木曜10時に放送中のこのドラマ、静かな出足だったのだが、どんどん加速して面白くなっている。倉本聰のシナリオなんてもう古いかと思ったら、大間違いであった。
緒形拳の遺作となったことで、放送前から話題になっていた本作。その緒形の役は、驚いたことに、終末医療を手がける町医者で、死にゆく息子を見送る父親。すでに自分の死期を悟っていたであろう緒形は、どんな気持ちでこの役に臨んでいたのかと思うと、たまらないものがある。
深刻なテーマを扱いながらも、ストーリーはあくまで穏やかに、そしてユーモラスに進む。死ぬ前に子供に会いたい、と富良野へ帰ってきた主人公(中井貴一)。せっかく再会しても、その子供(神木隆之介)は知的障害があり、彼の勘違いから会話は妙な方向へずれていく。これが本当におかしくて笑えて、しかもどこかほっとする。(以来、家ではこのドラマのことを「ガブさん」と呼んでいる)
一方、中井の同級生たちが、数十年ぶりに帰郷した彼を迎えて同窓会を開く。彼が死期にあることを知らない同窓生たちは、サプライズ企画として、よりにもよって彼の生前葬を開く。一瞬、ぎょっとするが、会の内容は暖かな笑いに包まれていた。
人が死ぬというのは、こういうことなんだと思う。もうすぐ死ぬとなっても、生活は続き、時には笑う。これまで、物語の都合で多くのキャラが死なされてきたが、それらの作品は、本当に人の死と向き合っていただろうか。
エンディングで毎回、美しい風景に混じって、本編では使われなかった物語の一シーンがさりげなく映され、物語に奥行きを与えている演出も素晴らしい。
作り手の本気がそこかしこに見える良作である。