デイヴィッド・リンチ監督作品。例によって、どうせわかるはずがないので、ネタバレ全開で行く。
インターホンが鳴ったので出ると、男の声で「ディック・ロラントは死んだ」と言った。
おや、今度の主役は闇の組織の一員か何かだろうか。
フレッドはサックス奏者。妻のレネエと暮らしている。ある朝、差出人不明の封筒が届く。中身はビデオテープ。再生すると、自分の家がうつっている。レネエは「不動産業者かしら」と言う。
神経質な感じの夫だが、芸術家なら無理もないか。ずっと低音のノイズがかかっていて、不穏な感じが続く。
別の朝、再びビデオテープが届く。映像には続きがあった。今度は家の中、夫婦の寝室まで撮られている。侵入者だ! レネエは警察を呼び、刑事がやってきた。
刑事との会話で、フレッドのビデオ嫌いが明らかになる。「記憶は常に自分なりに。起こったままを記憶したくない」という意味深な理由を話す。
妻の知人、アンディの家でパーティーが開かれる。フレッドはそこで、不気味な男に話しかけられる。「あなたと会ったことがある」「どこで?」「あなたの家で」フレッドが戸惑っていると、彼は携帯電話を差し出し、家へかけてみろと言う。かけると、目の前にいるはずの男が電話に出た。フレッドは混乱する。
不気味な男、一目でやばい奴とわかる顔がすごい。リンチらしく、ここから幻想、妄想の世界へ入っていくのか。
フレッドは妻とアンディの関係を疑う。三度ビデオテープが届き、そこには妻を殺すフレッドがうつっており、次の瞬間、「この人殺し野郎!」と罵声が飛び、フレッドは刑事に殴られ気絶した。
ここまでのビデオは、ノイズだらけのモノクロ映像だったが、レネエ殺害の映像だけは血の赤も鮮やかなカラー映像。気持ちいいくらいの急展開。
フレッドは死刑が決まり、独房に囚われる。頭痛を訴えるが相手にされない。翌朝、看守が見に行くと、フレッドの姿はなく、別の男が独房にいた。
ほうら始まった。死にたくないあまり、姿が変わったとでも言うのだろうか。
男はピートという若者だとわかった。犯人ではないので釈放されるが、不可解な現象なので、刑事が後をつける。ピートは自動車整備工として、以前の通りに働き始める。
違った。ピートは親や友人、職場の人とも普通に接している。中身がフレッドということもなく、完全に別人のようだ。
ピートのお得意様は、エディーという金持ちの親分。彼の本名がディック・ロラント。また、ピートがサックスの曲を聴いて不快に思うなど、フレッドの物語がかすかにリンクし始める。
まるで主役が交代したかのように、物語が進む。エディーがエキセントリックに暴力をふるいながら、交通安全を主張するシーンがおかしい。
ある日、エディーが愛人を連れて、ピートの職場を訪れる。ピートはその女性アリスに一目で惚れてしまい、やがて何度も体を重ねる。
アリスはレネエと同じ役者。ベタベタの出会いシーンとラブシーンは悪意すら感じる。
エディーに関係を気付かれ、ピートは命の危険を感じる。アリスは、知人のアンディを襲って金を奪い、二人で逃げようと提案する。
何やらこわい女になってきた。アンディについてアリスが話すセリフは、フレッドに疑われたレネエが話したものと全く同じ。同一人物? にしては殺されていないし、謎は深まるばかり。
強盗の直前、エディから電話がかかり、ピートは縮み上がる。エディの傍らにはあの不気味な男の姿があった。
フレッドを陥れた事件に、不気味な男だけでなくエディが関わっていたのだろうか。
強盗の結果、ピートはアンディを殺してしまう。盗品を金に換えるため、二人は車で出る。
「俺たちがやった」と殺しに怯えるピートに、「あなたがやった」と冷酷に突き放すアリスの恐ろしさ。走行シーンがタイトルバックと同じなので、一瞬ここで終わるのかと思った(笑)
砂漠の故売屋は留守だった。帰りを待つ間、二人は外で愛し合う。
映像はきれいだけど訳がわからないよ!
「お前が欲しい」「あんたにはあげないわ」姿を消したアリスを追い、店へ入ると、そこには例の不気味な男。「あの女の名前はレネエだ!」「お前は誰だ?!」ビデオカメラを突き刺さんばかりに構えて、男が迫ってくる。ピートはいつの間にかフレッドに戻っている。
「深淵をのぞく時、深淵もまたこちらをのぞいているのだ」なんて言葉を思い出すのはリンチの映画を観るときくらい。
フレッドは、ロスト・ハイウェイ・ホテルに行き、エディを砂漠へ連れ出し、不気味な男がエディを射殺し、男は消滅した。
エディがピートにあげようとしていたポルノ映画、彼自身が撮ったものだったのね。アリスやレネエは、アンディを通じてポルノに出演させられていたらしい。
フレッドは自宅に戻り、インターホンを押し、「ディック・ロラントは死んだ」と言う。そして車で逃走、後を刑事たちが追い、何かを予兆させる乱れを見せてエンディングへ。
時間を越えてインターホンを鳴らすという、ループものもびっくりの離れ業。一回見て理解できる観客など一人としていまい。激しいアクションなどないに等しいが、どこにカギとなる映像があるのか予測できないので、一切気が抜けない。
解釈も色々なところに載っているが、わかったところで面白くもなんともないので、ここは不思議な世界をさまよったもん勝ち。全然奇妙じゃない「世にも奇妙な物語」とはスケールが違う。これで金を取れるって本当にすげえ。
不可解度 9
濡れ場 7
軽快度 8
個人的総合 7