「この世界の片隅に」が素晴らしかったので、こうの史代の他のマンガまで買ってしまいました。いやはや…
読むとわかるのですが、こうの先生のマンガは、進化している! 確実に!
まず、「夕凪の街」ですが、これはこうの史代が初めて広島を扱った作品です。終盤の強烈なメッセージ性によって、各種マンガ賞を受賞しました。確かにインパクトはあるのですが、原爆への怒りが生の形で表出しており、ある種異形の作品となってます。
その続編である「桜の国」は、戦時中を知らない少女を主役にし、笑いも交えたホームドラマのような進め方になっています。しかし、「夕凪の街」から現在までが地続きにつながる仕掛けによって、この連作は独特の充実感をもって終わります。直接的な怒りは表現されず、広島を背景とした恋愛ものとしても読める内容になってます。
これらの作品の延長上に、「この世界の片隅に」が位置するのだなあ、と大いに納得した次第です。
さて、「桜の国」の主人公、七波は、野球部に入っています。ここで背景に出てくる塔は、中野の水道タンクですね。他のコマで新井薬師駅が出てくることからも間違いないでしょう。だとすると、彼女の向かうグラウンドは、哲学堂公園の野球場と予想されます。
ということはですね。これから十数年後、「時をかける少女」の真琴が同じグラウンドでキャッチボールをすることになるわけですね。
こうの史代さん、考証が厳密なのは、広島に限ったことじゃなかったんですね。