妙なタイトルである。「巨人の進撃」ならいたって普通だったのに。
「進撃の巨人」は、別冊マガジンに掲載中の、諫山創の連載デビュー作。しかしながら、俺たちオッサンが言うところの〈今どきの若いモン〉が描いたとは到底思えない怪作だ。
時は未来(?)。人食いの巨人が出現して人類は壊滅。生き残った人々は高い城壁で守られた街に立てこもって暮らしている。それから100年。かつての悲劇を忘れかけた人々の前に、城壁をも越える大巨人が現れた… というのが開幕のストーリー。
まず驚くのが、その絵柄。良く言えば手描き感あふれる、悪く言えば素人っぽく整わない絵だ。最近の、整理され、パターン化された線で描かれた絵を見慣れた目には、異物のようにうつる。昭和の頃にはこういうマンガがたまにあったな、というレベルの代物。一歩間違うと、誰が何をしているのかさえ見失うスレスレの画力である。
ところがこの絵は、こと巨人たちに関しては完璧なのだ。不気味な顔、頭身のおかしいフォルムなど、その存在が恐怖の対象であることを、余すところなく描ききっている。
ストーリー展開も不気味だ。まだ2巻だが、すでに二転三転しており、先がどうなるのかさっぱりわからない。ベテランにありがちな、計算された構成でストンと落ちる物語とは、対極の位置にある。訥々と、しかし情念をもって語られる物語に、思わず引き込まれてしまう。
突飛な物語だが、現在を見事に切り取っている作品と感じる。外で起こっている危機に向き合わず、閉塞した壁の中の社会で、平和ボケした言動を繰り返しているのは、俺らオッサンの姿そのものだ。若者よ、諫山創とともに、壁の向こうを目指せ。