2009年12月12日

花沢健吾「アイアムアヒーロー」1巻

 手塚治虫を筆頭に、マンガをたくさん読んできた。その結果マンガに慣れ、出来の良さに感心することはあっても、心を揺さぶられることは少なくなっていた。ところがである。多感な青少年の頃ならともかく、今になってこんなに驚き、動揺させられるマンガに出会うとは。花沢健吾の新作「アイアムアヒーロー」が本当にすごい。

Iamahero1 第一話。主人公が帰宅する。その一晩を、主人公の心情そのままに、神経症的なこだわりで描写する。
 第二話。主人公が出勤する。彼の仕事が明らかになる。
 第三話。主人公の彼女が初登場する。

 かつて日本文学には、(作者の投影された)主人公の心情と身の回りのことだけを、緻密に描写する〈私小説〉というジャンルがあった。これもそういうマンガなのかなあ。面白くないなあ。
 などと思ったら、大間違い。一冊のほとんどを前フリに使い、巻末で衝撃の展開を見せる。これはいったい何なんだ。驚き、動揺し、深呼吸してもう一度読み返してみると、日常描写の中に、ノイズのように伏線がちりばめられていたことに気が付いて舌を巻く。〈超展開〉という言葉はここでは当てはまらない。
 連載マンガの多くは、第一話でその方向性を明確にするのが一般的だが、本作はそうではなかった。じっくりと大胆に構成された「アイアムアヒーロー」。2巻がこれほど待たれるマンガも、そうはない。

posted by Dr.K at 11:31| Comment(2) | TrackBack(0) | 手塚治虫 変容と異形 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
これこれ!TSUTAYAでばっちし立ち読みしましたよ!
ラストかなり衝撃的で。戻り読みしましたよ・・・。
全巻揃ったら貸してくださいw
Posted by グエン at 2009年12月13日 01:46
そもそも後どれくらい続くのかさっぱり見当が付かない(笑)
Posted by Dr.K at 2009年12月13日 08:58
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