大事件だ。これは日本マンガ史に残る事件である。
事件は、連載が再開された2年前にすでに起こっていたのだが、私は雑誌「ニュータイプ」を読んでいないので、先日発売された9年ぶりの新刊でそれを知ることになった。
なんと、以前の続きの物語であるにも関わらず、設定が大きく変更されている!
MHがGTMになり、ファティマがAFになったよ〜、などと言っても読者でない人には何のこっちゃだと思うので、たとえ話をする。
「機動戦士ガンダム」はマンガ原作ではないが、仮にガンダムが連載マンガだったとしよう。久々に新刊を買ってみると、何の説明もなく、モビルスーツがエヴァンゲリオンになっており、地球連邦軍がNERVになっている。
そんな状況なのである。
「ファイブスター物語」では、これまでにもたびたび設定変更があった。しかし、人知を超えた神々が歴史に介入していく物語なので、何やかんやと理屈はつけてあった。また、歴史の断片を飛び飛びに描くスタイルなので、切りのいいところで変更になっていれば違和感はあまりなかった。今回が異質なのは、話の区切りでないところでいきなり大変更になっていることで、ガンダムでもエヴァでもかっこいいからOK、などという鷹揚な読者以外は正直戸惑いを隠せない。
永野にしてみたら、マンガを休載して作った映画、「花の詩女 ゴティックメード」が気に入ったので、「ファイブスター物語」をこの器に入れちゃえ、くらいの感覚なのかもしれない。しかし読者としては、こんな中途半端をやられるくらいなら、「ファイブスター物語」を未完にしてでも、新連載を始めてもらった方がまだスッキリする、というのが正直なところだ。
永野護は、稀代のメカデザイナーであり、「ファイブスター物語」は、彼のデザインのカタログのような側面もあった。そういう意味では、今回の変更は、いまだ衰えぬ創作力を世に示したという意味で成功である。だが読者は物語をないがしろにされたのではたまらない。作品を私物化するな、とのど元まで出かかるが、そもそもマンガなので個人の作品なのだった。
30年つきあった作品がこんな事件になるとは。まあ、あっさり銀河系を消滅させた挙句、続きが描かれない「銀河鉄道999」よりはましか。