古いゲームなのに新品でお店に出ていたのでつい買ってもうた。
長ったらしいタイトルだけで、2時間ドラマテイストなのは丸わかり。音楽まで徹底的にパロディで笑てしまう。ちなみに「新」探偵シリーズとは、新しいの意味ではなく、新(あらた)という主人公の名前。京都も熱海も絶海の孤島じゃねーし、とか思ってたら孤島は三つ目の舞台だった。詳しいタイトルやのに、ちっとも理解してへん俺ひでえ。
さて、推理ものアドベンチャーに関しては、古くは「ポートピア連続殺人事件」から最近では「ラストウインドウ」に至るまで、あまたのゲームをプレイしてきた私だが、こんな簡単なんは初めて、歴史に残るヌルゲーや。
だが、否定しているわけやない。世の中には、簡単なゲームは作るのも簡単、と思いこんでいる輩が跡を絶たないが、この場を借りてハッキリ言うておく。見た目ほど楽ちゃうわっ!
プレイして気づくのが、極端なまでの親切設計。この手のゲームにありがちな、「どこの証言集め忘れたっけ?」「あとはどこ行けばいいんだっけ?」という引っ掛かりがない。何かがある場所にはマークが出るし、「ここで調べることは終わった」と明言してくれる。
また、サスペンスものとして、謎やトリックがきちんと設定されているのだが、それを解明するために困ることがない。主人公が順序立てて整理し、解決へ導いてくれる。
そして、クライマックスにはご多分に漏れず、犯人との対決があるのだが、ここで推理を間違ってしまってもゲームオーバーになるようなことがなく、何のペナルティもない。評価もなく、分岐もないので誰がプレイしても同じである。
これらにより、「簡単すぎる」「自分で推理する楽しみがない」との批判が出るが、残念ながらそういう趣旨のゲームではないのだ。合間で「世にも奇妙な物語」のタモリのごとく、京太郎くんが茶々を入れるのを見てもわかるとおり、このゲームはテレビ番組のパロディを強く志向する。考えたり行き詰ったりすることなく、サスペンスドラマを楽しみたい人に向けて作られているのである。
しかし、そうなってくると、アドベンチャーというジャンルが持っていたゲーム性をほとんど放棄することになるため、純粋にストーリー勝負、ということになってくる。これはこれで勇気のいる決断だ。結論から言うと、それは一定の成果を挙げている。
京都編は、茶室の知識とリンクした謎解きが、いかにも西村京太郎らしく、面白い。熱海編では、極めて簡略ではあるものの、お馴染みの時刻表トリックが顔をのぞかせる。絶海の孤島編は、ゲームが解決してくれるものの、複雑なエレベーターのトリックがあり、ストーリーも主人公の過去に向き合うという最後にふさわしい内容。
登場キャラクターも、デザインは一見古臭いが、アニメーションの付け方などに「逆転裁判」を意識した工夫がみられ、手抜き感のない良い出来だ。刑事以外は。
また、自分で推理したいユーザーのために、推理ミニゲーム集が併録されており、これが歯ごたえ・ボリュームともになかなかのもので、本編を物足りなく思う人へのエクスキューズになっているのもうまい。
発売当時は、「え、こんなの売れるの?」と驚いたゲームだったのだが、実際にプレイすると、これだけ配慮があれば商品力があるのも当然、と納得した。プロデューサーかディレクターは相当有能な人なのではないか。見た目ほど楽ちゃうで、ほんま。
発売当時の忍さんの記事:DSで「火サス」。
1話の慶子ちゃんマジ天使ですよね。