2017年09月27日

夕凪の街 桜の国

 10年も前に公開した映画を、なぜ今頃観たのかというと、ひとえに映画館の素晴らしい企画のおかげ。神戸新開地のパルシネマが、「この世界の片隅に」との二本立てを上演。こうの史代原作作品が並ぶ機会など他にあるまい。

 「夕凪の街 桜の国」は、公開当時賛否がわかれた作品だ。昭和30年代を舞台にし、麻生久美子演じる皆実が儚く命を散らす「夕凪の国」が高く評価されるのに対し、現代を舞台に田中麗奈演じる七波が主役の「桜の国」は今一つの評判だった。そもそも、原作を知らない人には、二部に別れた物語はかなり唐突で違和感があったようだ。
 だがその評価は誤りだ。「夕凪の街」は、被爆者本人が原爆を告発するという内容で、麻生久美子の迫真の演技により胸に迫る物語となっているが、内容としては他にもよくある話なのだ。一方で、「桜の国」は、現代っ子の目線で問題を掘り起こしており、原爆を過去の遠くにあった出来事として風化させない仕組みとなっている。映画では、なぜか七波と東子がラブホで休憩し、プリンセス・プリンセスの「ダイアモンド」を歌うシーンがある。公開当時は余計な場面と言われたが、今観ると、この物語の「現代」がどこにあるのか、はっきりわかるという点で意味のあるシーンになった気がする。

 何より、「この世界の片隅に」と併せて観ることで、こうの史代本来の作風は「桜の国」の方であり、「夕凪の街」の方が力みかえった異色作ということが伝わるのが良い。滑稽でダサい「桜の国」が、これで少しでも評価を回復できれば、と思う。とはいえ、吉沢悠演じるイケメンの打越さんが、歳をとって田山涼成に変わってしまうシーンはどうしても笑っちゃうんだけど。

麻生久美子 熱演
田中麗奈 コミカル
堺正章 飄飄
個人的総合 6
posted by Dr.K at 21:54| Comment(0) | 映画一刀両断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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