ショートピースといえば、煙草の銘柄。そういう連想がすぐできる大人の、しかも男専用のアニメ映画だ。
オープニングを除いて4本の短編、その中に一人たりともかわいいヒロインが出てこず、女性ファンを集めそうなイケメンもいない。昨今の悪しき潮流を完全に無視していて清々しい。かといって、古臭い作品では全くない。大友克洋のマンガを原作にしているのは1本だけで、後はオリジナルの新作。ややこしいことに、単行本「SHORT PEACE」を買っても、原作は一本も載っていないので注意されたし。
「オープニング」
顔立ちが微妙だが、辛うじてヒロインが出てくるのは、このオープニングだけなので覚悟されたし。サイバーな雰囲気に幻惑されるが、なんと本編とは全く無関係。同じキャラが出てきて、エンディングを締めるというような構成もされていない。
「九十九」
主人公の歩き方の違和感で、3DCGだと気付く。純和風の世界観もついにこうなったか、と感慨深い。導入のせいで怖い話か、と一瞬身構えるが、実は楽しい作品。蛇の目蛙が特にかわいい。将来、「まんが日本昔話」もフル3D化されて、こんな風になるのだろうか。
「火要鎮」
遠景を描いた絵巻物が、どんどん流れて物語の舞台へつながっていく導入は面白い。だからといって、それをまるごとパンフレットに付けて1500円もとるのはいかがなものかと。絵巻風のクォータービューで劇が進むのは斬新だが、そうでないカットが平凡に見えてしまうのは困る。
唐突な終わりは賛否が分かれるが、マンガを読んでみたら、全然違うストーリーな上に、火事場に駆けつけるまでで終わっており、もっとひどかった。
「GAMBO」
神獣と思しき白い熊と、赤鬼が戦う。などと説明すると単なる昔話だが、この戦いが極めて凄惨、壮絶に描かれる。悪趣味な短編だな、と思って解説を読んだら、キャラが3DCGとわかって驚いた。荒々しい動きもすごかったが、あの手描き感あふれる負傷表現がCGでできるとは驚きだ。
「武器よさらば」
素晴らしいので、これはまた次回に。