
虚構と現実を行き来しつつ展開するストーリーは、「千年女優」や「パプリカ」と相似形と言えるが、こちらの方が多分に毒気がある。一般の人々の心の闇を暴き、次々に破滅させていく展開は、たかがアニメと思って見始めた視聴者に手痛い一撃を与える。
少年のバットは血まみれ、血まみれの夫を揺さぶり起こす妻、テレビ局は血まみれのテープを受け取って放送、少女は初潮で血まみれ、子犬は車にひかれて血まみれ、これだけやって悪趣味の一歩手前で留まったのは、果たして計算か偶然か。

そうか、いとうせいこうの小説「ノーライフキング」だ。ファミコン時代に書かれたこの作品、ゲームが子供の現実を浸食するという内容で、見事に今を先取りしていたのだ。
今監督による解説「“妄想”の産物」