2016年02月08日

きみはいい子

 子ども、母親、老人が抱える身近な問題を、見事なリアリティで切り取って見せる群像劇。
 私自身が教職に就いていることもあって、やはり一番気になったのは、新米教師の物語だ。岡野(高良健吾)は、大して熱意も持っていない小学校教師。トラブル対応もクラス運営もちっともうまくいかない。この、制御不能になるクラスの騒ぎっぷりが生々しいのだが(笑)、岡野が疲れ果てて帰ると、幼い甥っ子が小さな体で岡野を抱きしめてなぐさめる。
 それを受けて岡野は、クラスに対し「家族の誰かに抱きしめてもらってくること」という宿題を課す。子どもたちは驚き、騒然となる。
 翌日、岡野は宿題をやってきたか尋ね、そのときの感想を個々に聞いて回る。この部分の演出が非常に印象的だった。子供たちの感想は極めて率直で自然であり、まるで岡野がインタビュアーを担当するドキュメンタリー番組のようだった。もしかすると、宿題は本当に行われ、そのやりとりがそのままカメラに収められたのではないか。
 パンフレットを買って、疑問はさらにふくらんだ。シナリオが載っている。しかも一部ではなく、全部である。こんなパンフレットは他で見たことがない。宿題をめぐるやりとりも当然収録されており、そこには、しっかりとセリフが記載されていた。あの自然な言葉が脚本家によるものだとしたら、恐るべき感性だ。いやそれとも、アドリブで出た言葉を、最終的なシナリオとして書き留めたのか。どちらかは私にはわからない。
 映画の結末、岡野のノックが現状を好転させたのかどうかは、想像に任される。それ以外にもさまざまな余白があって、私たち観客の日常と地続きになり、問いかける作品であると感じた。日常を忘れるための娯楽とは、対極にある一本だ。

キャスティング 9
身近さ 9
余韻 9
個人的総合 7

posted by Dr.K at 06:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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