手塚治虫生誕80周年ということで作られたスペシャルアニメ。昨晩放送されたのを観た。
うん、いいんじゃないか。テーマとキャラクターだけ原作通りで、その他はすべてオリジナルとして作ってある。このやり方なら、もうストーリーは知っている、などと言われないし、古くさいと言われるのも避けられる。もはや別の作品なので、旧作と比較してあれこれ批判することにはあまり意味がない。
レオの可愛さを前面に押し出し、勇気という抽象的な概念を、崖を跳ぶという具体的な行為に置き換えたシナリオから、子供向けの意識が感じられた。それにしては、トンネルの向こうを見せない結末はあまりに灰色で気がかりだ。ここまでの話からすると、都合良く大自然が広がっているとは思えない。もし仮に自分が親で、子供に説明を求められたら答えに窮してしまいそうである。
キャラクターについても述べておこう。動物たちは、手塚の絵を今風にアレンジした感じ。主役のレオやパンジャはともかく、黒ヒョウのトトがやたらかっこ良かったのは面白い。原作では悪いライオンの腰巾着で、へっぽこキャラだったのに。
一方、人間側は、手塚の雰囲気が全く感じられない絵柄。ハムエッグもランプもヒゲオヤジも出ないキャスティングで、がっかりしたファンも多そうだが、実は意外なスターが出演を果たしていた。 賢一(手塚ファンとしては、この字は違和感があるな)の父、賢造である。この人物、ごつい風貌で、爪に武器をはめたりするものだから、ウルヴァリンだ! という指摘が多数あったが、いやいや、ここは別のキャラを思い浮かべないと。
賢造が駆使するのは、自然環境を操る技術。やはり、手塚ファンとしては、環境改造用ロボット、ガロンを思い出していただきたい。髪型がウルヴァリンと似ているのは、もともとそうなのである(笑)
まあたまにはこちらの方のスジで少し思ったことなど。
>それにしては、トンネルの向こうを見せない結末はあまりに灰色で
>気がかりだ。
まあ「俺たちの男坂は・・・」パターンで止めておくあたりが確かに
ちょうど良かったのかなあ、とは思いますが。
これはこれである意味この作品は「年をとらない「ケン一」といふ
名のカルキン」が主人公だと考えれば、それでいいのかと。
(ヘタにそこのはしばしに気付いてしまうと続編の目が開いてしまう、
なんてことにもなるわけで)
いずれにせよ、21世紀初頭に制作する「ジャングル大帝」の頒布的
定本、としては出来が良かったのかな、と(実際いくつか散見した
若手ブロガー系の感想には「パチモンのライオンキングしか知らない」
だの「レオの父の名前はなんだっけ(正解はむろんパンジャ、時任三郎は
多分に棒ではあったけど、なりに聞けるくらいの滑舌ではあったようで。
一応レオ役の川田妙子さんとはTBSラジオ版の「BJ」で競演したことが
あると川田さんのブログにありました)」)などといった認知不足の
「まだらボケ症状の世代」が見受けられてましたし)。
>黒ヒョウのトトがやたらかっこ良かったのは面白い。
まあ非常に声を担当していた船越英一郎のポジションにも境遇的に
似ていた部分があって、役者魂に火をつける一面があったのも確かに
功を奏したところなのかな、と。まあ「コードギアス風のジュラシック
パーク」かと見せかけて実はこの枠(土曜プレミアム)に合った
「(スクライドの)ロストグラウンドで繰り広げられるホームアローン」
ってハナシだったので、「追い立てる」側に魅力(と凄味)の多くが
隠されているのがやはりミソなのかな、と。
>手塚の雰囲気が全く感じられない絵柄。ハムエッグもランプも
>ヒゲオヤジも出ない
まあ確かにあったのは「今の手塚プロについている絵の癖」だけ、
だったのですが「スターシステム」に関してはそのあたりも考慮して
むしろ谷口系の作品に出てくるタイプの「スターシステム」が稼働
してたので、そう「書き換えられた」のがいかにも「少年チャンピオン」
でつながってる「縁」ならではの皮肉なのかな、と。
(そういえば2年前のフジテレビ学芸会「ミヨリの森」も連載は
ミステリーボニータで秋田書店つながりでした)
個人的には初めの10分(Aロール冒頭)とラストの30分が
かなり冗長で不足なところが多く、その時間から見始めた人をほぼ
まるまる「球蹴り日蘭戦」に持っていかれてた印象を受けましたが、
「あずきちゃん」のかおるちゃん(まあ若い人だと「アラレ」の
二代目なんだろうけど)と矢島カルキンのエンカウント(邂逅)
だけで、十分堪能出来たかな、と思えた「ジャングル大帝」感想、でした。
アトムはソノラマ版しか読んでない私には盲点でした。