2015年01月17日

ベイマックス

 大変良かったのだが、センスの良いCGのことも、ハートフルな話かと思わせてアクション満載のヒーローものという意外性も、みんなどこかで書かれてしまった。
 だが、タダシは言った。「視点を変えるんだ」と。
 そこで、ここでは、シナリオ構成について書くことにしよう。
 「ベイマックス」の構成は、シナリオの授業で使いたいくらい基本に忠実である。型どおりでつまらないシナリオなどいくらでもあるが、型どおりでなお面白いのだから完璧だ。

※以下に結末までのネタバレを含むため注意!

●導入部
 冒頭は、ロボット・ファイトから始まる。対戦相手はヤクザの親分のような風貌で、審判はさながら賭場の壷振りのよう。和風の入った世界観を一瞬で理解させる。
 そこへ場違いな少年、ヒロが登場。一回わざと負けた後、大勝する。ヒロが策士であること、ロボット作りの達人であることが示される。ヒロのロボットは後に出てくるマイクロボットの原型であり、モードチェンジの機能は後半のベイマックスの凶暴化の伏線になっている。
 兄のタダシは、ヒロを連れて大学の研究室へ行く。ヒロに紹介するという形で、観客に登場人物を全部見せる。ベイマックスもここで紹介される。
 ヒロはこの研究室を目指すが、発表会に出すロボットのアイデアが思いつかない。タダシの「視点を変えてみろ」というアドバイスで、マイクロボットを思いつき、発表は成功し、ヒロは入学を勝ち取る。会場では、キャラハン教授とクレイの確執が明らかになる。
 爆発事故が起こり、教授を助けようとしたタダシが死亡する。

●展開部
 悲しむヒロの前に、ベイマックスが現れる。ここで初登場にしないのは、構成上遅すぎるからである。ヒロはベイマックスを受け入れない。
 マイクロボットに導かれて、ベイマックスは外へ出てしまい、ヒロが後を追う。倉庫でマイクロボットを操る怪人に襲われるが、ベイマックスは全く役に立たない。どうにか逃げるが、警察も頼れない。(ベイマックスみたいなすごいロボットが目の前にいるのに、マイクロボットを信じないのはどうかと思うけど)
 ヒロはベイマックスに戦闘能力を追加し、再戦を試みるが、そこへ研究室の仲間がやってくる。怪人は桁違いに強く、皆は車で逃げるはめになる。
 ヒロたちはチームを結成。怪人に対抗するため、各々装備を開発する。これらは、導入部で紹介された研究を転用、つまり「視点を変えた」もの。ベイマックスも飛べるように改造される。初飛行のシーンでは、ビルの窓にベイマックスとヒロがうつるが、導入部にタダシのバイクに乗ったヒロが窓にうつるカットがあり、同じ構図になっている。ベイマックスがかけがえのないパートナーになったことを示している。
 怪人を追って離れ小島へ来たヒロたちは、そこでテレポーテーション装置の実験が行われていたことを知る。激戦の末、仮面の下の正体が教授だとわかる。怒りにかられたヒロは、ベイマックスからタダシのプログラムを抜き取り、暴走させる。ベイマックスは仲間たちをも攻撃し始める。
 ヒロは諌める仲間たちからはなれ、ベイマックスをさらに改造しようとする。しかし、ベイマックスの中に残るタダシの記録を見て、間違いに気づく。「タダシはここにいます」の真意が明かされる。仲間は再び結束する。
 教授は今や、テレポーテーション装置を使ってクレイへの復讐を果たそうとしている。ヒロたちはそれを阻止しようと立ち向かうが、マイクロボットを使った攻撃の前に苦境に陥る。

●結末部
 ヒロは「視点を変えるんだ」と呼びかける。仲間たちはそれぞれの発想で窮地を脱し、教授に勝つ。テレポーテーション装置とマイクロボットの性質は、ここまでで充分描写されていたので、逆転の鮮やかさが際立つ。
 ベイマックスが、テレポーテーション装置の中の異界から、教授の娘の生命反応をキャッチする。(ケア・ロボットの能力) ヒロはベイマックスと異空間へ飛び込み、教授の娘を救出する。(ケア・ロボットに飛ぶ力は必要だった) 異空間から脱出する直前、ヒロをかばってベイマックスが壊れる。ロケットパンチの推進力でヒロを脱出させ、ベイマックスは異空間に消えた。(ベイマックス自ら視点を変えて武装を転用した)
 事件は終わり、街には平和が戻った。ヒロの部屋には、ベイマックスの腕が飾られている。その手を開くと、タダシのプログラムが握られていた。ベイマックスが再び作られ、ヒーローチームが結成された。

 長くなって申し訳ないが、無駄のない構成なので、あらすじにしても何も省けない。基本を守りつつ、多様な形でテーマを繰り返し伝えている。メイキング番組によると、シナリオを作家個人に任せず、広く合議して決めているようだが、なるほどそれで矛盾が少なく明快なのか、と納得がいった。力の差を嘆くより、楽しみつつ研究した方が良い。

映像美 9
吹き替え 8
完成度 10
個人的総合 10

posted by Dr.K at 17:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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