2017年08月26日

ラ・ラ・ランド

 渋滞の道路の喧騒が音楽に変わり、ドライバーたちが踊りだす、これぞミュージカルというオープニング。底抜けに明るく、現実感の乏しい演出で観客をねじ伏せますが、騙されてはいけません。それは全部まやかしですから。

 女優志望のミアは、オーディションに落ち続ける日々。演じるエマ・ストーンが何とも絶妙で、本当にヘタそうに見えるんですよね。ルームシェアをしているらしい友達が、ステレオタイプの美人女優ばかりなのに対し、圧倒的に個性的な顔でキャラが立っているのもうまいです。
 一方、ピアニストのセブは、ジャズの店を持つことが夢なのですが、こだわりが強すぎて仕事をクビになります。
 この二人が出会い、恋をし、すれ違い、という王道のラブストーリーが展開します。
 映画で美男美女がいちゃいちゃしていると、いたたまれない気持ちになることがありますが、ミュージカル演出だと普通に見られるからありがたいですね(笑)

注:以下に結末までのネタバレを含みます

 ミアがオーディションに合格したらしい、というところで、物語は突然5年後に飛びます。
 ミアは大女優になりました。それは良いのですが、知らない男と結婚して子供までいるらしい。道が混んでいるので、ミアと夫は高速を下りて寄り道します。そこで見つけたジャズの店。セブが夢をかなえ、店を開いていたのです。ステージに立ったセブは、客席にミアを見つけ、出会った時の曲を弾き始めます。

 ここからが驚きの映像に。
 セブとミアが出会ったところから、こうだったら良かったのに、という回想を改変したシーンが流れます。ミュージカル仕立てなのですが、オープニングとは全く異なります。オープニングは、実際の高速道路で大勢が躍るという、スケールの大きな映像でした。ところが、この場面は、最後のミュージカルシーン、すなわちクライマックスであるにも関わらず、チープなセットで作られているのです。あくまで想像、ということなのでしょう。

 曲が終わると、ミアはセブに声をかけることもなく、店を立ち去ります。わずかなアイコンタクトの後、セブが次の曲を弾こうとするところでこの映画は終わります。
 私たちは、セブとミアのような回想はしません。なぜなら、今を危うくするかもしれないからです。誰にでも、今を獲得するために、あきらめたり捨てたりした過去があるはずです。戻ってやり直せたら、という封印された切ない想像を、美しい映像で見せてくれるこの作品は、「自分たちに代わって恋愛してくれる」ラブストーリーの一つの到達点なのかもしれません。

映像美 9
現代性 3
ほろ苦さ 8
個人的総合 8

他の方のラ・ラ・ランド評
忍之閻魔帳…辛口!

posted by Dr.K at 23:48| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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