「アイアムアヒーロー」は、暴力から目を背けない作品だ。ZQN(この作品におけるゾンビのような敵)との戦いはいつも生々しく描かれ、容赦なく殺し殺される。
クルス編のクライマックスは、三人の異能者によるバトル。雨の降りしきる校庭で、雰囲気もたっぷり。本来ならいくらでもかっこよく表現できるはずのものだ。だが、この三人ときたらスコップを振り回すキモメン、パンツ一丁の狂人、元ひきこもり、とかっこ良さのかけらもない。生死を賭けた戦いにかっこ良いかどうかなど無意味である、と常々主張してきたこの作品ならではの見せ方となった。
ところが、この戦いの決着の瞬間を、作者はあえて描かない。場面が変わると、すでに戦いは終わっていたのだった。今まで、殺す瞬間に目を背けなかったこの作品にしては、変にロマンチックな切り替え方だと感じた。もしかすると、描かれなかった決着の瞬間に、重大な秘密が隠されているのかもしれないが。
ここで東京へ向かう宣言をしたクルスと、本編の主人公である鈴木が、いつか出会うことになるのだろうか。