2015年05月23日

百日紅 -Miss HOKUSAI-

 公開してからさほど日も経たないのに、もう一日一回の上映に減っている、ということであわてて観てきた。いや〜、なるほど。これは売れませんわ。

 良くも悪くも淡々としてクール。主人公のお栄は北斎の娘で、後に応為として知られる絵師。そしてもちろん、父である北斎も登場する。しかし、伝記ではない。また、有名な絵を描き遺すエピソードもない。盛り上がる筋は意図的に避けられている。代わりに、小さな出来事を丁寧に連ね、江戸時代の日常がしみじみと活写される。
 同じ江戸時代を舞台にしたアニメ映画としては「伏」があるが、バトルあり恋ありでアニメアニメしたプロットをもつ作風は、「百日紅」とは真逆だ。
 お栄は龍をとらえて描き、ろくろ首を見、鬼の絵が災いを起こす事件に遭遇する。怪異に遭遇してもお栄と北斎は驚いたり恐れたりしない。ただそれを受け止めるだけである。迷信が迷信ではなかった時代の人々を、うまく描いていると思う。
 結末も一応終わり、という感じで話はおよそ盛り上がらない。しかし、老いてなお絵の高みを目指そうとした北斎の想い、夭折した原作者杉浦日向子の想い、椎名林檎の「最果てが見たい」がシンクロし、内に込められた熱量は相当なもの。それがわかる観客にだけ評価されるのだと思う。

 サブタイトルはじめ、ところどころの表現に海外での公開を意識したことが見えるが、無理でしょ。この機微を理解できるのは、日本の、しかもほんの一部の観客だけだ。

話の起伏  3
演技の細やかさ 9
万人受け度 2
個人的総合 5

posted by Dr.K at 21:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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