あれは小学生の頃だったか。ジャン・バルジャンが改心する話を学校か教会で聞いたことがあった。よくできた教訓話だと思ったものだが、なんと、この映画の冒頭10分に過ぎなかったではないか。
小説はおろか舞台も見ていない私がこの映画を観ようと思ったのは、ひとえに周囲の評判の良さ。こんな古典的題材のミュージカルを学生までが絶賛しているのは珍しい。
内容は圧巻の一言。
2時間30分以上になる本編のほぼすべてが歌。普通のセリフがあって、盛り上がったところで歌になるという従来のミュージカル映画とは一線を画す。歌っている間も踊りではなく、演技が続けられる。私は舞台に詳しくないのだが、どうやら歌唱法も舞台とは変えてあるようだ。歌詞は大変シンプルで、字幕を見ず英語のまま理解できるところがかなりあった。
メインキャストの熱演もさることながら、エキストラが凄い。単に大勢いるというだけなら、他の大作映画でも見られるが、本作では歌に厚みを加えるのみならず、民衆の恨みを伝えている。恐ろしい視線の数、数、数。その迫力に圧倒される。
そして、敵役が素晴らしい。ジャン・バルジャンを追い立てるジャベール。信念を貫く姿には美しさすら感じられる。キリスト教は自殺を許さないため、ラストシーンにその姿がないというミゼラブルな扱いだったけれど。
タイトルのせいで、ものすごく暗く救いのない話、という先入観があったが、力強い語り口に大いに励まされた。群像劇で、何かしら共感できる人物が見つかるはずなので、色々な人におすすめしたい。
過酷度 9
スケール 10
見応え 10
個人的総合 9
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