強敵にぼこぼこにされつつも、粘り強く一族を育成中。相変わらず大変な時間泥棒ゲームだ。
さて、発売時、「俺屍2」の叩かれ方はそれはもうひどいものだった。その悪評を一身に背負ってしまったのが、夜鳥子(ぬえこ)だった。
夜鳥子は、今作の敵役である安倍清明と因縁があり、それが物語のポイントとなっている。デモシーンが始まるたびに、夜鳥子が中心となり、一族が脇役扱いされるのが、シリーズのファンから不興を買った。また、桝田省治による小説「鬼切り夜鳥子」から持ってきたキャラということで、作者による偏愛があるのではないか、という点も批判を集めた。
これらの経緯については、twitterでの桝田本人とユーザーとのやりとりという形で記録が残っているが、読むと、桝田氏の戸惑いが露わになっている。ユーザーの一族への思い入れは、作り手の予想を上回るものだったのだ。
プレイしてみてはっきり分かったのだが、このゲームは決して作者の私利私欲によってダメになったのではない。桝田省治はコンセプトの人である。ゲームとしての遊びの方針がすべてに優先し、それが曲げられることはない。
夜鳥子は、ダンジョンの奥で待ち構えている敵役、安倍清明と因縁がある、と先ほど述べた。このゲームは、彼女を連れて行かねばボスは倒せず、ストーリーが進まない。
ところが厄介なことに、夜鳥子にも短命の呪いがかかっており、一族と同様に死んでしまう。通常の家族と異なり、何度でも転生させることができるのだが、そのたびに育てなおす必要がある。つまり、ストーリーを進めるためには、一族のメンバーを強化するタイミングに、夜鳥子を育てるタイミングも合わせる必要が出てくる。
もうお分かりであろう。他のゲームであれば、ボス部屋を開けるのに鍵が必要、で済ますところを、人物のキャラに置き換え、ゲーム性にも深く絡ませている。まさに続編ならではの応用的なアイデアなのだ。夜鳥子はこのための道具に過ぎず、余計な思い入れどころか、極めて冷徹に扱われているキャラなのである。それはプレイヤーの一族も同じだ。
システムの冷徹さ、語られる物語の空疎さを、自分だけが育てた一族への思い入れと、自分で想像した物語で埋め補う。「俺屍」は、一作目からそういうゲームであったはずで、今作はそのように楽しむには、余計なものを積み過ぎてしまったのかもしれない。
ちなみに、
・フリーズすることが多い
・夜鳥子の転生に必要な奉納点が高い
・夜鳥子の影響で好物に鍋料理が遺伝
・神様が下天しすぎて交神に支障をきたす
などの不具合については、アップデートで修正されているので、現在は快適に遊ぶことができることを周知しておきたい。
RPGで重要なのはストーリーじゃなくてゲームの過程だ、という人にとっては傑作となる可能性大なこのゲーム、けなされたままでは勿体なさ過ぎる。