2013年05月26日

シュガー・ラッシュ その2

 内容はかわいらしいが、憎らしいほどの計算で出来ている。シナリオ初学者への教材に最適。

●導入部
 世界観と主人公まわりを簡潔に説明する。
 ラルフが自ら語る形になっているが、これが不自然な解説セリフにならないように、悪役たちの集会という場を設けたのがうまい。
 後に重要な意味を持つ〈ターボ〉という言葉。これをザンギエフが言ったために、「スピードアップした続編のことか」と思ってしまうゲーマーが続出。意図的なミスリードだろうか。

●展開部
 ヴァネロペをレースに出場させるために、様々な障害を乗り越えていく。その場その場の出来事に観客は引きつけられるが、その隙に、クライマックスのための伏線を着々と仕込んでいる。ストーリーがシンプルなせいで、その手際が一層鮮やかに見える。ネタバレになるので一つだけ例を挙げる。一見回り道に思える「ヒーローズ・デューティー」での冒険が、サイ・バグの性質を知るための情報になっている。

●結末部
 ディズニーなので、ハッピーエンドだろう、という予想はついている。重要なのはそこへたどり着く方法。
 良い物語には原則がある。「物語で発生した問題は、物語内のルールに則って解決すべし」だ。シュガー・ラッシュでは、ピンチからの逆転を成し遂げるために、何かが突然出てくるというようなことはなく、すべては展開部で見せてあった。見過ごしていた伏線に気付く快感。ハッピーエンドなんだけど、意外。お見事である。

●子供を連れたお父さん達へ
 意外と言えば、現実世界というか、人間の世界がストーリーにほとんど関わらないのが意外だった。
 「ゲーム版トイ・ストーリー」などと評される本作だが、人間とおもちゃの関係性に重きを置く「トイ・ストーリー」と異なり、「シュガー・ラッシュ」のゲームキャラたちは、自分たちだけで暮らしていて、人間とコミュニケーションをとらない。
 これを物足りない、と見る人もいるかもしれないが、私は、子供向け作品にありがちな説教臭さがなくて良いと思った。
 いや、そもそもやりたい仕事に就けていないラルフが主役なのだから、実はメインターゲットはお父さん達なのかもしれない。

●タイアップまでうますぎ
 吹き替えでは、ラルフを演じた山ちゃんがうまいのは当然だが、ヴァネロペが良すぎて驚いた。諸星すみれってまだ中学生なのか。末恐ろしいな。
 一方、お笑い芸人が声優として多数参加しているのだが、本当にどうでもいい役に回っており、観客を困らせない。
 そしてさらに、主題歌をAKBが担当しているのだが、これがまた印象に残らない使われ方で、タイアップの巧みさに黒いものすら感じる。
 技量のないゲストのせいで、台無しになっている映画は後を絶たない。ぜひ「シュガー・ラッシュ」を手本にして欲しい。

ストーリー構成 10
客層の広さ  9
人材の構成  10
個人的総合  10

posted by Dr.K at 10:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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