愛猫家の皆様は、黒猫の一挙手一投足を追いかけるだけで満足できるのではないかと思われます。
 動物が主人公といっても、他の作品では、擬人化されたキャラクターになっていることが多い。しかし、「Flow」は動きや習性が完全に動物のままとなっており、猫の猫らしさが素晴らしいです。冒険を押し進めるために、少しばかり人間的な考えが見える部分はありますが…。
 また、世界が滅亡するかのような災害ではありますが、猫が残酷な目にあったりはしませんので、お子様方も大丈夫です。

●制作環境
 ラトビアの小さなスタジオで作られ、全編3DCGのこの作品ですが、なんと、Blenderで作られたそうです。3DCGのツールは、プロ向きのものは言うまでもなく高価。ところが、Blenderは無料のツールであり、ゲームの個人制作などでよく使われるものです。使いこなせば、このような劇場での視聴に耐えうる映像が作れるのですね。驚きました。

注:以下にネタバレを含む

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posted by Dr.K at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月15日

海賊王にワシはなる! 「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」その3

 ゴロー海賊団を強くするためには、まずメンバーを増やす必要がある。主な仲間はストーリーの進行によって加わるが、それ以外は各地でスカウトして集めることになる。例によって、サブストーリーをクリアすることによって加入する者も多数いるので、ここでは印象深いサブストーリーをいくつか紹介することにしよう。

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 こ、これは、飯田圭織のバスツアー! アイドル界の都市伝説が20年の時を越えてゲームで再現された。細部までいちいち凝っていて面白すぎる。クリアするとオタク3名が海賊入りするが、チームワークの観点から、できればまとめて使いたくなる。ザコだけど。

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 海賊業界にもコンプライアンスの波が(笑) セガでもこのような研修があって、ネタにしたのだとしたらそれこそコンプライアンス失格である。クリアすると船長だけでなく講師が海賊入り。

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 定年後くらい好きにしたらいいと思うが、それが海賊というのはいかがなものか。オッサンを通り越して初老のキャラまで大暴れするのは「龍」シリーズの特権。このオッサンは家族のもとに帰ってしまうので、例外的に仲間が増えないサブストーリーとなっている。

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 動物語がわかる、という触れ込みの機械を使ってみたら、ベタな女性声優の声でひっくり返った。インチキ科学者をしばき倒して、海賊に入れることになるが、ザコなので使わず幽閉する。

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 マサルのために港区女子を集めてコンパを開け、という壮大なサブストーリー。ハワイで港区??と初手からわけがわからない。コスプレイヤーにストリーマーにレースクイーンにセクシー女優、と統一感もない。ハワイなのでキャバクラは作れないということなのだろうか? 全員そろったらいきなり実写化し、ロバート秋山のお家芸であるキャラクターコントもどきが始まる。正直つまらないが、クリアすると港区女子たちが全員海賊入り、しかも最強クラスのキャラクターなのでやらない理由がない。
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2025年03月13日

ライブ演出のミッシングリンク「ゾンビランドサガ」

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 YouTubeにて、今月いっぱい「ゾンビランドサガ」が全話無料公開。劇場版が控えているのは知っているが、今のところ「今年中」としか聞いていない。もしかして、公開時期意外と早いのか。

 本作を企画したのはCygames。国産モバイルゲームではトップを走る最大手だ。2015年に開始した「デレステ」では、当時のスマホゲームとしては異例の、3DCGによるライブシーンを実現した。その演出は、2021年の「ウマ娘」で大きく進化を遂げる。
 二作の間をつなぐミッシングリンクとなるのが、2018年の「ゾンビランドサガ」だ。このアニメは、ライブシーンの一部が3DCGになっており、技術的な挑戦が感じられる。さすがに他の作品のアイドルが指からレーザーを発射したりはしないだろうが(笑)

 ゾンビで佐賀でアイドル、という無茶苦茶な内容なので、イロモノには違いないが、Cygamesにとって重要な技術の礎となっているし、何よりちゃんと面白い。集客がだいぶ心配だが、劇場版にも期待している。
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2025年03月09日

「ウマ娘」4周年 The Twinkle Legends

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 ラスボスのアーモンドアイが強すぎて、金輪際勝てる気がしない。

um4th2.jpg 4周年を迎えた「ウマ娘」に、育成の新シナリオ「The Twinkle Legends」が追加された。
 3人のレジェンドウマ娘の協力を得て、人気の衰えつつあったレースを盛り上げるべく奮闘する、という物語。始まった頃の勢いを失った、アプリの現状を反映したメタ的なストーリーと感じた。
 2周年の時の「グランドマスターズ」も、三女神が協力してくれる話なので似ているが、彼女たちはあくまでバーチャルな存在として設定されていた。ところが、今回のレジェンドウマ娘は、実在したレジェンド競走馬を元にしているので、なんというか重みが違う。ついでに、担当声優もレジェンド級で開発の本気度が伝わってきた。
 演出面でもテコ入れがされており、今までは平面の背景上でウマ娘を動かす、ノベルゲームの延長上でしかなかったものが、一部で三次元的なデモが使われるようになった。
 ゲーム的には、レジェンドたちからスキルを獲得し、成長ボーナスをばんばん加算していくことができるので、初回でいきなりUF3などという異次元のスコアを叩き出した。新規勢への配慮であろう、サポートカードを全部レンタル、という新機能のおかげもあったかもしれない。

