「武器よさらば」
結末を見るまで、読んだことがあるマンガということに気が付かなかった。
いや〜これよ、これ。この終わりでこそ大友よ。
原作が雑誌に載ったのが81年。これからバブルになろうかという年代で、景気は完全に上り調子、金遣いの荒いのがトレンドとされていた。大友のマンガってのはその流れに乗れない人々を描いていて、貧しい学生が安下宿でクダをまいたり、かっこ悪いバンドをやったり、浮浪者と戯れたり、そんな話が多かった。熱血とも感動とも程遠い、しらけきった作風がかっこよくて支持されていた…ような気がする。
今にして思えば、ヒット作である「童夢」や「AKIRA」で、団地や都市を容赦なく破滅していたのもまた、日本の景気を象徴するモノを壊していたということではあるまいか。
(以下、結末のネタバレ考察を含む)
さて、昭和歌謡「夢で逢いましょう」とともに全裸のマールが走るエンディング、マンガ未読の観客はさぞ「なんじゃこりゃ」となったことだろう。
「なんじゃこりゃ」ならまだいい。今どきの若い奴は、この終わり方に腹を立てたりしているんじゃないか、と気がかりだ。頭が固くて変にまじめ、意外なものを嫌う若者が最近は多いように思う。フィクションについて、こうあるべき、という視野の狭い客が増えると、クリエイターのできることの幅が狭まってしまう。
それにしても、これほど完璧な大友テイストを作った監督が、本人ではなくカトキハジメだというのだからびっくりする。戦闘スーツや敵メカのゴンクがかっこいいだけでなく、戦闘シーンそのものが原作より大幅にパワーアップしている。未来の兵器による戦術、敵機との駆け引きをこれだけしっかり描いているアニメはそうはない。そして、戦闘がシリアスであればあるほど、結末との落差が大きくなるわけ。見事である。今後も、大友作品のアニメ化は、ぜひカトキ監督でお願いしたい。
ちなみに、原作ではマールは裸にならない。このオチは、「ELECTRIC BIRD LAND」から取ってきたものと推測されるが、その手際がまた素晴らしい。
大友ファン向け度 7
SFファン向け度 4
CG制作者向け度 10
個人的総合 6
若い人の中には物語りに答えや落ち、明確な起承転結を
求める人が多いと思うことがあります。
「九十九」の和風色彩3DCG、
「火要鎮」の遠近混合絵巻、群像&炎、
「GAMBO」のがちんこバトル、
「武器よさらば」の緻密な戦闘描写、
製作者の意図は分かりませんが、
私はこれらをスクリーンで見られただけで満足してしまいました。
映画といえば、
「風立ちぬ」や「パシフィックリム」の感想も聞いてみたいです。
おそらく同世代と思われるDr.Kさんにオススメだと思うのですが、
合わなかったらすいません・・・