前作は、単館系の劇場を満員にした知る人ぞ知る傑作。その実績を受け、今回は大手シネコンの大スクリーンでの公開となり、感無量。だが係員よ、「キックアスジャスティス…フォーエバー」という妙な切り方のアナウンスはどういうことだ。
今作のテーマは「成長」とのことで、一般人の雰囲気を残していたキック・アスはムキムキのヒーロー体形になり、ヒット・ガールは美しく育って残虐さにも磨きがかかった。アベンジャーズのごときヒーロー団体も結成され、お祭りのようなにぎやかさだ。
前作通りのエログロナンセンスを盛り込みつつ、ヒーローの本質を問う熱いストーリーと爽やかな結末に強引に持っていく作りは、今度も健在で満足した。
面白いのは、「成長」が描かれるのがヒーローの側だけではないこと。正義が輝くのは、魅力的な悪があってこそ。全編を使って、マザー・ファッカーを悪役として育て上げるエピソードが積み重ねられる。その無情な出来事の数々が、前作でキック・アスと大して変わらない一般人の青年だった彼を、悪の権化へと育て上げた。
思えば、アメリカンヒーローの敵は、そのほとんどが完成した姿で突然現れた。例えば、「バットマン」のジョーカーは、登場した瞬間から悪だった。その生い立ちが語られるとしても、たいていは後出しだ。「キック・アス」が、悪が作られる過程を描いたのは、アメコミが描かない舞台裏をバラしたようで面白い。
マザー・ファッカーは、ヒーロー団体に対抗して悪の団体を作る。そのスカウトの適当さとネーミングの雑さも、アメコミの舞台裏と言えるだろう。
笑われる役を一身に背負ったマザー・ファッカー。だが続編があるのなら、恐ろしい敵となってくれることだろう。エンドロールが終わるまで席を立ってはならない。
流血量 8
パロディ度 9
続編期待値 5
個人的総合 8