「風ノ旅ビト」は、PS3のダウンロード専用タイトル。1200円。同じ開発会社による「flOw」か「Flowery」を持っている人は、1000円で購入できる。
傑作である。クリアまでわずか2時間しかかからず、ゲーム的なやり応えはないに等しいが、一見の価値があるという点では、大作ゲームの数々すらしのぐ。
まず、どこを切り取っても美しい風景。細かい砂を踏みしめて歩くリアルさ、砂に煙る遠景、夕日を照り返して輝く砂、月明かりに白く輝く砂、吹雪いたりちらついたり様々な表情を見せる雪、等々。芸術的なセンスと高度なプログラム技術とが見事に連携し、アンチャーテッドをもしのぐ風景が実現している。ステージが代わるたびに、あまりの美しさに息を飲み、そこを動き回れることそのものが喜びとなる。
砂漠、寺院、雪山と続くモチーフは、チベットかネパールあたりの仏教かマニ教を思わせるが、それをアメリカの開発陣が再構築したことで、無国籍な世界観ができた。
見せたいこと、伝えたいことだけを、ぱっと表現して終わる潔さも美しい。色々な意味で真似できないゲームである。