2013年07月06日

耳をすませば

 テレビで放送していたので久しぶりに見た。

 エヴァンゲリオンと同じ95年の作ということにまず驚く。家が古くさかったり、携帯電話がなかったり、何かと昔の感じがする「耳をすませば」に対し、現実を描くつもりがないエヴァはほとんど古びない。

 「耳をすませば」は、若く瑞々しい恋愛を眺めて悶える作品である。ハッピーエンドの物語は、いい意味でご都合主義であり、圧倒的にリアルなビジュアルとの釣り合いがとれていない。一方で、この物語の「創作」に対する見方は驚くほど正しく、あまりに的確なアドバイスに「このジジイ、ただもんじゃねえ」と何度も感心させられる。以下は、雫の小説に学ぶ正しい創作作法

@創作には期限が必要
 聖司がインターンシップ(笑)に出かけている2ヶ月の間に、雫は小説を書く決意をする。締め切りを設定せず、だらだら作っているものは大抵完成しない。その意味でも、この決意は有効である。

A創作には取材が必要
 雫は、図書館で調べものをしながら、物語を紡いでゆく。お父さんには、「雫が物語以外のものを読むなんて珍しい」と驚かれる。
 小説家志望者には、何も調べずに書く者や、安易にラノベをなぞる者が後を絶たない。それに比べると、鉱物図鑑や西洋史を調べて世界観を構築した雫は、まるでプロの作家のように圧倒的に正しい。

B創作にはスピードが必要
 出来上がった物語を、おじいさんが「大長編だ」と言いながら受け取る場面。原稿用紙の束を見るに、100枚以上はありそうである。読んでいる間に日が暮れたところを見ると、文庫一冊分くらいはあったのかもしれない。一般に、プロの作家が仕事を依頼される場合、文庫一冊につき、1〜2ヶ月の期間が与えられるそうである。それとほぼ同等なので、かなりリアリティのある速度と分量ということになる。

C創作には客観性が必要
 雫は、自信を持って小説を完成させたのではなく、作品の欠点や、勉強不足を嘆いた。おじいさんに「あなたは素敵です」とフォローされて、いい話になるわけだが、感心すべきは、雫の自作に対する客観的な評価である。作品のレベルを向上するためには、何より必要な資質と言える。

 以上より、雫の創作作法は完璧であり、これにおじいさんのアドバイスが加われば、将来「猫の恩返し」を書いてヒットさせるのも当然のことと言える。

映像のインパクト  8
歌のインパクト    9
父の声のインパクト 10
個人的総合 8

おまけ:恐るべきストーカー男『耳をすませば』の天沢聖司に見る恋愛の駆け引き

posted by Dr.K at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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