2014年03月09日

それでも夜は明ける

 アカデミー賞作品賞の受賞で知ったので観てきた。監督はスティーブ・マックィーン。かつてのイケメン俳優が引退して監督になったのか、と勘違いしていたのは秘密。
 ジャンルとしては「ライフ・イズ・ビューティフル」「ショーシャンクの空に」あたりと並ぶヒューマンドラマ。賞賛の声はいくらでも他で出てくると思うので、ここでは少しひねくれた感想を述べる。

 本作は実話を元にしている。奴隷制の残る19世紀のアメリカで、自由黒人(すごい言葉だ)として暮らしていたソロモン・ノーサップは、騙されて拉致され奴隷として売られてしまう。教養あるヴァイオリニストから一転、奴隷としての地獄の日々が始まる。
 その虐げられぶりが、あまりに真に迫っているため、世界観に没入してしまい、主人公が何かしようとするたびに、絶対後でひどい目にあう、もうやめとけ、とはらはらして目も当てられない。観客の私まですっかり奴隷化している。

(以下に結末を含むネタバレがあるので一応注意!)

 生還のきっかけとなるのは、バスとの出会い。建築の手伝いで来た旅人で、ブラッド・ピットが演じている。こいつが奴隷廃止論者で、唯一のいい白人なのだが、「イケメンのブラピ様サイコー」などとは微塵も思えない。私の心はすっかり奴隷化しており、何青臭い理想を吠えているんだこの若造は、という感想しか出てこない。本作のプロデュースはブラピが引き受けており、プロデューサー権限でおいしい役を持って行った、などと揶揄する者がいるようだがとんでもない。真に迫った世界でこいつだけ浮いているハズレ役、この映画唯一の大根役者になってしまっている。
 結末は非常に味がある。ソロモン個人が奴隷から抜け出せても、制度自体が変わるわけではない。ともに生き抜いて来たパッツィーが、ソロモンを見送るシーンで、画面から消えるか消えないかのタイミングで気絶する。希望のない今後を悲嘆してのことだと思うが、きれい事ではない現実をリアルにとらえていると思う。

 現在の日本に奴隷制度はないが、奴隷の心を体験することができた。この価値ある作品を世に出したという功績により、ブラピのひどい役回りを許そうと思う。

演技力   9
迫真度   9
カタルシス 5
個人的総合 7

posted by Dr.K at 11:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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