2012年10月08日

歩いても歩いても

 以前からお勧めされていたのだが、ようやく観ることができた。

●タイトルの由来
 冒頭、老いた父親(原田芳雄)がとぼとぼ歩いているので、これがタイトルにかかっているのか、と思ったら全然違った。話が進むと、懐メロ「ブルーライトヨコハマ」の歌詞からとっていたことが判明。しかも、作中で別段重要な歌じゃない。なんだか力が抜けている。

●作為の排除
 とにかく自然体で力みがない。物語のための説明的な会話がほとんど見あたらず、帰省した一家のどこにでもありそうな会話が続く。主人公(阿部寛)の嫁さん(夏川結衣)が子連れの再婚だとか、兄が死んだ理由とか、物語の核心になりそうな話題が出てきてドキッとすると、次の瞬間には世間話に戻っている。
 とは言え、中身がないわけではなく、人のいいお袋(樹木希林)の別の顔、明るい姉(YOU)に潜む打算、父親の本音など、人物の多面性を意識的に見せていて奥行きがある。
 カメラワークも独特で、誰も映っていない、声だけ聞こえてくる画面が多用される。まるで、私自身がちょっとだけこの家におじゃましたような感覚になる。

●結末は秀逸
 何かあったような、何もなかったような。だが、「いつもちょっとだけ間に合わないんだ」から始まる結末は秀逸。このセリフが直接指すのは、母との話で思い出せなかった相撲取りの名前。実に些末なことだったのだが、最後に「間に合わなかった」娘と車を見せることで、重要な言葉に昇格した。

 さて、明日から是枝監督による初の連続ドラマ「ゴーイングマイホーム」が始まる。キャストも阿部寛ほか、邦画界の名優が並んでいるので、楽しみだ。

演技  10
音響  9
背景  8
個人的総合 8

他の人の注目すべき映画評:忍之閻魔帳なにさま映画評 

posted by Dr.K at 21:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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