2005年06月13日

思い入れはどこへ行った

 同僚の若手デザイナー、waba先生から、自主制作ムービーをいただいた。実に3年をかけた労作であるという。技術に裏打ちされたクオリティもさることながら、何より感心するのが、そのオリジナリティであった。全編に表現することへの原初的な喜びが満ちており、若いとは「作りたいモノがある」ことに他ならない、と感じた。

 思えば私には、ゲーム会社に入った直後から、作りたいモノなど全くないのだった。担当するプロジェクトはすべて、誰か他人が考えたゲームであり、私の仕事と言えば、それを完成まで持っていくことに他ならなかった。しかし、それはつまらない仕事ではない。与えられた企画をより良く、よりスムーズに完成させるというのは、とても面白くやりがいのある仕事と断言できる。
 卓越したアイデアが思いつける人、自分の企画を通すことができる人のことを、うらやましく思ったことは確かにある。しかし、ない才能を追い求めることに費やしていられるほど私に残された時間はもはやない。
 そして最近、この思い入れのなさが+に働くこともある、とようやく理解した。思い入れは、作品にカリスマを注入できる反面、ユーザーを阻害することがある。商品としてのゲームは、ユーザーを楽しませてナンボ。時には、作り手のこだわりをゴミ箱にすてる覚悟も必要だ。
 私の初仕事は、ほぼ発売中止といってもいい結果に終わった。数字は知らないが大赤字のハズだ。いまだに「いいゲーム」と言ってくれる人もいるが、売れなかった「いいゲーム」など存在してはいけないのだ。私はさっさと辞表を書いてしまったが、チームにいた先輩方の悔しさはどれほどのものだったろう。以来、普通に流通に乗って販売される、ということに私は一層執着するようになった。
 PCゲームの世界では、出来が悪いゲームは「同人以下」と揶揄される。しかし私は、たとえそのようなゲームであっても、販売されて収入があり、スタッフが食えるというそのことにまずこだわりたいと思う。あの日から、私にとってゲーム作りは遊びでなくなったのだから。

 waba先生は、作品でデザイナー個人としての矜持を見せた。私は企画屋として、いかなるプロジェクトも「完成させて売る」ということで応えていきたいと思う。
posted by Dr.K at 23:28| Comment(4) | TrackBack(0) | 講師の独り言 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ユーザーを楽しませてナンボ、まったくその通りですね。自分の場合は「作りたいモノ」がまず「快適に楽しく遊べるゲーム」だったので、表現したいものとか作家性とか、そういうのはまるで無かったような…。ゲーム作ってた時は、「バランス調整しろ」とか「仕様書作れ」とかより、「キャラクターの設定作れ」「ストーリー作れ」と言われた時の方がよっぽど困りましたよ(さすがに会社に出す書類に「実写で」とか「自爆します」とか書けません…)。まー、たぶん、ゲームのプレイ感覚に直結しないものを作るという事にこだわりを持てなかったんだと思いますけど。どんなゲームでも上手い宣伝展開が出来るかどうかとか、時流に乗れるかどうかとか、売れる売れないは色んな要素で左右されますから、売れなかった「いいゲーム」が存在しちゃいけないなんて言っちゃダメですってー。いいゲームがちゃんと売れるべき、売れないことが間違っている…というのは今や理想論かもしれませんが、そういう理想をみんなが忘れてしまう事ほど恐ろしいもんはないです、本当。
Posted by GON at 2005年06月14日 00:15
ご意見ありがとうございます。私自身、ユーザーとしては、売れなかった「いいゲーム」を発掘して遊ぶのが大好きですし、それらがなくていいとは全然思いません。 ただ、作り手としては、「いいゲームがちゃんと売れる」まで持って行ってこそ目標達成だと思うんですね。だからこそ「売れなかったいいゲーム」で満足してはいけない。 ちなみに、ここで言う「売れる」というのはヒットを飛ばすことではなくて、コストに見合う程度売れること、を想定しております。
Posted by Dr.K at 2005年06月14日 07:53
商売として割り切りつつも、自分のできる範囲で色々詰め込んで頑張ったのはやはりガンダムの富野さんでしょうね。最近の産経だったかのインタビューは面白かったです。一応記事おいていきますね。いつか大成功のゲームを残してくださることを期待して・・・
Posted by 遠里 at 2005年06月16日 23:34
ライディーンが富野監督だったとは知りませんでした。
Posted by Dr.K at 2005年06月18日 08:49
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