 「走れ!メカウマ娘」から間を置かず、周年のタイミングで新シナリオが投下されたのは意外だった。おおむね楽しめたが、今回、新曲がフィナーレとなり、「うまぴょい伝説」が廃止されてしまった。これだけは大いに不満だ。
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2025年03月08日

稲船敬二退社、LEVEL5 comceptは事業譲渡


 稲船敬二が退社、「ファンタジーライフ」新作はレベルファイブが開発を引き継ぎ、稲船が社長をつとめていたLEVEL5 comceptはレベルファイブ大阪オフィスとして再出発することになった。
 内情は知る由もないが、「またか」という感じである。
 レベルファイブと有名クリエイターはだいたいうまく行かない。かつて、「428」などシナリオに定評のあるイシイジロウが入社したことがあったが、「タイムトラベラー」一本を作っただけで去っている。また、「オウガバトル」や「ファイナルファンタジータクティクス」の松野泰己も、「クリムゾンシュラウド」一本で退社した。
 レベルファイブという企業は、ゲームの知名度や会社の規模の割には、クリエイターの名前が表に出てこない。いまだに、社長の日野晃博が一人で仕切っているような印象がある。他社でヒット作を出した実績があるベテランに要らぬ口出しをし、衝突を招いているのではなかろうか。稲船敬二もcomceptなんて社名を付けるくらいなので、ゲーム企画には大いにこだわりがあったはず。こういう日が来るのは時間の問題だったと思われる。
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2025年03月06日

海賊王にワシはなる! 「龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii」その2

 従来、「龍が如く」シリーズは、サブストーリーこそ多いものの、本筋は一本道で迷うことがなかった。ところが、今作は本筋がつかみにくく、どこから手を付けたら良いか、非常に迷う作りになっている。

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 真島たちはゴロー海賊団を結成、海賊たちが集うマッドランティスを訪れる。そこでは、海賊船を戦わせる競技、パイレーツコロシアムが開かれていた。因縁のある海賊、モーティマーと雌雄を決するには、この競技で上位を目指す必要がある。どうやらこれがメインのゲームらしい。勝つためには、真島を強くするだけでなく、船員を集めて育て、船の装備も強化しなければならない。

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 ところが、続く旅の中で、デビルフラッグスとの戦いが発生する。富豪の道楽であるパイレーツコロシアムとは違い、ハワイ近海を荒らしている本物の極悪海賊だ。配下の船団も強く、ゴロー丸があっという間に沈められてしまった。以降、マップ画面で強さを確かめて、慎重に戦う相手を選ぶようになった。
 船が沈むなど生死に関わるかと思いきや、船員の機嫌がちょっと悪くなるだけ、というペナルティの軽さに笑ってしまう。

 そして、海賊と言えば宝探し。二章を終えると伝説の宝をめぐる物語が始まった。次々に新しい目標が追加されるので、どこから手を付けていいのか困ってしまう。とりあえず海をまわって船員を鍛え、パイレーツコロシアムの上位戦に備えることにしようか。
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2025年03月03日

ミッチェル家とマシンの反乱

 2021年のアニメ映画。スマホのAIアプリ、PALの反乱から、偶然に逃れたミッチェル一家が、人類を助けるべく奔走する。
 当時はコロナにより劇場公開が見送られ、配信に回されてしまったが、アニー賞に輝き、アカデミー賞にもノミネートされたので、傑作らしいと聞いてはいた。このたび、Eテレで放送されたのでようやく実際に観ることができた。ありがたい。

 映像的にも尖っていて面白いが、何よりシナリオの完成度の高さに舌を巻いた。コンピューターの反乱で人類がピンチに陥るという、空想的なストーリーでありながら、本題となる家族の再生が極めてリアルに描かれている。しょうもないギャグと思ったものが、ことごとく伏線となって決戦に生かされるのも気持ちいい。こういう無駄なく計算されたシナリオは、ディズニーやピクサーのお家芸だったのだが、最近はとんと見られない。
 娘のケイティは、映像作家を目指して芸術大学に入った…と言えば聞こえは良いが、その作品は、ネットミームにまみれたショート動画っぽいもので、お世辞にも将来性があるとは思えない。そのせいか父の方につい気持ちが行ってしまう。観客に、なぜ娘の才能を信じてやらないんだ! と思わせる内容になっていないのは珍しい。意地の悪い見方をすると、表現があまりにも流行りに乗り過ぎているので、数年後には若者から何だかよくわからない古臭い作品と言われる公算が大。
 ここぞの場面で、アプリで加工したようなエフェクトが入り、この映画自体が未来のケイティの作品かもしれない、と思わせる演出はうまい。また、エンドロールが完全に作品の一部となっているので、Eテレのノーカット放送で本当に良かった。

映像美 8
計算高さ 9
時代性 10
個人的総合 8

他の方の注目すべきレビュー
三幕構成で分解してみた:シナリオを分析しつつ絶賛
便座は上がってる:珍しい否定的意見
posted by Dr.K at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする