巻頭にはZQNが何者なのかをうかがわせる挿話があり、巻末では比呂美が大変なことに。長きにわたった物語も、そろそろ終盤の趣である。
これを読んでいたおかげで、NHK教育の「漫勉」が非常に面白かった。「漫勉」は、マンガ家の現場に密着し、その作法を解説する番組で、浦沢直樹がプロならではの着眼でポイントを引き出していくのが見どころ。前回は花沢健吾がとりあげられ、ちょうど巻末の回を描いているところだった。締め切りぎりぎりまでねばり、絵にこだわって苦闘している様子に感心した。
その中で驚いたことがあった。「アイアムアヒーロー」に限らず、今のマンガで、背景を描くときに写真をもとにするのはよくあることだが、なんと、キャラクターを写真から起こしていたのである。主人公、英雄は、花沢自身の顔写真から描かれていた。どうりで似てるわけだ。しかも、見て描くなんて方法ではなく、顔写真を原稿に貼って下書きをしていたのには仰天した。絵がうまいマンガ家なんてのは五万といる。その中で並んでいくには、手段を選んではいられないのだ、というニュアンスの説明をしていた。
花沢は30を越えてからデビューした遅咲きのマンガ家だが、本作はついに映画化に至った。「ルサンチマン」からのファンの私としては、苦闘が報われたことを喜びたい。