2006年12月20日

パプリカ

極彩色の悪夢が娼婦のように微笑む
 圧倒的だ。悪夢から悪夢へ、音楽に乗ってダイブ。ストーリーを追うだけの愚かな観客は置いていく、と言わんばかりの飛ばしっぷり。説教臭いテーマもお仕着せの感動もどこかに捨てた。観終わってたどり着いたのは広い野原と青い空のような自由さ。作り手の情熱が心地よい疲労を生む。

「AKIRA」と「千と千尋」を足して2で割らなかった映画
 「パプリカ」を無理矢理まとめるとこんな感じ。実際、上記2作を想起させるシーンが多数ある。しかし、そのカタルシスは過去作を凌いだ。
 「悪夢が現実を浸食する」などと言っていても、従来の映画では、観客にだけはその区別がハッキリ見えるようになっていた。しかし「パプリカ」はそうじゃない。精神状態のしっかりしていないときに観ると相当ヤバいかもしれない。

もうジブリは要らない
 もう長い間、宮崎駿作品は、その想像力と映像の力で独走してきた。しかし、「パプリカ」は「千と千尋」を過去のヌルい作品として見事に葬り去った。このレベルの映画が毎年出てくるようになったら、スタジオジブリはもう歴史的使命を終えたと言えるのではないか。

遠くの空廻るの圓陣の喧しさに♪
 この映画の狂気に華を添えているのが、平沢進の音楽。「パプリカ」が終わると、見終わったと言うより完走したという表現が的確なように思えるのだが、その気分にエンディングテーマ「白虎野の娘」が素晴らしくマッチする。そのせいか、スタッフロールになったというのにほとんどの客が席を立たない。
 平沢の方針により、エンディングテーマ曲「白虎野の娘」は無償公開中。ぜひ聞いてみて欲しい。

映像は物語の奴隷じゃない。は現実の奴隷じゃない。
 「パプリカ」では、映画と悪夢とがまるでリンクするかのように並置されていた。悪夢が現実を浸食する、という現象が作中人物にとっては恐怖であるにも関わらず、観客にとってはむしろおめでたい、もっとやれ〜という感じで描かれているのはこのせいだろう。映画は一時の悪夢。ストーリーを拡げたりたたんだりするだけのための映像ではないのだ、という作り手の主張が心地よい。
 「テロリストはいつだって捨て身ですよ」
というセリフは、制作スタッフ自身へ向いたものだったような気がする。

キャラ一般受け度 7
物語一般受け度  1
麻薬的中毒度   9
個人的総合    10

パプリカ公式(浸食注意!)
posted by Dr.K at 12:14| Comment(4) | TrackBack(2) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
かなりアートとして出来上がっているんですよね。ドラマを読ませるんじゃなくて、感覚に叩きつけるような。一番普通っぽかったのが東京ゴッドファーザーズですか。でも、あれでさえキャラ設定が極端なので、それが逆に来るというか。それでも! 今年の一番は時かけです。東京でクリスマス再演です。ただ、もう少し早くパプリカが始まっていたら、確実にゲドはアカデミー賞のノミネートから外れていたでしょう(笑)
Posted by そら at 2006年12月20日 21:24
「時かけ」に「日本以外全部沈没」に「パプリカ」と、今年は筒井康隆が映画になり過ぎです。
Posted by Dr.K at 2006年12月22日 16:43
千年女優といい妄想代理人といい。意味不明。洋画のザ・セルみたい。評価もクソもないよ。こんな描写は自分が奇人変人扱いされたいだけの傲慢作品。それを世間がしったかぶって評価してるだけ。時かけの方が格上。
Posted by ジョニー at 2007年06月01日 03:39
最後の一言がなければ、批判で済んだのに。その文脈だと、「時かけ」もちゃんと観られているかどうか疑わしいですぞ。
Posted by Dr.K at 2007年06月01日 09:46
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パプリカ!野菜みたいな名前!映画だよ。
Excerpt: ちょっと話題が遅いけど、野菜みたいな映画がやってますね!パプリカ。。。黄色?赤?<br />パプリカ 映画 野菜↓小説にもなってるみたいですね!食べる方のパプリカは日本で流通している多くは輸入物です。韓国産、オラ..
Weblog: 有機野菜が足りない。携帯サイトプランナー。
Tracked: 2007-02-05 23:49

『パプリカ』この映画を見て!
Excerpt: 第192回『パプリカ』  今回紹介する作品は筒井康隆の同名原作を、『千年女優』や『東京ゴッドファーザーズ』の今敏監督が映像化した『パプリカ』です。ストーリー:「他人と夢を共有できる画期的なテクノロジー..
Weblog: オン・ザ・ブリッジ
Tracked: 2007-12-25 12:41