2012年09月09日

アーティスト

 アカデミー賞受賞映画。正直な話、見る前は期待半分、不安半分でした。
 本作は、1920年代、サイレント映画の時代を描くため、サイレント映画の手法で撮る、という大胆な試みをしています。私は、サイレントの映画なんて、チャップリンの喜劇など、わずかな作品しか知りません。その程度の私が、今の時代に白黒でサイレントの映画なんか楽しめるのだろうか、という不安がありました。おまけにタイトルが「アーティスト」です。何やら芸術的で難しい雰囲気じゃありませんか。

 しかし、そんな心配は無用でした。
 物語はいたって大衆的なラブストーリー。声はなくとも、音楽が情感を伝えます。それどころか、長いセリフの字幕を一生懸命読まなければいけない今どきの映画より、サイレントなので字幕が要点しか出ない本作の方が見るのが楽、とさえ言えそうです。
 ストーリーに捻りがないところは昔の映画風ですが、伏線が巧みに張ってあって納得度の高い展開は、現代の映画からのいいとこ取りと言えます。
 題材は古いですが、テーマは全く古くない、というところにも感心。
 主人公のジョージは、サイレント映画の大スター。私のような庶民とは全く接点のない人物です。ところが、この主人公にとても共感できるんですね。大スターから一転、音のある映画の時代が来て、ジョージは苦境に立つのですが、技術革新が起こって、旧世代が追いやられるというのはあらゆる分野で共通のこと。しかも今日では、そのサイクルはますます高速になっています。ある程度、年を経た人なら、誰もがジョージのような感覚を味わっているのではないでしょうか。
 ジョージの新しい映画への違和感を、音を使って表現したシーンは絶品。冷静に考えると、普通に音をつけただけなのですが、ここまでをサイレントで見てきた観客もジョージと同じ気持ちを味わえるのですね。見事です。
 一方、ヒロインのペピー。ジョージとの出会いによって女優となった彼女は、音のある映画での新しいスターとして駆け上っていきます。しかし、それに驕ることなく、ジョージを慕い続け、彼の苦境に手を差し伸べようとします。そして、そのことがますますジョージを苦しめるわけです。
 女性が善意でもって、ナチュラルに男のプライドを踏みにじってしまう、というのは洋の東西も時代も問わず、普遍的な現象なのですね、などと言ったら怒られるでしょうか。

 結末には、サイレントの手法でなければ成立しない仕掛けが用意されています。これはうまい、と感心しているうちにエンディングへ導かれ、後味の良さは抜群。まだ観ていない人にはぜひ、とお勧めしておきます。特に犬好きの方は必見です(笑)

画面比率 4:3!
結末    10
犬の演技 10
個人的総合 10

#映画ブログ

posted by Dr.K at 07:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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