クリアまでの所要時間は3時間といったところか。最後までプレイしたので、わからないなりに意味を推測してみる。
●妊婦
このゲームのメインとなるアクションパートは、彼女の内面を表現している。ゲームによる心理表現など、今やそれほど珍しくないが、臨月の妊婦というモチーフは他に聞いたことがない。
それにしても、この現実パートのキャラはぎごちない出来で、なんとも怖い顔。後で、「DATURA」と同じ開発会社とわかり納得。
(注意:以下にネタバレを含む)
●精神世界
アクションパートのステージは、生成、消滅を繰り返し、重力さえも一定に働かない。彼女の不安、不安定な心持ちをそのまま表している。
この世界では、母は女王、父は敵、兄は救世主として登場し、自分は姫となっている。姫が優雅に踊るアクションをするのは、彼女の女性性や憧れを形にしたものだろうか。何しろ現実パートに説明がないので、彼女がバレエなどの経験者なのかどうかもわからない。
●思い出
各ステージの最後で、彼女は自分の思い出と対峙する。断片が徐々に形になっていく演出は印象的。いずれも幼少時の出来事で、父母がうまくいっていない様が伝わってくる。
特にどきっとしたのが、兄がキッチンの鍋に手をかけてしまう思い出で、この直後、敵王が救世主を抱いて記憶の海へダイブするような行動を見せる。ひょっとして兄は怪我どころか死んでしまったのでは、と一瞬ぞっとしたが、後のステージの思い出に無事に登場していたので心底ほっとした。
最終的に、父が離婚して家を出てしまったことが判明する。
●家
ゲームのすべては、彼女が浜辺に降り立ち、父の家に着くまでの出来事だった。プレイヤーは最後に、父に会うか、会わずに帰るかを選択する。
両親が子育てにもめて離婚してしまったという過去から、彼女は自分が子供を産んで育てられるかどうか、不安になってしまっていた。その葛藤がゲームの中身として表現された。しかし、華麗な踊りで悩みを打ち払ってきたプレイヤーは、彼女が今や迷いを持っていないことを確信している。その後のことは描かれなくともわかるのだ。
とはいえ、男性でしかない私としては、妊婦の心象があのような奇抜なアートで表現されることに、どの程度のリアリティや共感性があるのか、お母さんゲーマーに訊ねてみたい気持ちだ。だってあれ、一歩間違ったらおかしい人の心理描写じゃないか?